GSOMIAの問題は日韓ではなく「米韓の関係」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月22日朝放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。GSOMIAについて解説した。

北京市郊外で開かれた日韓外相会談で握手する河野太郎外相(左)と韓国の康京和外相=2019年8月21日 写真提供:時事通信

韓国の外相が日本に譲歩を迫っていた

23日午前0時に失効期限を迎える日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、韓国の康京和外相は21日の国会で「日本政府による輸出管理措置の見直しがない限り、再考しないというのが現在の韓国の立場だ」と語った。その上で康氏は失効回避に向けて「最後まで努力する」と強調している。(※編集部注:22日、韓国政府が、日本政府に協定を終了するとした通告を停止する方針を伝えてきた)

飯田)21日、アメリカのポンペオ国務長官と康京和外相が、電話会談をして意見交換したということですが、いよいよ近づいてまいりました。

日米韓防衛相会談を前に手をつなぐ(左から)韓国の鄭景斗国防相、マーク・エスパー米国防長官、河野太郎防衛相=2019年11月17日、タイ・バンコク[代表撮影] 写真提供:時事通信

韓国の日本への発言はアメリカに対するポーズ

宮家)これはアメリカに対するポーズなのです。本来この問題は日韓のGSOMIAですから、日本との関係であるというので間違いではないのですけれど、私が見るところ、この問題は実は米韓関係なのです。そもそもGSOMIAを作ったときに裏で動いたのはアメリカです。韓国がGSOMIAを破棄するということは、アメリカに対して喧嘩を売るということなのです。しかし韓国の国内政治上、やらざるを得ない状況になっている。そうするとアメリカがどんどん圧力をかける。それに対して韓国は「いや、きちんとやっているのだ」「日本に対しても言っているが日本が言うことを聞かないのだ」と、こういうポーズをアメリカに見せているのだと思います。

米ケンタッキー州の選挙集会で演説するトランプ大統領=2019年11月4日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ポイントは米韓軍事同盟〜関心のないトランプ大統領

宮家)この問題の本質は何かと言うと、米韓同盟だと思います。ここはちょっと日本を置いておいて、米韓同盟について言うと、実はトランプさんはどうでもいいのです。金正恩氏と会って写真を撮ることの方が、はるかに関心が高いわけです。しかしアメリカの国務国防両省や軍の人たちにとって、GSOMIAは極めて重要です。けれど韓国の文在寅政権は、何だか動きがおかしいと思い出した。しかも、いまは在韓米軍の駐留経費問題でも米韓は交渉しているわけです。「GSOMIAをきちんとやらなかったら、在韓米軍は撤退するぞ」というメッセージを、ワシントンの誰かがリークしたのでしょう。それに対し国防長官がこの報道を否定する。まるで茶番ですよね。要するに何が言いたいかというと、ホワイトハウスの方はとにかく韓国に多く金を払わせて、「成果があった」と言いたい。GSOMIAなどは放っておけ、だったかもしれない。本来ならば、GSOMIAの破棄は文在寅大統領が言い出したのですから、大統領レベルで働き掛けをやらないと、文大統領は言うことを聞かなさそうではないですか。しかし、トランプさんには動く気がまったくなかったようです。でも、アメリカ政府の下の方は「とんでもない」ということで、今更なのですけれど、いろいろと韓国に圧力をかけてきた。「トランプ大統領が言って来ないのに、国防長官ごときがが何を言うか」と韓国大統領は思うでしょうね。このようにこじれているけれども、その本質は米韓関係、米韓軍事同盟の話だと思います。極めて深刻な問題ということです。

軍事協定破棄、割れる賛否 16日、ソウル中心部で開かれた革新系団体の集会でGSOMIA破棄を求める参加者(共同)=2019年11月16日 写真提供:共同通信社

「アメリカが同盟破棄することはないだろう」と高をくくっている文在寅大統領

飯田)もともと米韓の軍事同盟の話だと。文在寅さんは盧武鉉政権の秘書室長などもやっていましたけれども、当時は指揮権をどうするかという話があって、最終的にアメリカにも引いてほしいというのがあったと思うのですが、どうなのですかね。

宮家)それはどこまでそう思っているのですかね。韓国軍だけでは北朝鮮を阻止できませんよ。米軍と一緒でなければ意味がありませんし、実際今できているのは、米軍と韓国軍が一体になった軍事組織があるからです。それから米韓で指揮権をどうするかと言ったって、韓国は指揮権を取れない可能性があるのですよ。それでいままでも指揮権移管の話は進んでいなかった。だから、韓国に戦時の指揮権を移管するというのは、どちらかと言うと「夢」ですね。日本に在日米軍がいて、連合司令部があって、総司令官がアメリカ人だとなったら、普通の国ならそれは持たないでしょう。韓国みたいに北朝鮮の脅威があって、冷戦構造が厳しかったからこそ、そういうことが言えるので、普通の国だったらそれはとても認められない。逆に言うと、文在寅さんのような左派ナショナリストからすれば、韓国軍が米軍人の指揮下にあるなんてとんでもない話なので、何とか変えたいのです。しかし変えようにも、実際には変えられないと思いますよ。

文在寅さんは高をくくっている部分があって、「どうせアメリカはこんなに強気で言っても、まさか同盟破棄、撤退なんてしないだろう」と思っているのです。でも、アメリカはそんなに甘くはないと思います。いますぐに在韓米軍が撤退するということはありませんが、そういうことをトランプ政権だって考えていないわけではないと思います。韓国の人たちはもう少し頭を冷やして、「日本けしからん」ではなく、今韓国はアメリカに喧嘩を売っているのだと、その結果は韓国に跳ね返って来るのだということを、よく考えた方がいいです。非常に重要な時期に来ていると思います。

【韓国光復節】日本大使館に向けてデモ行進する人々=2019年8月15日、ソウル 写真提供:産経新聞社

GSOMIA破棄で中国、ロシア、北朝鮮、日本、アメリカの力関係が変わる

飯田)アメリカ軍のトップ、統合参謀本部議長が韓国に行って、日本でも発言をしていました。GSOMIAを破棄してしまうと、北朝鮮、ロシア、中国を利するという利敵行為なのだと忠告しています。

宮家)そうですよ。

飯田)この地政学的なインパクトは、どうなると思いますか?

宮家)万一GSOMIAが破棄されたら、いずれ米韓関係がおかしくなって行って、中長期的に言えば、韓国が韓米日の強力な反共同盟から離れる可能性も含め、状況は変わって行くことになるのでしょう。そうなると、アメリカも韓国に兵隊を置いている意味を考え直し始める。東アジアもしくは北東アジアでのアメリカのプレゼンスや、中国、ロシア、北朝鮮、日本、アメリカの間の力関係が微妙に変わる可能性があります。中長期的には要注意の動きだと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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