トランプ大統領の弾劾裁判〜選挙キャンペーンの一環としての“泥仕合”

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月24日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。22日に民主党の下院議員団による意見陳述が始まったトランプ大統領の弾劾裁判について解説した。

ワシントンで、弾劾裁判の審理入りを前に記者団の取材に応じる検察官役のシフ米下院情報特別委員長(アメリカ・ワシントン)=2020年1月21日 写真提供:時事通信

民主党の検察官役が意見陳述を開始

ウクライナ疑惑をめぐる、アメリカのトランプ大統領の議会上院での弾劾裁判は22日、検察官役の野党・民主党の下院議員団による意見陳述が始まった。主任検事役のシフ情報特別委員長は、「トランプ氏を罷免しなければ、私たちはアメリカの国際的地位を損ねることになる」と主張し、トランプ氏に有罪評決を下すよう訴えたということだ。意見陳述は24日までの3日間の予定で、1日8時間ずつ行われる。25日からはトランプ氏の弁護団が、日曜日を除く3日間にわたって意見陳述を行う予定である。

飯田)とりあえず検察がやっていると。

宮家)CNNを観ていると、これでもかというぐらい、朝から晩までずっと生中継をやっているわけです。意見陳述と言うけれど、実際はテレビを意識した完全なショーです。演説の繰り返しなのですよ。テレビのこちら側にいる我々はまだいいのです。問題は、陪審員の役をやる上院議員たちです。上院議員は100人います。彼らは8時間喋ってはいけない、ものを読んではいけない、スマホもやってはいけない。眠気でみんな倒れてしまうと思いますよ。このショーが茶番だとは言わないけれど、選挙を目当てに両方でいろいろやっているということです。

「2020米大統領選」「再選へ大統領権限乱用」 ウクライナ疑惑を巡る弾劾調査について記者会見する、米下院情報特別委の委員長=2019年12月3日、米ワシントン(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

大統領選の一環の“泥仕合”

宮家)もう1つ面白いのは、民主党が証人としてボルトンさんを呼ぼうとしていることです。前大統領補佐官ということで相当中身を知っている人ですから。これに対し、トランプさんは外交上の問題が生じる恐れがあるから呼ばないほうがいいと言っているのです。私だったら、「外交上の問題をつくったのはあなただろう」と言いたいところですが、いずれにせよ泥試合だと思いますね。もしボルトンさんを呼ぶことが決まれば、それに対応する形で共和党は「それならバイデンさんの息子を呼べ」となるでしょうね。

飯田)ウクライナで事業をやっているなかで、いろいろ疑惑があるというのは、もともとバイデンさんの息子さんの疑惑をウクライナの大統領に調べてみろと、トランプ大統領が言ったことが発端でしたものね。

宮家)これは大統領選挙の一環だと思って見ないといけないでしょうね。そして、民主党のサンダースさんやエリザベス・ウォーレンさんも上院議員ですから、あの議場内で座っているはずなのです。しかも8時間、何もしないでですよ。恐らく時間の無駄だと思っているでしょうね。

飯田)これではキャンペーンができないですね。缶詰にされてしまう。

宮家)さぼっていたら、それはそれで文句を言われますよね。「仕事をきちんとやれ」ということになるでしょう。

飯田)延ばして証人を呼ぶとなれば、民主党も当然傷つくうえに、民主党の大統領候補もキャンペーンができずに缶詰めになる可能性がある。

宮家)本当に何をやっているのかわからないけれど、大統領弾劾に関するスケジュールはどんどん時間がずれて来たから、とうとう大統領予備選の党員集会の時にかかってしまったということです。

米ワシントンで、弾劾訴追について述べるペロシ下院議長=2019年12月5日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ大統領は善戦する可能性が高い〜6つの州で決まる

飯田)やはり2月くらいまでは。

宮家)2月3日にアイオワ州の党員集会があって、日本時間で4日には結果がわかるでしょう。いまは民主党の候補者が混戦で星雲状態ですけれど、アイオワ州の後、2月中に4つくらいの週で党員集会と予備選があり、3月3日にはスーパーチューズデーがあるので、それで大勢が決まると思います。誰になるか知りませんけれど。

飯田)いまのところはバイデンさんが有利と言われていますが。

宮家)これでまたバイデンさんの息子の話が出て来れば、泥試合になる。そうしたらトランプさんはこれだけやっても倒れないのだから、支持率もあまり落ちないでしょう。

飯田)30%〜40%は岩盤がありますからね。

宮家)彼らはトランプさんがどんなヘマをやっても、それを信じませんからね。そうするとトランプさんは善戦するでしょう。勝ってもおかしくないですね。

飯田)大統領選の仕組みとして、勝者総取りの州が多いということですが。

宮家)ほとんどそうですね。大統領選挙人の総和を競うわけですから、選挙人の多い大きな州で勝てばいいのですよ。小さな州で3人しかいないところで勝っても、全体でも30か40しか来ませんからね。それに比べるとカリフォルニアだけで選挙人は数十人ですからね。そういう戦いになるのですけれど、いまのままだとトランプさんは決して不利ではないですね。

飯田)揺れている州がいくつかあって、そこをどう取るかという話になって来る。

宮家)そうです。スイング・ステートと言われますけれども、2016年にトランプさんが勝ったのも6つの州で勝ったからです。2012年と比べると、50州のうち44州の結果は同じですから。僅か6州だけをひっくり返して勝ったのですよ。場合によっては数万票の差で。だから今回の場合も、2012年とは逆に6つの州がひっくり返れば民主党が勝つということです。

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