毎日の感染者数に一喜一憂しない〜緊急事態宣言発令下でのデータの見方

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月29日放送)に東京外国語大学教授で政治学者の篠田英朗が出演。新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした緊急事態宣言下での考え方、動き方について解説した。

御堂筋で外出自粛の呼びかけを表示する大阪府警の車両=2020年4月30日午後、大阪市中央区

7都府県への緊急事態宣言発令から3週間

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため政府が発令した緊急事態宣言。5月6日に期限を迎えるにあたり、これを延長する見通しとなっている。

飯田)いちばん最初の緊急事態宣言が出されてから3週間となりました。16日には全国に拡大をされていてそれからも2週間。世の中変わってきているという感じですが、篠田さんはどうご覧になられていますか。

篠田)世の中本当に変わっていますよね。1〜2ヵ月前には常識ではなかった風景が日常に代わってきています。

飯田)やっているお店に対してもけしからんというような世の中の雰囲気が出てきていますよね。少し人々の目が険しくなってきていますよね。

篠田)殺伐としています。緊急事態宣言のなかなので殺伐としているのは誰も悪いわけではなく、緊急の雰囲気はこういうものなのかなという印象です。日本だけではなく、諸外国では日本のロックダウンはぜんぜん違うとかいろいろな言い方があります。見方と程度の問題だと思いますが、共通の敵に向かって自国の状況に応じた対応をしています。そのなかで人と接するのを減らす措置はほとんどの国がとっています。そのなかで措置を段階的に緩和していくかは現在すべての国が苦悩していることだと思います。日本は日本なりのやり方をしたので、日本なりの段階的な解除のやり方を苦悩します。始めるときよりも終わりにするときの方が難しいです。なぜなら「明日ウイルスをなくそう」といってなくせるものではないからです。そこをどう評価して具体的な政策につなげていくかというのは高度な応用が問われる問題でしょう。

「8割」は計算式上の目標〜自己判断の積み重ねのなかで結果を見るしかない

新型コロナウイルスのクラスター感染防止策について、記者会見する北海道大・西浦博教授(中央)=2020年4月15日午前、厚労省 写真提供:共同通信社

飯田)1つには実効再生産数、1人がどのくらいに感染させるかという数字、緊急事態宣言が出る出ないのタイミングでは1.7くらいといわれていました。これが1を割ってくればだんだんと減少に向かうという数字ですが、それ以降出てきていません。何をベースにして今後の政策が決まってくるかがみえなくなってきているような気がしますが、どうですか。

篠田)情報不足・専門家不足のなかで、専門家会議の方々とクラスター対策班の発言が異様に取り上げられるという現象が起こっていて、分析を淡々と表現できないという状況に陥っています。「専門家の誰々がこう言った」と、ばーっと出るとか。また、少し操作的に発言しているのかなという研究者の方もいらっしゃるので、そこをじっくりみていくと、いろいろな意味で不透明感や疑心暗鬼が生まれる仕組みになっています。特異な状況です。

飯田)その感染症蔓延させたくない医学の専門家からすれば誰1人都市に出てこない環境が最適であると。ただそれをやると経済が完全に死んでしまうということになります。その辺のさじ加減ですよね。

篠田)数理モデルの計算上は、単純に計算式で人間が接触して「うつす」「うつさない」というのをやっていけばいいのですが、現実では、「2メートル空いていますが、これは0.8(8割)くらいの計算で」とかはないです。そもそも「2メートル離れていると0.8」というのはないです。大きな声で会話をした、あるいはしなかった場合でも違います。しかもこれを、家庭のなかまで入っていって会話のレベルを国民1億2500万人分を1ヵ月計算するのはできません。8割というのは計算式上の目標です。経済活動が止まるというのはそうです。残した2割で病院を動かして食糧配るということをしないとみんな死んでしまいます。

飯田)物流を動かさないといけないということですよね。

篠田)経済云々どころかみんな死んでしまうということです。これをやると2割になって、これをやると2割を超えますとか一線(を引くの)は難しいです。自粛できる人は自粛し、できないという自己判断の積み重ねのなかで結果をみると減った、それは8割近く減ったというのは結果をみていくしかないと思います。ここの難しさというのはあります。

【新型コロナ 箱根湯本】観光地の箱根湯本駅前商店街は軒並み臨時休業し、シャッターが閉まっていた=2020年4月29日午後、神奈川県箱根湯本 写真提供:産経新聞社

感染者数に毎日一喜一憂するということではない

飯田)各々で出てくる数字というのが2週間前の頑張りだとか、遅れて出てくることで出口戦略がみえづらくなっているところでもあるのでしょうか。

篠田)2週間しないと結果、概略がわかってこないというのは非常に微妙なものです。さらに今回実際いま、東京都も全国も減少の傾向が顕著になっています。正直に申し上げると4月に入ったところから増加はしていますが、増加というのは1日当たりの新規感染者数が、「7日移動平均」と言いますが7日間の平均値をとって統計にしていきます。なぜなら曜日の偏差があるためです。平均をとったときに明らかに毎日増えているとみえる部分と、だいたい10日過ぎくらいから毎日減り始めた部分があります。ただ4月に入ってから上昇のやり方が鈍化しています。3月の下旬、気の緩んだ3連休後から4月の頭くらいは急激な拡大というようなものがあったとすれば、それが鈍くなり新規感染者が1日当たり前の日よりも次の日の方が少ないという状態に入っています。それは、緩んだ3月中旬の人出があり、そのあとオリンピックの中止が3月24日に決まり、3月25日に「オーバーシュート」とか「ロックダウン」が有名になった小池都知事の記者会見がありました。これがある種のショック効果を起こしたのは事実です。人の移動が3月最後の週は明らかに減っています。東京を中心に減っていますが、どちらにせよ東京が大きい要素を持っています。そのあとに緊急事態宣言がはじめ7都府県、そのあと全国に広がりました。これを「ロックダウン」と呼ぶかは言葉の表現ですが、3段階の人の移動の制限というのをやってきています。4月7日に白かった世界が急に黒くなったということではなくて、だんだんとやってきています。自粛の度合いが高まってきました。さらにそれが2週間ぐらいずつ効果が出てくると。さらに2週間といってもある日突然効果が出るのではなくてだいたいの人は5、6日で発症すると言われていますから1週間くらいしたところから効果が出始めているはずです。2週間くらいするとみえてきます。変化の仕方が微妙ですが、そのことを踏まえると効果がみえるものもあります。毎日感染者数に一喜一憂するということではないと思います。

飯田)そうするとぎゅっと踏んだブレーキをどう緩めていくかというさじ加減をどこからやりますか。

篠田)緩める方向にいかなければならないと思います。はじめ1ヵ月頑張ってくれと言われた人が1ヵ月のスピードで走った。これが100メートルだとすると、100メートルとして走ったものが急に走れと言われても走れません。

飯田)ちょっとずつやめていく。

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