新型コロナによる中東の苦悩〜ラマダンができず、原油価格も暴落

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月24日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。新型コロナウイルスがイスラム教徒のラマダンに影響を及ぼしているニュースについて解説した。

イラクの首都バグダッドでラマダンの準備のため買い物をする人々=2020年4月23日(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

新型コロナがラマダンにも影響か

イスラム教徒の方々は、4月24日前後からおよそ1ヵ月の断食月(ラマダン)を迎える。通常は日没後に大勢で食卓を囲む機会が増えるようだが、新型コロナウイルスの影響で、現在はセネガルから東南アジアに至るまで各地のモスクが閉鎖されている。大人数による礼拝や集会が禁止されているため、およそ18億人のイスラム教徒の方々は不安を抱えている。

飯田)宮家さんは外務省の時代から、中東も専門でやっていらっしゃいました。ラマダンというのは日の出ている間、水も飲んではいけないのですよね。

宮家)タバコもダメです。言い方は難しいのですが、あえて言うと断食というよりは「暴飲暴食」月です。要するに、昼間は食べるのをじっと我慢する。でも日が沈んだら、ものすごくたくさん食べて飲む。もちろんお酒は飲まないけれど・・・。私に言わせれば運動不足で太るし、いいことはないと思うのだけれども、「いや、そんなことはない。断食は非常に健康にもいい」と言う人もいるので何とも言えませんが、中東のイスラム教徒にとってはそういった意味で年に1度の楽しみであり、お祭りなおです。友だちや一族郎党が日没後集まるのですが、それは完全な「3密」だから、今のままではできなくなってしまう。家に集まることも多いし、レストランに集まるケースもあるだろうけれど、これをどのような形で規制するのかは各国、難しいだろうと思います。これはイスラム教の教えですから、イスラム法学者が宗教的な解釈をする必要がある。各地域の宗教指導者がファトワ(宗教令)を出してそれぞれ指示するのだと思います。日本のコロナの専門家会議と同じように、いろいろな人々の意見を聞いた上で例えば「10人以上で集まるのはやめなさい」などと言うのでしょうね。いずれにせよ、相当大きなインパクトがあることは間違いないと思います。

飯田)もちろん感染症の専門家の意見も聞くでしょうけれども、「クルアーン」の解釈とどう照らし合わせるのかというところも、非常に悩むわけです。

宮家)「コーラン」と言わないところは流石ですね。これはイスラム教だけの問題ではなく、コロナウイルスという観点では、ニューヨークでもユダヤ教のシナゴーグやキリスト教の教会での集まりがクラスターになるケースがあるわけです。宗教的には大事だから行きたいのだけれど、似たようなケースは韓国でもありましたが、そこがクラスターになる可能性が大きい。そういうことを考えると、なかなか難しい問題があります。

ウィーンの石油輸出国機構(OPEC)本部=2020年4月9日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

中東にとってのもう1つの問題〜原油価格の暴落

宮家)この関係ではもう1つ、ご存知の通り石油価格が暴落しています。先物はマイナス40ドル。売ろうとしたら「40ドルあげるので買ってください」という、変な話になっている。イスラム圏の産油国にとっては大きな問題です。また石油は出ないけれど、産油国に頼っている貧しい中東の国々にとっても、これは死活問題です。ラマダンでフラストレーションが溜まった上に、石油の値段が下がる。そうすると失業者が出るだけでなく、国民の年金などもカットされるかも知れない。かなり大きなインパクトがあると思います。

飯田)福祉はほとんど国に丸抱えという国が多いなかで、そうなってしまう。アラブの春ではその辺りの不安・不満が噴出したわけです。

宮家)2011年と同じことが起きるとは思わないけれど、例えばイラク政府の収入の大半が石油です。サウジアラビアも80ドルなくては国家予算が成り立たないと言われています。

飯田)1バレルあたり。

宮家)現在の中東はラマダンだけではなく、石油価格暴落も大きなインパクトがあるということです。

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