「制限緩和と経済悪化の推計死者数を比較しているはず」佐藤優氏が分析する新型コロナ対策制限緩和

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(5月5日放送)に作家・元外務省主任分析官の佐藤優が出演。新型コロナウイルス感染症対策における制限緩和について解説した。

感染抑制地域は自粛緩和へ  新型コロナウイルス感染症対策本部の会合後、記者会見する西村経済再生相=2020年5月4日夜、東京都千代田区 写真提供:共同通信社

制限緩和と経済悪化の場合の死者数の推計を比較しているはず

4日、ワシントン大学チームは新型コロナウイルス感染によるアメリカの死者が8月初めまでに13万5000人近くに上るとする推計結果を発表した。これはアメリカ国内のそれぞれの州の行動制限を計算に反映した結果で、4月末の推計の2倍近くと大幅に増加している。

森田)新型コロナウイルス感染による死者はジョンズ・ホプキンズ大学の集計だと世界全体で25万人を超え、死者は1日、2日ごとに1万人近く増える状態になっています。1ヵ月以上にわたって続いていて、死者の数が25万人を超えたと。感染者は4日時点で350万人を超えています。死者がもっとも多いのはアメリカで6万9000人を超えています。そして、710万件を超える検査を実施していることもあって、アメリカの感染者は118万人と世界最多になっている状況ですが、アメリカのワシントン大学の推計で各州の行動制限の緩和を計算に入れると8月初めまでに13万5000人近くの死者が出るということで、4月末に出した推計の2倍近くになるということです。アメリカは州ごとに経済活動を再開していこうということですが、やはり経済活動を活発化させると当然感染者、死者の数が増えるという推計になっているようですね。

佐藤)それと同時に外には発表しないのですが、ホワイトハウスはもう1つ別の推計を持っていると思います。それは厳しい形での規制を敷いていた場合に、経済が理由でどれくらいの死者が出るかです。その両方を比べていると思うのです。両方を比べて緩和した方が死者の数は少ないという計算を持っていると思います。実は日本も恐らくそういったようなことは首相官邸では計算しているはずなのです。それはかなりショッキングな話だから表には出さないわけですよね。緩和をした場合に死者がどれくらい増えるだろうかという推計を持つわけですが、それと同時に緩和をしなければ経済の悪化でどれくらいの自殺者が出るか。あるいは病気の人などが治療をできなくてどれくらい亡くなるかという推計も当然国家は持っています。それで比較して決めているはずですが、表に出すのは片方だけの情報にするわけですよ。

2020年5月4日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見 左は政府専門家会議・尾身茂副座長〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/04kaiken.html)

国民が不安にならないような情報の出し方をしている

森田)日本も4日の総理の会見の後に専門家会議の尾身さんが記者会見のなかで、私たちは感染症の専門のことを言うけれど、経済関係についても専門のチームをつくってそういうものを出して欲しい、ということを言っていましたね。

佐藤)私は実際にやっていると思いますよ。それはまさに国家安全保障局に経済班があるかということですよね。どこまで細かい情報を持っているかは別として、両方のバランスを見ているのだと思います。特に、自殺者に関しては不況との間に相関関係がありますから、感染症のところだけを見ていると国家としては全体像が見えなくなってしまうのですよね。感染症対策で100点を取ろうとすると、他のところで大きなマイナスが出てきます。このバランスをどの国も見始めているのだと思います。

森田)ニューヨーク州のクオモ知事の場合、ニューヨーク州はまだまだ感染者が増えていますから4日の感染者の数が226人増えて1万9400人と2万人近くになっているのですね。それで経済活動を再開するときには業種別に4段階に分けて徐々に範囲を広げていくと。最初の段階は建設や製造業、卸売業。それから2段階目に金融や保険、不動産、小売業など。3段階目に飲食業や宿泊業。最後が娯楽、アート、学校などの教育関連という段階に分けて徐々に経済活動を広げていくということをクオモ知事は出しているのですよね。

佐藤)これはニューヨークだけでなく東京も似たようなことになるのではないかと思います。

森田)当然こういった情報も手に入っている。

佐藤)ですから日本政府は決して情報がないわけではなく、外から見ていると情報がろくになくて右往左往しているように見えるのですが、むしろ情報は全体像を持っているのですがどういう出し方をしないと社会的な不安が強まってしまうのか、国民の安心をどう担保していくかを考えながら情報を出しているように見えます。

2020年5月4日、第33回新型コロナウイルス感染症対策本部(総理大臣官邸)で発言する安倍総理 中央は加藤勝信厚生労働大臣 左は政府専門家会議・尾身茂副座長 〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/04kaiken.html)

「感染症」「経済」「教育」 3つの専門家の綱引き

森田)ヨーロッパの一部も制限を緩和していこうという動きですが、ヨーロッパも段階的に緩和しているようで、スペインではまず自宅周辺で子どもたちが遊ぶことを認めていく。それからお店も事前注文や予約に限ってサービスを提供する。スペインなども4段階に分けて緩和を進めていくということですから、日本もこういった動きを見ながら。ヨーロッパは日本よりももっと厳しい外出規制になっているわけですからね。

佐藤)それと同時にヨーロッパは、その国の財源によりますが、法によって規制しているわけですから補償と表裏の関係にあるわけで、一定の補償が出てくるわけですよね。日本の場合は自粛ということですから、補償というよりも見舞い金みたいな性質になってくるわけですよね。この辺の組み立てが異なってくるのです。

森田)5日は全国知事会の会長の徳島県飯泉知事が西村経済再生担当大臣とテレビ電話で会談しまして、宣言解除の基準や収束に向けた出口戦略を明示して欲しいということを提言しているようですね。西村大臣は制限の解除を専門家会議が開かれる5月14日、21日をめどに判断する姿勢を示したということで、ここがこれから日本国内でも注目されていくポイントですね。

佐藤)いま水面下で感染症対策の専門家と経済の専門家と教育の専門家が主要なプレイヤーですよね。そのなかでどこで線を引くかということで綱の引き合いをしているのです。それで14日時点での均衡点を発表するということです。均衡点ですからその3つのプレイヤーの誰もが満足できない結果になるのです。

森田)満足はできない。

佐藤)その責任は安倍総理が全部引き受けるということになりますね。全体の調整を経て得たものは誰かの意見を100%聞くことはできないですから。

森田)それは安倍総理の判断になるということなのですね。

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