大嘗宮の儀〜国家行事であることは政教分離に違反しているのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月15日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。14日〜15日にかけて行われた「大嘗宮の儀」のニュースから政教分離について解説した。

「悠紀殿供饌の儀」のため、祭服を着て大嘗宮の悠紀殿に進まれる天皇陛下=2019年11月14日午後6時34分、皇居・東御苑 写真提供:共同通信社

大嘗宮の儀が行われる

皇位継承に伴う伝統儀式の大嘗祭の中心儀式、「大嘗宮の儀」が14日夜から15日の未明にかけて、皇居・東御苑で皇室行事として行われた。天皇陛下は、米、粟や酒などを神前に供え、国家、国民の安寧と五穀豊穣などを祈られた。

飯田)これは秘儀ということで、なかの様子は見られないことになっています。14日は東京駅の前でデモなどもあったようですが、国費を使うかどうか、政教分離というところも議論になっていました。

「悠紀殿供饌の儀」のため、大嘗宮の帳殿に向かわれる皇后さま=2019年11月14日午後6時38分、皇居・東御苑(代表撮影) 写真提供:共同通信社

ブルネイ、オマーンの国王は政教一致の人

宮家)日本が国際的に見て珍しいかと言うと、必ずしもそうではありません。例えば、ブルネイの国王やオマーンの国王は、実は「国王」ではないのです。彼らは「スルタン」なのです。スルタンと言うのはイスラムの世界で、宗教的な権威と政治的な権威の両方を兼ね備えた、政教一致の人たちなのです。イランもある意味ではそうかもしれませんけれど。それに対してサウジアラビアの国王は、日本語ではオマーンと同じく国王とは言っていますけれど、実はあれはマリク、すなわちキングなのです。キングと言うのは政治権力しかなくて、宗教的権威は別の宗派が政権と一緒になって統治をやっているわけです。少なくとも中東地域では宗教的な問題と政治的な問題が一緒になる、もしくは政教一致というのは、珍しくも何ともないことなのです。

瀬田の唐橋(承久の乱-Wikipediaより)

日本はイギリスに近い〜日本での政教分離は鎌倉時代から

宮家)ヨーロッパでは、国王がいるところでも基本的には教会がありますから、政教分離になっているところが多いのだろうと思います。では日本と比べればどうなのかと言うと、日本にいちばん近いのはイギリスではないかと思います。イギリスの国王、いまは女王ですが、国王はイギリス国教会という、もともとイギリスのキリスト教はカトリック教会の一部だったのだけれど、その後ローマと喧嘩して形としては独立した、イギリス独自の教会がつくられた。その長、ガバナーと言うのですけれど、そのイギリス国教会のガバナーはイギリスを統治する国王ということになっています。いまのエリザベス女王は、グレートブリテンと北アイルランド連合王国の女王であると同時に、アングリカン・チャーチ、イギリス国教会の長でもあるのです。いま申し上げたことをいろいろ考えてみると、日本の政教分離があいまいだとか言われますが、決してそういうことはないと思います。更に日本の伝統から言えば、政教分離においては、むしろ世界で先駆けていると思うのです。鎌倉時代の前に承久の乱があって、当時の後鳥羽上皇が隠岐に流されるのですけれど、そのあと政治権力は鎌倉、宗教権力は京都という政教分離制になった。明治維新になって、また一緒に戻ったのだけれども、歴史的に見れば、日本の伝統は政教分離だったのです。僕は決して、日本が政教分離に対してあいまいだということはないと思っています。

飯田)たしかにヨーロッパで政教分離がおされ出したのは、宗教的権威が政治に対して壟断するようになってしまったことがあって、それを分けるという意味があったわけですよね。

宮家)政教分離については、日本はそもそも、もっと前の鎌倉時代からやっているのですからね。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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