「『出口戦略は立てられない』と率直に言うべき」佐藤優氏、政府の姿勢へ提言

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(5月5日放送)に作家・元外務省主任分析官の佐藤優が出演。緊急事態宣言の延長と今後の解除について解説した。

2020年5月4日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/04kaiken.html)

緊急事態宣言、5月31日までの延長決定

政府は4日、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言をすべての都道府県を対象としたまま5月31日までの延長を決定した。安倍総理大臣は会見で「5月14日をめどに専門家会議を開いて感染者の動向や医療体制を分析し、地域ごとの期限前の宣言解除を検討する考えを示した。

森田耕次解説委員)東京都は5日、新型コロナウイルスの新たな感染者が58人確認されたと明らかにした。3日連続で2桁の水準。これで東京都内の感染者は累計でおよそ4710人となった。佐藤さんはこの数に一喜一憂する必要はないとおっしゃっていました。検査数も連休で少ないということもあるかもしれません。

佐藤)ただ、減る傾向にあることは間違いないですから、そこは非常にいいですよね。

森田)政府は4日、緊急事態宣言をすべての都道府県を対象としたまま5月31日まで延長することを決定しました。安倍総理大臣は4日の夕方6時過ぎから記者会見を行い、5月14日をめどに改めて専門家会議を開いて感染者の動向や医療体制を分析して地域ごとの期限前の緊急事態宣言解除を検討するという考えも示しています。

 

安倍総理大臣)新たな感染者数を低い水準に抑えながら、これまでに感染した患者の皆さんの退院などを進めていく。そうすることで医療現場の逼迫した状況を改善するためには1ヵ月程度の期間が必要であると判断いたしました。

 

森田)安倍総理は全国一律の延長を決めた理由については「未だかなりの数の新規の感染者を認めていて、感染者の減少も十分なレベルとはいかない。引き続き医療提供体制が逼迫している地域も見られるので、当面いまの取り組みを継続する」ということです。現在は1日100人を超える人が感染から回復しているということで、新規の感染者がこれを下回る必要があるということで1ヵ月間は延長ということのようですね。

2020年5月4日、第33回新型コロナウイルス感染症対策本部(総理大臣官邸)で発言する安倍総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202005/04kaiken.html)

感染の抑制と経済とのバランスが重要

佐藤)確かにそういう判断をしているのだと思うのです。もう1つここのところの難しい判断は、感染を抑えるのだったら、できるだけ期間を延ばしてより厳しくやったらいいわけですよね。ただし、そうすると同時に経済が麻痺してしまう。経済が麻痺したら、人が死んでいくのですよ。両方の間でバランスを取らなければいけません。いまだって、リモートワークをしろといっても職種によっては、その会社の体力によってはリモートできない人がたくさんいるわけですよね。首都圏で通勤者の数が思ったより減らないのは協力したくないわけではなくて、協力したくてもできないという環境があるわけです。その全体のバランスを取るのも政府として非常に難しい舵取りになってくると思います。

森田)4日の記者会見でも13の特定警戒都道府県についてはこれまで通り人と人との接触を8割減らすように求めているのですが、それ以外の34の県については外出の自粛や施設の使用制限を一部緩和していこうと。社会経済活動を部分的に容認して、公園や図書館の再開を可能にするということなのですが、この地域の差も県知事の判断になってくるでしょうが、非常に難しいですね。

佐藤)同じ県のなか、東京都のなかでも場所によって状況が違いますからね。そういう風になるとどうやって判断していくかという基準。これは地方自治体に「判断しろ」と言われても、「客観的にどう判断すればいいのか」と国に投げ返されますよね。そうなると、なかなか大胆な判断はできないということになってきます。

感染抑制地域は自粛緩和へ  新型コロナウイルス感染症対策本部の会合後、記者会見する西村経済再生相=2020年5月4日夜、東京都千代田区 写真提供:共同通信社

出口戦略は見通し立たずか〜緩和への判断は難しい時期

森田)いわゆる出口戦略ということについて4日に西村経済再生担当大臣は直近の2、3週間の新規感染者の数や医療提供体制、近隣の都道府県の感染状況などに着目して一定の条件を満たすのであれば部分的に宣言の対象から外すというような、いまひとつはっきりしないような言い方ではあるのですよね。

佐藤)これは率直に言うと、「いまの段階では出口戦略は立てられません」ということですよね。そういう風に言うとハレーションが大きいから、持って回った言い方をしていると。そこはむしろ率直に言ってしまっていいと思うのですよ。「いまは出口戦略は立てられないです」と。「とにかく協力してくださいという段階なのだ」と言った方がいいと思うのですよね。

森田)よく言われる実行再生産数、感染者1人から何人にうつるのか。これが1を切ると感染の縮小に向かうということでいま日本国内は1を切っているのですが、この辺の数字を目標にするということも明確には言っていないのですよね。

佐藤)これはまさに高校の数学の話で、「拡散していくか収束していくか」という話なのですが、収束していても、それが1ヵ月かかるのか1年かかるのかということでは全然違いますからね。そこの収束がなかなか思うように進んでいないのだと。しかし、思うように進まないにしても、1人1人に事情があるわけです。通勤せざるを得ない、会社へ行かざるを得ないという事情がありますから、そういった要件のなかで折り合いをつけなければいけない。政府としてはどういう判断をしても国民から批判されるという難しい局面にきているわけですね。

森田)5月14日に改めて専門家会議を開くということですが、5月14日時点ですとゴールデンウィーク全体の数字はまだ出てきていないわけで、一部の地域の宣言を解除できるかどうかという判断もあいまいになりそうですね。

佐藤)そして、宣言を解除すれば人がそこへ移動してくる可能性もあります。非常に難しいところだと思います。

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