マカオ返還20年〜マカオと香港では大きく異なる「一国二制度」の意味

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月20日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。マカオが中国に返還されて20年となるニュースについて解説した。

中国本土からの観光客でにぎわうマカオ中心部の歴史地区=2019年12月19日、中国・マカオ 写真提供:時事通信

マカオが中国に返還されて20年

ポルトガルの統治下にあったマカオが中国に返還されて、20日で20年となる。中国の習近平国家主席が出席する記念式典を控え、市街地では中国本土マネーの恩恵にあずかる大型カジノやホテルがそろって「祝・返還20年」という文言を掲示するなど、祝賀ムードに沸いているが、すぐ隣の香港で続く混乱が波及しないよう、当局は厳戒態勢を敷いている。

飯田)香港メディアの記者が入ろうとしたら、捕まって追い返されたとか。

宮家)それはそうでしょう。静かにやっているのだから、かき回さないでくれということです。ここはカジノで、民衆なんて関係ないのだと。カジノなのだから胴元がいて、ディーラーがいる。胴元が政府であり、ある意味でカジノのディーラーは市民です。立派なディーラー育成学校があるのですから、優秀な人はみんなディーラーになりたいのでしょう。事実上の公務員ですから。こういうところですから、香港と一緒に「一国二制度の下での民主主義」なんて言ってもらっては困るわけです。

飯田)外から介入されたり。

ザ・ベネチアン・マカオ(マカオ-Wikipediaより)

中国にマカオが必要な理由

宮家)いまがそうだということではなく、一般論の話ですが、中国で腐敗している独裁的政権があるとしたら、絶対にマカオが必要なのです。腐敗した高官にはマネーロンダリングが必要ですし、エンターテインメントが必要でしょう。それにはマカオがぴったりで、だからマカオはなくならないのです。とは言え、香港のようにビジネスをやっているわけではないし、教育が高いわけでもない。香港と一緒にしたら、マカオの人、もしくは香港の人たちがかわいそうだと思いますね。

飯田)人口もかなり違うと言われています。

宮家)しかし中国側からすれば、「マカオの一国二制度は上手く行っているではないか。香港はおかしい、むしろ、マカオが正しいのだ」と持って行きたいのだと思います。

林鄭月娥-Wikipediaより

汚れ役をやらされている林鄭月娥行政長官

飯田)香港のこの先も含めてですけれど、習近平国家主席も李克強首相も、香港警察のやり方が素晴らしいのだと、どんどんやれと言っています。

宮家)それはそうですよ。自分の手を汚したくないですからね。

飯田)そうすると、行政長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)さんは、汚れ役をやらされているわけですね。だから逃げるなと。

宮家)ええ。きちんと北京の言うことを聞けということです。

飯田)たしかに、辞任を仄めかすなどという報道もありました。

宮家)辞めさせてもらえないですから。彼女はきっといちばん辞めたいでしょう。何でこんなことになってしまったのか、話が違うわと思っているでしょう。でも仕方がない、彼女の権限では何もできないようになっていますから。非常に不幸だと思いますけれどね。

「五大要求」を掲げて香港中心部をデモ行進する市民ら=2019年12月8日(共同) 写真提供:共同通信社

香港の民主化運動に必要なこと

飯田)抗議者側と香港政府がぶつかっているように見えますけれど、そこで落としどころをつけても、北京はイエスと言わない。

宮家)絶対言わないですね。彼らは熟柿作戦で行こうと思っているのです。運動が過激化して、人心が離れて孤立化し、学生は籠城して、最後はそこを一網打尽にする。日本の70年安保と同じです。下手をしたら、後は一昔前の日本赤軍のような人たちが最後に「ボンッ」と暴発して、それで終わりです。そうならないようにしなくてはいけないと思うのですけれども、香港についてはいろいろな人がいろいろなことを言う。非暴力主義はナンセンスだと言う人もいますが、暴力でやったら末路は決まっています。中国にとって、暴力を使ってくれることほど楽なことはないからです。そうしたら一網打尽にできるのだから。取り締まる理由はいくらでもありますからね。

飯田)中国側が暴力を使う口実になると。

宮家)非暴力でやって行くことが、実はいちばん効くのです。効果がなかなか出ないから難しい、それはわかります。しかし安易に暴力でやれば、必ず古今東西、すべて失敗します。私は香港の民主化運動が成功して欲しいからこそ、こう言うのですが、いい意味でも悪い意味でも香港の学生運動、民主化運動にはリーダーがいないのです。集合的ながらも物事が別々に動いて行って、みんなが勝手にやっているけれど、全体としては上手く行っているという状況が現在も続いているということです。

飯田)暴力でやると溜飲は下がるかもしれないけれど、最終的にはダメになるというような知恵を、長老的な人が授けるということが、香港のなかだとできない。

宮家)若い人は若い人で、自由にやっているようですからね。

飯田)年上の人たちは、若い人たちがこうなってしまったのは我々の責任だと、あまり諫めることが言えなくなってしまったところもあるみたいですね。

宮家)しかし、危機感を感じているからこそ、ビジネス界も学生たちを支援しているのです。そこはそこで、大事なポイントだと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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