「緊急事態宣言」〜感染を防ぐか経済を守るか“究極の政治判断”

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月1日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。新型コロナウイルスの感染拡大に関し、小池都知事と安倍総理が会談したニュースについて解説した。

安倍晋三首相との面会を終え記者団の質問に答える小池百合子東京都知事=2020年3月31日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

新型コロナウイルスの感染拡大、小池都知事が安倍総理と会談

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都の小池知事は3月31日に安倍総理大臣と会談し、都内の感染状況を説明した。特別措置法に基づく緊急事態宣言については、小池都知事が記者団に対し「国家としての判断がいま求められている」と話した。

飯田)31日に都内で感染が確認された方は、過去最多の78人。全国では1日で200人を超える感染者が確認されました。

G20首脳のテレビ会議に臨む安倍晋三首相(右)=2020年3月26日夜、首相官邸[内閣広報室提供] 写真提供:時事通信

大事なのは「感染経路不明」の数字

佐々木)この増加をどう見るかは、2つポイントがあります。1つは78人と、確かに前々日までに比べると増えていますが、前日の30日は13人しか出ていません。日曜日は病院が休みで、報告が少なかったからではないかということです。13人と78人を足すと、2日で91人。その前日は68人なので、そんなに増えていません。また感染者数だけを見るのではなく、クラスター感染…スポーツクラブや老人ホーム、病院、東京では永寿総合病院にたくさん出ているので、そこを引かなくてはなりません。もう1つは輸入感染と言われる、帰国者や入国者からの感染者も引かなくてはいけません。残りの「感染経路不明」が数字として大事なのですが、いまのところ30人〜40人くらいで推移していて、それほど変化していません。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議=2020年2月24日午前、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

感染爆発とは

佐々木)感染者数は増え続けているのですが、正比例で増えているものはそこまで問題はありません。例えば昨日が20人、きょうが30人、明日は40人、明後日は50人と増えて行くのは、感染していれば仕方のないことです。問題は西浦博さんという、厚労省クラスター対策班でデータ分析を主導している北大の教授が、30日の都知事の会見で「指数関数的に増えているかが大事だ」と強調していました。指数関数というのは、数学で放物線のグラフがありますよね。y=xなら正比例ですが、y=x2はどんどん増えて行きます。例えばきょう20人なら明日は40人、明後日には80人と倍で増加する、これが指数関数です。このように指数関数的に増えているかどうかが、爆発的に増えているかどうかのポイントです。単に正比例で増えているのは、感染爆発とは言いません。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急記者会見する東京都の小池百合子知事。今週末の不要不急の外出自粛を要請した=2020年3月25日午後8時18分、東京都庁 写真提供:共同通信社

緊急事態宣言〜「いつ感染爆発するか」と「経済への影響」のギリギリところでの政治判断

佐々木)この2つのポイントをみると、いまのところ東京は増えているのだけれど、感染爆発には至っていません。「いつ感染爆発するか」を見極めることが重要です。政府が緊急事態宣言をいつやるのか。政府が成立した新型コロナウイルスに対する特別措置法に基づいて、緊急事態宣言を行う。ただし、その前に国会の付帯決議だったのですが、諮問委員会や感染症の専門家たちに意見を聞いて、その意見をもとに行うということです。諮問委員会も何度も開かれています。この前どこかの報道で、「諮問委員会のメンバーの大半が、もう緊急事態宣言を出した方がいいと言っている」と、諮問委員会の1人が証言していました。ではなぜ出さないのか、ここは完全に政治判断なのでとても難しい。要するに、いま出してしまうと経済への影響が計り知れない。経済への影響を考えると、ギリギリまで「持ちこたえるのであれば、出さない方がいい」というのが、専門家の判断というよりは安倍政権の政治判断です。これをよしとするか、遅いとするかは一言では言い難い。どちらがよいか悪いかは、やってみないとわかりません。出さないでいるのは、まだ感染爆発していないということで、僕はその判断を支持していいかなと思います。

飯田)独自の判断ではなく医療の専門家の意見も聞き、かつ経済の専門家の判断も聞いているような状態。ここが綱引きになるということですね。

閑散とする羽田空港国際線の出発ロビー=2020年3月28日午後、東京都大田区 写真提供:産経新聞社

難しい最後の判断をするのが政治家

佐々木)医療の専門家としては「封鎖した方がいい」と言いますが、経済の専門家としては経済への悪影響は避けた方がいい。それは相反するではないですか。これは一種のトロッコ問題です。どちらの方が影響が少ないのか。政治とはトロッコ問題のような、「どちらに行った方がいいか単純に答えが出ない」ところで最終的な判断を行うものです。まさに政治力が試されている局面だと思います。

飯田)トロッコ問題は、大学のゼミの問題で話題になったりしますよね。トロッコが暴走していて、真っ直ぐ行ったら3人が死んでしまうかも知れない。ポイントを左に切り替えると1人死ぬかも知れないけれども、それをあなたが判断するというものです。

佐々木)難しいですよね。その最後の決断をするのが政治家だと思うと、我々は政治家の判断を支持する、しないに関わらず、そういう政治決断があると理解する必要があると思います。

新型コロナウイルス感染者が拡大し、マスクを着用して通勤する人ら=2020年3月5日午前、大阪市北区 写真提供:産経新聞社

感染症の問題で先手を打つことは不可能

飯田)どういう判断をするにせよ、どの根拠でやったのかをきちんと残しておいて、後世で検証できるようにしておかなければなりませんね。

佐々木)どちらにせよ、感染症の問題に先手を打つのは不可能で、すべての国が後手に回っています。そう考えると、この状況で「政府が後手に回るな」と言うのも僕はよくないと思います。

飯田)今回のように専門家と一緒に会見を行ったり、意見を聞いたりすることが表に出ているのは、少し変わったなと思います。

佐々木)小池さんの30日の会見で、クラスター対策班の西浦先生、大曲先生が同席されていて安心感がありました。政権の会見も専門家が同席された方が、「自分の政治判断は専門家の知見が裏打ちされている」ということが見えていいと思います。

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