パレスチナ問題〜トランプ大統領が親イスラエル政策をとる理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月22日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。パレスチナ問題について解説した。

国連安全保障理事会の会合後、イスラエルの入植活動の違法性を指摘する共同声明を発表する非常任理事国10カ国の代表=2019年11月20日、米ニューヨークの国連本部(共同) 写真提供:共同通信社

パレスチナ問題をめぐってアメリカが孤立

国連安全保障理事会は20日、パレスチナ問題について協議した。アメリカのトランプ政権がイスラエルによるヨルダン川西岸での入植活動を、国際法に違反していないとして事実上容認したことに関し、アメリカ以外の理事国は相次いで入植活動を国際法違反だと非難、即時停止を求めた2016年の安保理決議の再確認と順守を求めたということだ。

飯田)占領地で普通の国民を移住、入植させるということは国際法違反だということですか?

宮家)そもそもこれは1967年の第二次中東戦争の時の話でしょう。イスラエルの撤退を求めた国連安保理決議242,338ができた時です。私が外務省に入ったときに徹底的に勉強させられましたけれど、私が入ったのは1978年です。その年はキャンプ・デービッド合意というのが秋にできまして、当時のアラファトさんと、イスラエルのベギンさんの間で何とか交渉をしたのだけれど、結果的にはエジプトとイスラエルが平和条約を結び、その後ヨルダンとイスラエルも平和条約を結んだ。ここまでは行ったのだけれど、残念ながらイスラエルとパレスチナは合意が結べなかったのです。理由はいろいろあると思うのですけれど、アラファトさんが清水の舞台から飛び降りなかったからです。このパレスチナ問題に白黒付けようとしても、イスラエル、パレスチナ、どちらも妥協できないわけです。妥協するにはある程度譲歩しなくてはいけない、しかし、譲歩したら自分の周りにいる国民が支持しなくなりますよね。アラファトさんは残念ながらその譲歩の決断ができなかった。その決断をしたサダトさんは、暗殺されてしまったし、イスラエルのラビィンさんも暗殺されてしまった。アラファトさんは妥協しなかったから、暗殺されなかった。その結果、和平が遠のいてしまい、挙句の果てにパレスチナがガザと西岸に分裂してしまった。

オスロ合意調印後にラビンと握手するアラファート(中央はビル・クリントン)(ヤーセル・アラファート-Wikipediaより)

妥協できなかったアラファト議長

宮家)そうなったら、ネタニヤフさんでも誰でも、このままでいいではないかということになる。それを追認したのが今回のアメリカの決定で、それは当然、米国は孤立しますよ。国連決議242,338はイスラエルの占領そのものを違法と言っているのだから。しかし、今イスラエルは西岸地域で入植地を増やしているのが現実です。これがいいわけないのだけれど、いま安保理決議242,338なんて言う人はいないでしょう。しかしこれは67年当時では、問題の基本中の基本だったのです。それが風化してしまったのですね。アラファトさんがあのときにもう少しきちんとやっていれば、パレスチナ人の生活も変わっていたのかもしれないと思いますけれど、今はもうイスラエルのやりたい放題ですよ。

ラマッラーにあるアラファートの墓(ヤーセル・アラファート-Wikipediaより)

トランプ大統領の行動はユダヤ票ではなく、福音派の票田を意識してのもの

宮家)日本では、トランプさんがアメリカのユダヤ票が気になってイスラエルを支持しているといつも言われるのだけれど、それは間違いです。多くのユダヤ系のアメリカ人はトランプ政権ではなく民主党支持だと思います。トランプさんが欲しいのは、ユダヤ系の票よりも、3千万、4千万と言われる福音派(エヴァンジェリカル)の票田です。これを意識しての決断だと思います。

飯田)福音派と呼ばれる人たちは、基本的に聖書原理主義と言われる人だと思いますけれども、その人たちがイスラエルにこだわるのは終末の日にエルサレムに、というところの話ですか?

宮家)そうです。そう書いてあると信じていますから。だから彼らはイスラエルを守らなくてはならないと思っているわけです。しかし、彼らもキリスト教徒ですから、最後は自分たちだけが生き残ると思っているのでしょうが、そういう意味でイスラエルに近しい宗派が福音派だと考えていいと思います。

飯田)ネタニヤフさんが訴追されたというニュースがあったではないですか。そこでイスラエルのなかの権力構図が変わるということがあっても。

宮家)権力構図は変わるかもしれませんけれども、思想の傾向は同じですから。ガンツさんが仮に首相になっても、ネタニヤフ首相と同様、入植地を増やしたいというのが本音だと思います。

飯田)そこの基本姿勢は変わらない。

宮家)ええ。大イスラエル主義の人からすれば、基本的にあの地域はもともとユダヤ人の土地だったのだとなってしまえば、パレスチナ問題のパの字もなくなってしまうわけです。悲しいかなそういう人たちが増えているのですよ。1967年の戦争のときに国連決議ができたときの、あの緊張感はもうなくなってしまったのです。かわいそうなのはパレスチナの人たちです。

パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍の空爆で破壊された家を調べる女性ら=2019年11月14日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

歴史ではなく、信仰の世界だから折り合いがつかない

飯田)その大イスラエル主義というと、2000年以上前にここにユダヤ王国があったのだという話まで遡るわけですよね。

宮家)そんなことを言われても今住んでいる人たちは困りますよね。

飯田)そうですよね。その後にパレスチナの人たちが住んだということを考えると。

宮家)これはもう歴史ではなくて、信仰の世界だから。折り合いのしようがないのですよ。

飯田)歴史であれば解釈の違いなどがあるかもしれませんけれど、そうではない。

宮家)土地を取られてしまったからけしからんという人の意見もあるのでしょうが、こんな形でパレスチナの人たちが苦労しなくてはいけない理由はないですから。やはりパレスチナ人の政治家がもっと早い段階で現実的な政治判断をすべきだったと思います。

 

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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