米軍のイラン・ソレイマニ司令官殺害はなぜ起きたのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月6日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカ軍がイランのソレイマニ司令官を殺害したニュースについて解説した。

ソレイマニ司令官の殺害を1面で大きく報じるイラン各紙=2020年1月4日(共同) 写真提供:共同通信社

アメリカがイランのソレイマニ司令官を殺害〜イランは報復を予告

アメリカ軍は3日、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を、イラクの首都バグダッドで無人機攻撃によって殺害した。イランは激しく反発して、アメリカへの報復を予告し、トランプ政権も中東に兵士3000人を派遣する予定だと報じられている。

飯田)ロイター通信の速報によると、バグダッド中心部の旧米軍管理区域(グリーンゾーン)で5日、2発のロケット弾が撃ち込まれたということです。区域近くの着弾も含めて、バグダッドで計3発のロケット弾が着弾。イランの報復が始まったのか、と報じられています。

軍事演習に参加した、革命防衛隊の海軍コマンド部隊(イスラム革命防衛隊-Wikipediaより)

革命防衛隊のソレイマニ司令官がイランにいたのはカタイブ・ヒズボラの支援のため

須田)日本では「アメリカ、またはアメリカ軍が戦争をしかけた」というような報道がありますが、それは誤りだということを大前提として理解していただきたい。いまイラク国内には、カタイブ・ヒズボラというシーア派武装組織があります。これがイランの革命防衛隊によって支援されています。イランの革命防衛隊のソレイマニ司令官が、なぜイラクにいたのかということを理解しなければいけません。つまり、支援したのです。

ガーセム・ソレイマーニー-Wikipediaより

米軍の攻撃はイラクサイドがカタイブ・ヒズボラへの対処をしないための自衛

須田)カタイブ・ヒズボラは11月と12月の2ヵ月間で、米軍施設とアメリカ大使館に対して11回の攻撃を仕掛けていたのです。本来ならば国際法に違反していますから、イラクの警察や軍が対処・防衛しなければならない義務を負っているのですが、イラクの警察も軍もまったく無反応だった。これに対してアメリカは常々警告を発し、「安全を保障するのはイラクサイドであって、我々ではない」ということも重ねて言っていました。ところがイラクサイドが動かないものだから、2ヵ月間我慢していたのですが、12月29日にカタイブ・ヒズボラへの攻撃をトランプ大統領が決定した。そこに、イランのソレイマニ司令官がいた…こういう前提を理解しないと、「またアメリカがとんでもないことをしでかした」ということになってしまいます。「イラクの警察・軍が機能していないから、アメリカは自衛のためにやった」というのが、国際的な理解だと考えていいと思います。ただ、アメリカ国内の世論も割れていて、大統領選挙を意識しているために「これはトランプ大統領攻撃に使える」と、CNNなどのメディアは批判を強めています。ここの本質を見極めないと、何が起こっているのかを理解できないと思います。

飯田)在外公館の安全を確保することは、外交に関するウィーン条約で国際的にも決まっていて、基本的にはその国に責任がある。

米軍、中東に3千人増派へ イランのソレイマニ司令官殺害について話すトランプ米大統領=2020年1月3日、米南部フロリダ州(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

大統領選を控えているなかで戦争はしたくないトランプ大統領

須田)それが義務を果たしてくれないものだから、致し方なく攻撃を仕掛けたということを考えれば、次の展開としては、アメリカとイランの革命防衛隊も含めて全面戦争につながって行くかというと、そうはならないだろうというのが私の読みです。アメリカの若者の血が流されるという状況になると、アメリカ国内の世論が批判的になりますから、トランプ大統領としても、11月に大統領選挙を控えているなかで戦争はしたくありません。イランにとっても同じです。イラン国内も、大規模な反政府デモが相次いでいます。

飯田)それこそ、100人単位で死者が出ているような。

マシュハド(イラン-Wikipediaより)

イランもアメリカと戦争する体制は整っていない

須田)10月からの反政府デモで、319人が死亡という状況になっています。イランの若い人たちによる、体制をチェンジしようという動きです。失業率が10%を超え、インフレ率が30%に届き、そこにガソリン価格の値上げという経済的要因から、とうとう怒りに火がついてしまった。イランはイスラム原理主義によって、完全にコントロールされていると理解されているのですが、そうではない。イランの普通の国民は、それほどイスラム教に対して信心深い状況ではありません。パフラヴィー体制を打ち崩したイスラム原理主義の人たちが権力を握っているものだから、そこが全部掌握しているかと言えば、必ずしもそうではない。経済的な逼迫を受けて、若いイラン国民を中心に、体制を転覆させるような要求をするデモが起こっています。国内にそれほどの波乱要因を抱えているなかで、イランとてアメリカと戦争をできるだけの体制は整っていません。

飯田)ことによると、第三次大戦ではないか、ということを報じるメディアも日本国内にありますが、冷静に状況を見れば、両国にそんな余裕はなさそうだということですね。

須田)冷静に見なくても、何が起こっているか確認すればすぐにわかるはずです。どうしてそういう報道になるのか。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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