アメリカ空母艦長解任の是非〜世界中の軍隊に可能性のあるコロナ感染

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月10日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米軍の原子力空母セオドア・ルーズベルトのクロージャー艦長が解任されたニュースについて解説した。

コロナ感染拡大の米空母艦長を解任

アメリカ軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」のクロージャー艦長が先週、突如解任された。この艦内では100人近くが新型コロナウイルスに集団感染し、艦長は「戦争でないのに乗組員が死ぬ必要はない」と救援を求める書簡を海軍上層部にメールで送っていたが、同じ書簡を外部の20人以上にも送っていたため、海軍は情報漏洩だとして解任した。

飯田)コロナの感染から部下の命を守るために、上官の命令に反した勇気ある行動と言えないこともないのですが、この是非について宮家さんに伺ってまいります。9日の産経新聞のコラム「宮家邦彦のWorld Watch」に、このことを書かれています。

記者が座る椅子がそれぞれ1メートル以上離して配置された米国防総省での記者会見=2020年3月10日 写真提供:産経新聞社

艦長は都道府県の知事と同じ

宮家)艦長さんは日本の都道府県の知事と同じです。自分が責任を持っている人々がいて、その人々のなかで感染が始まっている。しかも、アメリカの空母は乗員が6000人くらいでしょう。中国だったら、小さな村ですよ。そこで蔓延が始まったら、水兵さんを守らなければならない。これは正しい。直訴の書簡を海軍の上層部だけでなく、マスコミにも配ったわけです。何とかしてくれと。それで彼は解任されましたけれども、結局空母はグアムに行って、多くの人が下船しました。しかし残念ながら、いまも感染者は増えているようです。ですから、この艦長の判断は正しかったと思います。

西太平洋に展開する空母はこの「セオドア・ルーズベルト」だけ

宮家)論点としていくつかありますが、いちばん大事なのは「人命が先か、国防もしくは抑止力が先か」ということです。人命が先だということは当然なのですが、安全保障の観点で見ると最大の問題は、現在、アメリカの空母が10隻しかないということです。10隻のうち、普段使えるのは3分の1です。現在、西太平洋に展開している空母は、横須賀でメインテナンス中の「ロナルド・レーガン」を除けば、これだけです。そうすると抑止力はどうなるのだ、南シナ海はどうなるのだという話になる。しかもこの艦長、軍人なら、きちんと上司の命令を聞かなくてはいけないではないか、という考え方ももちろんある。彼は勇気を出して、職を賭して頑張ったのだと思います。彼を称賛する人は多いと思いますし、彼が解任されて船から降りて行くところで、水兵さんたちが拍手喝采をして見送っている映像を観ました。とても感動的な映像でしたよ。

「中国ウイルス」を正当化 2020年3月17日、米ワシントンのホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(中央)(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

3密の極たる艦船〜どの船にも新型コロナ感染の可能性がある

飯田)「セオドア・ルーズベルト」の話はクローズアップされて、日本でも報じられています。しかしそれ以外にも、9日にポリティコという専門誌が報じていましたが、第7艦隊、日本を中心に展開している「ロナルド・レーガン」からもコロナ感染者が出たという話がありました。

宮家)船は「3密」の極たるものです。アメリカ海軍だから情報が外に出て来て、健全に対処されていますが、中国の人民解放軍の海軍だったら、同じ状況になっても情報は外にはなかなか出せないでしょう。この問題は、世界の軍隊全体の問題でもあるのです。

飯田)アメリカ海軍の抑止力は当然、日本の安全保障にも直接関わります。

宮家)直結しています。ですから、しっかりと対応してもらわなければいけないと思います。

飯田)日本の自衛隊からは、ほとんど出ていないということです。

宮家)いまのところね。

飯田)今度、ホルムズ海峡にも代わりの船が行くと。河野防衛大臣も、感染などがないように万全を期すと会見で言っていましたけれども、これは対岸の火事というか、人ごとではない。

宮家)人ごとではありません。世界中の問題です。

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