茂木外務大臣がロシア訪問〜タイミングを逸してしまった北方領土返還問題

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月18日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。茂木外務大臣がロシアを訪問したニュースについて解説した。

衆院外務委員会で答弁する茂木敏充外務相=2019年11月13日午前、国会内 写真提供:産経新聞社

茂木外務大臣がロシアを訪問、ラブロフ外相と会談へ

茂木外務大臣は17日、ラブロフ外相との会談のためロシアを訪問した。茂木外務大臣が本格的な平和条約締結交渉に臨むのは今回が初めて。北方四島での共同経済活動について話し合う他、次回の首脳会談の日程調整を行う予定である。

飯田)17日〜21日までロシアのモスクワを訪問ということで、19日にラブロフ外相と会談の予定となっています。

日露外相会談 発言するロシアのラブロフ外相(中央)=2019年5月31日午前、東京都港区の外務省飯倉公館 写真提供:産経新聞社

タイミングを逸した北方領土返還問題

佐々木)北方四島については、タイミングを逸したなと思います。安倍さんとプーチン大統領の間で、一気に話が進んだときがありましたよね。あれはウクライナ問題の後、ロシアが経済制裁を受けて孤立していた時期でした。孤立する状況につけ入るような形で「経済協力をして仲よくしましょう」と日本が持ちかけ、それにロシアが乗ってうまく行きそうだったのです。ところが現状では、ロシアの置かれている状況は当時と変わっています。

飯田)あれは3年ぐらい前ですか。山口県の長門で会談を行ったときですよね。

ロシア軍機の「領空」侵犯事件を報じる24日付の韓国紙=2019年7月24日 写真提供:時事通信

日本より中国の方が優先順位が高い

佐々木)現状ではパイプラインを引くなど、経済協力が進んで中露が接近しています。EUもロシアに対して軟化しています。ウクライナ問題で対立していたのが、EUからイギリスも離脱しますし、EUそのものが求心力を失いつつあります。もうロシアと仲よくするしかないため、マクロン大統領がプーチン大統領と仲よく話したりすることが起きています。ロシアは中東のシリアやトルコ辺りにも、橋頭堡をつくり出しています。だんだん大陸の国連合が国際情勢のなかで力を増していて、ロシアは孤立から脱し、一安心している状況です。そうなると、日本と北方四島返還の交渉をする必要がなくなって来ているのです。今後のことを考えると、経済的にも中国と仲よくした方がメリットが大きい。中国と日本で優先順位が高いのは、明らかに中国でしょう。残念ながらこの交渉は、時間がかかりますし難題です。

飯田)このところ報道で出ているのは、2島返還すら難しいのではないかと。

佐々木)3〜4年前は2島でした。

飯田)まずは歯舞群島、色丹島。

佐々木)あのとき決着させるために、条約を結ぶところまで行っていれば、違っていたと思います。

飯田)あの当時は歯舞群島と色丹島だけだと、面積的にも「それだけでは」ということがあったのでしょう。

日ロ外務・防衛閣僚協議を前に記念撮影する、左からロシアのショイグ国防相、ラブロフ外相、河野外相、岩屋防衛相=2019年5月30日、東京都港区の飯倉公館(代表撮影) 写真提供:共同通信社

返還の妨げとなる日米安保条約

佐々木)プーチン大統領側の問題としては、それをやると国内世論が黙っていないのと、アメリカの基地ですよね。完全に返還してしまうと、歯舞群島や色丹島に米軍基地ができてしまうのではないかという不安がある。しかし日本が米軍基地をつくらせないという確約は、日米安保条約がある以上できませんでした。この問題はいまも解決していないので、これから紆余曲折があると思います。

飯田)正面から行くと日米安保条約にぶつかってしまうため、共同経済活動などで、側面から行く。

佐々木)ただ、いまの地政学的な状況で考えると、ロシアとけんかしても日本にいいことはありません。

飯田)正面が増えてしまいますよね。

佐々木)中国とは安全保障的に対立しており、なおかつ韓国は徐々に中国側に寄っています。さらにロシアも敵対となると、1人で前線に立たされている、か弱い日本という状況です。

飯田)その情勢だと日清、日露戦争前と同じで、ものすごい圧力がかかっていますね。

佐々木)もう「半島攻めに行くことしかない」と言う人も出て来るかもしれません。だからロシアと仲よくして譲歩する。でも、あまり譲歩し過ぎると、日本の国内世論で「北方領土も返還できないくせに、あんなにロシアに譲歩して」と怒り出す人もいるので、そこを回避しながらロシアとどううまくやって行くかだと思います。

ロシアのプーチン大統領(右)との会談で握手する安倍晋三首相(シンガポール)=2018年11月14日 写真提供:時事通信

中露間にある火種

飯田)結局のところ、70年かけて返還までたどり着けなかったので、もっと長いスパンで考えなければならないということですか?

佐々木)いままでなぜできなかったかと言うと、ソ連時代を含めてロシア側にやる理由がなかったからです。やる理由をつくらなければいけないですから、経済協力だけでは乗り越えられないかなという感じがします。

飯田)中露の関係は、いまはよくなっていますが、あそこはお互いが長い国境を抱えています。潜在的にどう思っているのでしょうか?

佐々木)歴史的に見ると、仲がよかったのはほんのわずかしかありません。今後シベリアの開発が進むなかで、シベリアは実質中国領だと言われるほど中国の資本が進出しています。ロシアとしては「中国マネーは欲しいけれど、中国にあまり牛耳られたくない」と内心思っているはずです。そこが火種としてはあると思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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