木村花さんを追い詰めた誹謗中傷〜ネット上の発信者情報開示についての議論が必要

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月26日放送)にジャーナリストの有本香が出演。女子プロレスラーの木村花さんがネットで誹謗中傷を受けて亡くなった事件について、メディアの報道姿勢なども絡めて解説した。

東京都内で記者会見に出る木村花さん=2019年10月17日(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

ネット上の誹謗中傷

23日に死亡したプロレスラーの女性がインターネット上で誹謗中傷を受けていたと指摘される問題を受け、与野党の国会対策委員長は今後の対応をめぐって協議する考えで一致した。

飯田)菅官房長官も総務省が4月に設置した研究会で、発信者情報の開示のあり方について、誹謗中傷した人の情報をどう開示させるかということについて議論を始めているとした上で、「適切な対応を図って行く」と述べています。木村花さんの『テラスハウス』というフジテレビの番組発というところも言われています。非常に痛ましい事件でした。

木村花さん=2020年3月8日、東京都文京区(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

ネットにおける発信者情報開示についての議論が必要

有本)木村花さんの件を、私たちは詳細に知り得ることはできないですから、一般論的にお話ししたいと思います。ネット上の誹謗中傷ということについては、私もそれほど深刻ではないけれど、もちろんあります。ただ、私たちの仕事はある意味、仕方ないところもあるわけです。どうしても政治的なことを扱う、さらにこちらもエッジを立てたことを言えば、それなりの対応があることは、ある程度承知しています。そして、こういう若い方と違って年も年ですから、図太くはなっているというところもあります。それにしても、明らかに嫌がらせをしようという意図、「中傷」という言葉で表される事実でないこと。ネット上に事実でないことを書き込まれて、著しく名誉を傷つけられたり、非常に貶められること。あるいは木村さんが受けていたとされるような罵倒ですよね。面と向かっては絶対に言えないようなことを、ネットだと気軽に書き込んでしまう人たちがいるということなのですが、このような事態があったときに、私も感じているのは、発信者情報を開示して欲しいとSNSの会社に頼むのですが、これはかなりハードルが高いのと、めちゃくちゃに時間がかかるのです。ものごとが終わって散々経ってからでないと、実は開示されないのです。そういう意味でも、このあり方について、まずはその部分について、ピンポイントで議論を進めてもらえばいいと思います。全体を何らかの形で規制しようというのは、またハードルが高いと思います。ですから、情報開示のあり方に関してというところに的を絞って、それをやることは必要だと思います。匿名性はネットのいいところでもあると思います。いろいろな内部の情報が出て来たり、思い切ったことを言えるというのは決して悪いことではないと思うのですが、一方では面と向かって人には言えないような、言ってはいけないようなことを言ってしまう世界があるのです。これをできるだけ止める方向はあってもいいのではないかと思います。

飯田)運営会社に対して、通報のスキームがあると言いますけれど、明らかに差別的な発言や誹謗中傷を通報しても、「我々の規定には反していませんでした」というような文が返って来ます。

有本)その会社の基準ですからね。そして、ある部分にだけ非常に厳しかったりもするわけですよ。

飯田)その基準が不透明ですよね。

有本)民間企業が勝手に決めていることだし、さじ加減も難しいと思います。情報開示の請求があったときに、どのような体制で答えるかというところだけ、ルール化してもらうということがあってもいいと思うのです。

飯田)受けた方は、どんなものがあったのかを記録に残したりしながら、手間をかけて情報開示請求まで持って行くということになるわけですものね。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

マスメディアも報道に注意すべき

有本)ネット上の誹謗中傷というニュースキーワードですけれども、ネット上を除いた誹謗中傷ということを考えるときに、私たちも気をつけなければいけないのは、マスメディアを通じて発信する場合にも、ターゲットをつくってしまう危険性があるのです。我々も政治家や行政のあり方について批判をします。行政や政治家について批判をするのはいいけれど、この人を吊し上げてもいいのだという形に持って行ってしまうのはよくありません。多くの場合、公人であれば尚更、反撃できないというところがあります。それをいいことに、「この人のことだったら何を言ってもいいのだ」と袋叩きにするのはよくないですね。批判は鋭くするべきだけれど、それを踏み越えてしまっているメディアの姿勢はどうなのだということも、同時に反省しなければいけないことと、最後に敢えて木村さんのことを言うならば、木村さんが出演していたリアリティーショーというものは、実はリアルではないですよね。

飯田)演出が入っているとされています。

有本)この人がヒールだったのでしょうか?

飯田)女子プロレスラーでの役割はヒールだし、それを延長した形でこの番組でもやっていました。かなり激しい言葉を使ったのも、そういうことがあってのことだと思います。

有本)そういうものを真に受けてしまう人もいらっしゃるのです。メディアも表現を規制しろということではないのですが、これが与える影響はどうなのかということを考えて番組づくりをする必要があると思います。

飯田)20年前の映画『トゥルーマン・ショー』でも、警鐘を鳴らされている問題ですよね。

有本)アメリカでも、この問題は議論が盛んだったところですし、日本の場合も気を付けなければいけないのは、個人の人格攻撃です。これは避けなければいけません。

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