森友問題「出世のために部下を殺していいのか」佐藤優が明かす官僚のパワハラ体質

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月19日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。森友学園問題に絡んで、官僚のパワハラ体質について解説した。

参院予算委員会で証人喚問に臨む佐川宣寿前国税庁長官=2018年3月27日午前、国会 写真提供:産経新聞社

森友問題を再検証〜立憲民主党など野党4党がヒアリングを実施

立憲民主党など野党は19日、学校法人「森友学園」の国有地売却問題を再検証するチームの初会合を開いた。このなかで、国有地売却問題を担当し自殺した財務省近畿財務局職員の手記と財務省の報告書の記述との違いをめぐり、担当者を追及した。

森田耕次解説委員)今回手記・遺書を残したのは2018年3月に自殺した近畿財務局の上席国有財産管理官だった赤木俊夫(あかぎ・としお)さん当時54歳です。訴状などによると、当時財務省理財局長だった佐川宣寿氏は、安倍総理大臣が国会で「私や妻が関係していたら、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した後の2017年2月から3月、部下に対し「野党に資料を示した際、森友学園を厚遇したと取られる疑いのある箇所はすべて修正するように」などと改ざんを指示したということです。赤木さんは当初抵抗したのですが、結局3,4回に渡り安倍昭恵夫人や政治家らの関与を示す部分の改ざん作業を強制され、長時間労働や連続勤務で心理的負荷が過度に蓄積し、2017年の7月にうつ病を発症して休職。「検察は近畿財務局が主導で行ったという絵を描いている」と大阪地検特捜部が捜査を始めたころからそういった話を周囲にするようになり、2018年の3月に自殺したということです。奥さんが18日に国と佐川氏に対し、合わせて1億1000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しています。これを受けて野党側が再検証チームの初会合を開いたということですが、麻生財務大臣は「新たな事実が判明したことはない。再調査を行う考えはない」と19日の閣議後の記者会見で述べています。

森友問題再検証チームを発足し会見に臨む野党各党の役員。中央は立憲民主党・川内博史座長=2020年3月18日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

政争の具として利用しようとする野党

佐藤)これは説得力のある証拠だと思います。ただし、野党がこれを政争の具に使おうとしているのはよくないです。いまはコロナのことで国民も国会も頭がいっぱいだし、これはコロナのなかに埋没してしまうでしょう。もし本当に赤木さんの思いと真相を究明したいのだったら、いまは直ちにやらないけれど、この問題はそのまま置き去りにはできません。いままでの政府の説明が全部崩れる話だから、このコロナがひと段落ついたときに徹底してやる宣言をして政治休戦するのがいいと思います。その方が真相も究明できるし政権の問題点を追及できますが、いまこれを始めたって埋没してしまいます。

森田)もちろん重要な問題ではあるけれど、このタイミングではないと。

佐藤)重要なことなのですが、タイミングがあるわけです。麻生さんがこんな発言をしたら「ふざけるな」と普通のときにはなるのですが、いまはなりません。それは、「コロナ疲れ」があるからなのです。コロナの戦時下ということ、赤木さんの無念の思い、そして国民には知る権利があります。それについてきちんとやるには、静かな環境でいつやるのかということがとても重要です。野党はこれがわかっていないので、何か材料があれば与党を攻撃できるものなら何でも使うという姿勢が見えてしまうと、本当に真相を究明しようとしているのかということ自体が疑わしく感じられてしまいます。

【森友事件初公判】大阪地裁を出る「森友学園」前理事長の籠池泰典被告=2019年3月6日午後、大阪市北区 写真提供:産経新聞社

部下を切り捨てる官僚の体質

森田)今回の赤木さんの手記について、安倍総理大臣は19日の参議院の総務委員会で「痛ましい出来事であり、本当に胸が痛む思いだ」と述べた上で「公文書の改ざん問題については国民の信頼を揺るがす事態となってしまったことに対し、行政府の長として大きな責任を痛感している。改めて国民にお詫び申し上げる」と述べていますが、再調査については「検察で既に調査を行い、結果が出ていると考えている」と述べています。ただこの手記を見ると、森友事案はすべて財務省の指示だと。「本省の対応が社会問題を引き起こして、嘘に嘘を塗り固めるという通常ではあり得ない対応を佐川氏が引き起こした」最後には、「財務官僚王国だ。最後は下の人間が尻尾を切られる」と綴られているのですね。

佐藤)下部が切られるのは財務省だけでなく外務省も同じです。

森田)佐藤さんも外務省では相当辛い目に遭われたというのは書いていますね。

佐藤)人によってはいろいろな耐性があって、私と同じような環境でうつを発症した人は何人もいますからね。ただ、赤木さんの無念の思いというのは元官僚の私としても伝わってくるので、真相を明らかにして欲しいのです。それと政争の具として使うのは別の話です。与党の国会議員にも、まともな人はいくらでもいますから、これはまずいなと。なにがまずいかというと、総理に言われてやったというなら構図は簡単なのです。総理は何も言っていません。なぜ過剰に忖度する体質になっているのか。それは、率直に言って出世したいからですよ。出世したいから部下を殺してもいいのでしょうか。私は外務省の中堅くらいまでしかいませんでしたから、そういう上司を何人も見ていますよ。

元外務省主任分析官・作家 佐藤優

霞が関の実態〜横行するパワハラ

森田)霞が関ではそういうのは当たり前ですか。

佐藤)私の周辺で自殺した人もいるのですが、これはある上司が会合で「あなたはやる気があるんですか、能力がないんですか、その両方ですか」と詰めたのです。それで、会議では椅子で前を向いて座らずに、後ろを向いて座るようになったのです。その後、隣の方との間はパーテーションで区切っているのですが、そこのところからときどき首を出して「バーカ」と言うようになってきて、かなり疲れてきているなと。そしたら、あるときボイラー室で首を吊ってしまったのです。そのときにその幹部はある国に出張しようとしていたのがすぐに戻ってきて、その課長のところで「遺書はありますか」と聞いたのです。思い当たる節があるのですよ。それで「メンタルに相当な問題があって人権問題だ」という根回しをして、新聞には一切報道されずに終わりました。私自身が経験した話です。

森田)省は違うとはいえ、霞が関で実際にそういうことが起きているのですね。直接接点はなかったようですが、赤木さんによれば佐川さんも相当なパワハラだったと書いているようですからね。

佐藤)パワハラ上司は、私のころは怒鳴る、物を投げる人なんていくらでもいました。

森田)こういった体質が今回明らかになったので、霞が関全体でこれを変えていかなければいけないのですね。

佐藤)そのためには真相を究明しなければいけないから、きちんとした環境でやらなければいけませんが、いまはそのタイミングではありません。

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