菅官房長官が「習近平国家主席訪日の予定に変更はない」と言う本当の意味

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月3日放送)にジャーナリストの有本香が出演。習近平国家主席の来日について解説した。

衆院予算委員会でマスク供給不足について答弁を行う菅義偉官房長官=2020年2月26日午前、国会・衆院第1委員室 写真提供:産経新聞社

菅官房長官〜習近平国家主席の来日について「十分な成果上げる必要がある」

菅官房長官は2日午前の会見で、新型コロナウイルスの感染拡大で延期が検討されている中国の習近平国家主席の国賓来日に関して、「現時点では習氏の訪日の予定に変更はない」と述べた。同時に「中国国家主席の訪日は10年に1度であり、十分な成果を上げる必要がある。こうした観点から日中間で緊密に意思疎通を図って行きたい」とも語った。

飯田)総理も2月29日の会見のなかで「中国国家主席の日本訪問は10年に1度のことであって、十分な成果を上げる必要がある」と説明していました。ただ、どうなるのか。

有本)桜の咲くころというのは基本的に無理でしょう。今年(2020年)は桜が早いようですし。

飯田)記録的な暖冬という話ですね。

有本)私も含め、多くの人が国賓としてお呼びするのはいかがなものかと言って来たわけです。コロナウイルスのことがあるなしに関係なく、2019年は香港で大きなデモがあって、あのような事態に発展しました。ウイグル人への人権弾圧も、国際的に大きな問題になっています。ここに来て新たなニュースとして、搾取工場で奴隷労働をさせているのではないかと。アメリカ系の世界企業も名前が出ていますから、大きなニュースになると思います。そういう独裁国家のトップを、天皇陛下の最高賓客としてお迎えするのはいかがなものか。ましてやコロナウイルスの感染が日本でも拡がって、しかも発生国は中国です。その初動には非常に問題があったし、情報公開が十分でないと中国国内からも告発する声もあります。そのなかで国賓というのはあり得ないという流れなのですが、日本側からこれをなかなか言い出せませんでした。政治的スケジュールがあったために、どうしても中国からの渡航制限がかけられなかったことも間違いないのですよ。

飯田)ワシントンポストが報じていますよね。

有本)産経新聞の一面で古森さんがお書きになっているのですが、2月19日の記事で、私も原文を読みました。これは論評記事というよりも、これまでの日本政府の対応を長く書いた記事のなかの一節としてあるのですが、「安倍晋三首相はコロナウイルスへの正面対決よりも、習近平国家主席の訪日を前に、中国の気分を害さないことに気を使った」と産経では引用されています。もう少し正確に言うと、「コロナウイルスに向き合うよりも、習近平氏の訪日を前にして中国に気を使ったと批判している評論家たちがいる」と書いているのです。

飯田)国内でそういう声が上がっていると。

有本)この記事は、他の部分では「誰がこう言っている」と名前を挙げているのですが、ここだけは「評論家たちが」と言っています。ひょっとしたら我々も含まれているのかもしれません。国内で反発の声がある、と断言まではしていないけれども、恐らくそうだろうという形で書いているのです。誰がどう見ても、4月に呼ぶのは無理だと思います。29日の記者会見でという話がありましたが、28日の夕方に総理は楊潔?さんと会っているのです。

飯田)中国外交担当のトップですね。

日中首脳会談=2019年12月23日 写真提供:時事通信

習主席の訪日には“入念な準備”が必要

有本)この人と会ったときに、カメラが入っている場面で菅官房長官が言っていることと同じことをおっしゃっていて、要するに「10年に1度だから十分な成果を上げる必要がある」と。その後で「だから入念な準備が必要だ」と言っているのですよ。1ヵ月先のことを、いまから入念な準備と言ってもできるわけがありません。そこはそう読まなければいけないと思いましたし、いまの段階で閣議決定もしていません。つまり、日本としては正式に「GO」とはなっていないではないですか。

飯田)それこそ先週には、「週末に閣議決定も」という記事があったくらいですが、その話はありませんね。

有本)それどころではなくなって、学校も休校要請する事態になっていますから。そもそも、言われていたスケジュール通りに呼ぶための入念な準備は難しいという話なのだと思います。

新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相(手前)。感染拡大を防止するため、全国すべての小中高校や特別支援学校を3月2日から休校とするよう要請すると表明した=2020年2月27日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

有本氏が見た安倍総理の様子

飯田)いろいろと質問が来ているのですが、「その会見の前日に有本さんは総理と会っていませんか?」というものがあって、なかなか表には出せないことも多いと思いますが、どうでしょうか?

有本)会話の内容については申し上げられないのですが、私としては言いたいことは全部言いました。かねてから言って来たコロナ対策に関すること、あるいは習近平国家主席の来日に関すること。それだけは言えます。

飯田)世の中の雰囲気も、官邸のなかだけではなく外でやっていれば感じるところもあるし、それも含めてですか?

有本)情報は意外と面白いもので、外交では外務省だし、疫学的には専門家や厚生労働省ですが、その情報がどのように強弱をつけられるかという問題があるわけですよ。

飯田)上に上がるまでに何段階もあるものですし。

有本)総理はその辺りを気にしていらっしゃると思います。

飯田)それも含めて、いろいろな人と会ってと。

有本)今回も、厚生労働省には総理の信頼が厚いですよね。あまり知られていないのですが、もともと安倍晋三さんは厚労族なのです。だから厚生労働の分野には非常に詳しいし、信頼感もあるのですよ。そういう意味では厚労省のスタンスや具申を非常に重く受け止めているのだけれど、総合的な判断をする上で、自分のところに上がって来ている情報にどのような優先順位がつけられているのか、確認したいところはありますよね。

飯田)一面だけではなく多面的に見て、最終的な判断を下すと。

台湾総統選で再選を果たした民進党の蔡英文総統=2020年1月11日、台北市(共同) 写真提供:共同通信社

日本は台湾を見習うべき

有本)そうですね。官邸も、基本的には官僚出身者ではないですか。しかし、こういう場面に来たときに、必ずしも官僚の考え方や思想だけでいいというわけではないという部分を、考慮しようということだろうと思います。私は、学校を休校するということについては、むろんそれでマイナスや戸惑いを感じる方が出て来るとは思うのですが、これくらいのことをやらなければどうするのかというところもあると思います。

飯田)民主主義国家であって、基本的人権が憲法で保障されている以上、無体な都市封鎖のようなことはなかなかできない。そのなかでどうやるかですよね。

有本)台湾の取り組みを見ると、あそこは大統領制なので権限の強さが違うのですが、日本にもできることはまだあったのだろうという気はします。例えば公共の建物に入るときに、台湾では体温チェックが義務付けられていると思うのです。

飯田)それは、体温計を置いておくだけで対応が可能であったと。

有本)いまは一瞬で計ることができますからね。そういうことや、感染経路を不明瞭化するような嘘の申告をした人には、日本円で100万円以上の罰金を科すなど。こういうことを含めて、法整備のなかに盛り込む必要があると思います。

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