新型コロナ医療従事者へ慰労金支給〜日本の医療関連支出は米の5分の1

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月25日放送)に第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣が出演。厚労省による医療従事者への慰労功労金支給について解説した。

「医療従事者の皆様ありがとう」と感謝を伝える広告=2020年4月29日午前、神奈川県横浜市西区 写真提供:産経新聞社

厚労省、医療従事者に最大20万円の慰労金支給へ

新型コロナウイルスの感染拡大で厚生労働省は、患者を受け入れた医師や看護師らに、1人あたり20万円の慰労金を支給する方向で調整を進めている。治療にあたる医療従事者や高齢の入所者の感染を防ぐ介護施設などの職員は、リスクと向き合いながら働いているため、与野党双方から手当の支給を求める意見が出ている。

飯田)患者を受け入れた医療機関には、引き続き体制を維持してもらうという狙いもあるそうなのですが、これも含めて、補正予算に乗せるというところです。医療機関の方々には何らかのことが必要だと、感情的には思いますよね。

令和2年度補正予算案が全会一致で可決した参院予算委員会=2020年4月30日午後、国会・参院第1委員会室 写真提供:産経新聞社

第1次補正予算案での日本の医療関連の支出はアメリカの5分の1〜追加して当然

永濱)そうですね。更にマクロ的な視点から見ても、既に出されている政府の1次補正予算案を見ても、医療関連の支出が非常に少ないのです。GDPで0.3%くらいなのですが、アメリカの同じ緊急経済対策の中身を見ると、GDPの1.5%、日本の5倍です。もともと少なかったので、やって当然かなと思います。これに加えて2次補正も入って来ると思うのですが、ワクチンや特効薬の開発などにもお金が積まれると思います。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

8割が民営の日本では強制的にコロナ患者を受け入れさせることができない

永濱)さらにもう1つミクロ的な視点で考えると、これまで、日本の医療現場は逼迫(ひっぱく)していると言われていたではないですか。一方で、日本の病床数の少なさは世界一だと言われています。ドイツだと病院の8割は公営で、ある程度、国の指示によって、コロナ患者を受け入れることができている体制に対し、日本は8割が民営なので、コロナ患者を強制的に受け入れさせることができない。このシステムは変わらないものの、コロナ関連の医療に従事した人に恩恵が行くような仕組みは必要でしょう。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

コロナを機に政策の転換が必要〜医療財政の拡充へ

飯田)医療関係者の人に聞くと、コロナウイルス対応だと、人も専門の人を使わないといけないし、防護もしないといけない。ベッドが空いているから受け入れるというわけには行かないということです。その上、いままではベッドを減らせと厚労省も財務省も言って来たではないかと、憤っている方もいらっしゃいましたが、いままでの政策が、ポストコロナで転換するということは必要なのですか?

永濱)確実に必要だと思います。同じような構図がヨーロッパでも起きています。EUを見てもドイツやオランダ中心の、いわゆる北側が緊縮財政を強いたことにより、南側の国が財政的に絞められて、病床数も減らされたなかで、こういうコロナの問題が起き、正に南北対立が強まっているわけです。ただ日本は国が分かれているわけではないので、これをきっかけに緊縮一辺倒ではなく、ある程度は財政を拡充して行く方向に転換して欲しいと思います。

【新型肺炎】羽田空港から出る救急車=2020年1月29日午前、東京・羽田空港 写真提供:産経新聞社

医療費の削減と働く人の定年延長〜棚上げして国難を乗り切ることを優先するべき

飯田)コロナが起こる前は、正に医療介護について社会保障制度改革国民会議ができ上がって、医療費の削減と働く人の定年延長をパッケージでやろうというような話が出て来たではないですか。スケジュールを考えると、今年(2020年)骨太に乗り、来年度予算からというようなことが言われていましたけれど、このスケジュール感だとわからないですよね。

永濱)実際、厳しいのではないでしょうか。そんなことを言っている場合ではなくなっています。私は社会保障の改革のところも棚上げして、まず、この国難を乗り切ることを最優先してもらいたいと思います。

飯田)医療費を出すべきだと言うと、すぐに「財源がない」という話になりますけれども、財源論ばかりに終始して、必要なものが足りなくなってしまうのは本末転倒ですよね。

永濱)そもそも財源論というのは、国内のお金が限られているという考え方で言っているわけですけれども、そこの部分は、政府で考えれば、日本銀行がお金を創出できるわけですから、そういうところまで含めて、今年は柔軟に対応すべきなのではないかと思います。

日本銀行-Wikipediaより

日銀のするべき経済対策はまだまだある

飯田)そこで22日に日銀は臨時の会合を開き、中小企業への資金繰りなども含めてかなり大規模な、全体で75兆円くらいのパッケージを出したということも報じられましたが、この中身はどうご覧になりますか?

永濱)もともと前回の会合のときに、ある程度の大枠が出ていましたので、大きなサプライズはありませんでしたが、中身を見ると、それなりの効果があるのではないでしょうか。融資が政府の信用保証付きなので、民間金融機関も貸しやすくなるでしょうし、更に言うと、日銀による0.1%の利子補給が入っていますので、これが大きいのではないかと思います。ただ、アメリカのFRBと比較すると、まだまだやれることはあるのではないかと個人的には考えています。FRBの動きを見ると、今回の日銀の対策というのは、あくまでも政府の財政政策の後方支援的な位置づけだと思うのです。しかしFRBは中銀が主導して、政府から出資金を出してもらってはいるのですが、それをベースにかなりレバレッジをかけてジャンク債を買ったり、社債を買ったりとリスクマネーを供給しています。それに対して、日銀の政策というのは、どちらかというと金融機関の支援という側面が強いのかなというところから考えると、もう少しやれるのではないかと思います。更に言うと、先ほど財政の話がありましたけれど、欧米中銀のトップは財務省に対して「もっと財政を出してくれ」ということを言うのですが、残念ながら日銀は…。

飯田)一部の衆議院の方だけ。

永濱)財務省出身だからかも知れませんが、なかなかそういう発言が出て来ないので、そこはどうなのかなというところもあります。例えば具体的に言うと、民間の銀行が貸し出した債権を、日銀が購入するくらいのことはやれるのではないかと思います。逆に言うと、まだやる余地はあるのだということです。

飯田)そうすると、銀行が貸すにしても、リスクを取らずに貸すことができる。当座は資金を融通しなければならないというところで、そういうことをやるくらいの気持ちを見せると、市場は反応するわけですね。

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