河井夫妻逮捕〜東京地検が動いた2つの理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月19日放送)に元東京地検特捜部副部長であり、弁護士の若狭勝が電話出演。河井前法相夫妻が買収容疑で逮捕されたニュースについて解説した。

政治 河井議員夫妻を立件へ 衆院本会議を終え、議場を後にする河井克行前法相=2020年6月17日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

河井夫妻が逮捕〜極めて悪質な事件

2019年夏の参議院議員選挙で地元県議らに現金を渡し、票の取りまとめを依頼したなどとして、東京地検特捜部は18日、公職選挙法違反(買収)容疑で、自由民主党を離党した衆議院議員で前法務大臣の河井克行容疑者と、妻で参議院議員の案里容疑者を逮捕。衆議院第二議員会館と参議院議員会館内の2人の事務所などを家宅捜索した。

飯田)94人の県議、市議、地元首長らに2570万円を提供した疑いがあるということです。この河井夫妻の逮捕、そして起訴の可能性、量刑などにつきまして、東京地検特捜部副部長でいらっしゃいました、若狭勝弁護士に話を伺います。

若狭)今回、逮捕事実が本当であれば、極めて悪質極まりない事件です。逮捕され、証拠があれば、起訴されるのは当然だと思います。投票買収、票をお金で買うというのは、公職選挙法のなかでも極めて悪質なことです。民主主義を蔑ろにする恐れがある。民主主義というのは選挙で選ばれる、選挙の公正ということがいちばん大事ですが、それをお金で買うようなことが横行すれば、正しい選挙ができなくなり、民主主義が危機に陥ることになります。さらに今回は、極めて多額であり、人数が多過ぎるのと、夫婦共々でやっていたということ。さらに、この事件を起こした後に法務大臣になっています。犯罪を取り締る所管の責任大臣であった。このような特別な状況が付加されています。

飯田)そこまでの悪質なものだと、量刑はきついものになりますか?

参院選、違法報酬疑いで広島地検が事務所捜索を受け報道陣の取材に応じる河井案里氏=2020年1月15日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

克行容疑者は実刑の可能性が〜受け取った議員については司法取引で処罰なしということも

若狭)克行容疑者に関しては、この事実が認められれば、判決に執行猶予はつかず、実刑となると思います。案里容疑者のほうは、克行容疑者に従属しているという意味においては、執行猶予がつく可能性もあると思います。

飯田)一方で、合わせて94人の方々にお金が渡った。渡した方というのは今回逮捕されていますが、もらった方が何か罪に問われるということはないのですか?

若狭)もらった方も犯罪になるのが公職選挙法です。ただ、今回はかなりの人数になりますので、議員の人たちは公民権停止となり、選挙にも出られなくなってしまいます。そうなると、地元の政治が混乱してしまう恐れがある。その意味では、検察が今回に限り、事実上の司法取引を行って、処罰はしない、あるいは罰金程度に抑えて軽くする可能性はあります。

飯田)それは現場の検察サイドの裁量でできるということですか?

若狭)そうです。司法取引というのは最近、法律で制度化されたのですが、公職選挙法違反は法律で制度化された司法取引の対象にはなっていないのです。ですから、正規の形での司法取引は難しいですが、事実上、検察が持っている「起訴するかどうか」という裁量権に基づいて、「今回は起訴しない、処罰しない」という選択をする可能性はあると思います。

東京高検の黒川弘務検事長=2020年5月22日 写真提供:共同通信社

東京地検が動いた理由〜黒川前検事長がいなくなった

飯田)それから、今回、東京地検も動いてという形になりました。もともと、広島の地検がやっていたと報道されていたのですが、今回、東京で逮捕にまで至るというのは、検察は相当、気合を入れて取り組んでいるということなのですか?

若狭)そうです。相当な力を入れているのは間違いないと思います。本来は広島の事件なので、広島地検で逮捕するのが通常なのですが、今後、河井夫妻が裁判において徹底抗戦をする可能性がある。そうした場合に、裁判で検察が特別なシフトを組む必要がある。そうなると、検事の数の多い東京でやるのがいちばん望ましいということになります。また、東京だと東京地検、東京高等検察庁、最高検察庁という組織が1つの建物に入っているので、情報がリアルタイムで共有でき、いろいろな指示や指揮がしやすいということで、東京に持って来たのだと思います。

飯田)その東京高検ですが、前の検事長が黒川さんで、物議がありましたけれども、この影響はあると思いますか?

若狭)1つは、先ほど申し上げた、東京地検に持って来たということが影響としてあると思います。仮に、黒川前検事長が現時点においても検事長のままであったとしたら、東京に持って来ることは難しかったのではないかと思います。黒川さんは政治的に近いと言われていたところがありまして、黒川さんのお膝元の東京に持って来ると、「手心を加えるのではないか」と国民が心配、不安に至る。そうすると、検察もおいそれと東京には持って来ることができないと思うのですが、検事長が変わったために、そのような危惧がなくなり、東京に持って来ることができたということでしょう。それからもう1つの側面として、黒川さんの掛け麻雀などで、検察の信頼が国民から失われたということがあると思うのですが、今回の事件をやり遂げることで、国民の信頼を回復したいという意気込み、思いがあったのではないかと思います。

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