中国政府が米総領事館の報復閉鎖に成都を選んだのはなぜか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月27日放送)に中央大学法科大学院教授の野村修也が出演。米政府がヒューストンの中国総領事館の閉鎖を命じたことに対抗して、中国政府が成都にある米総領事館の閉鎖を命じた報道から、現在の国際社会における中国の存在について解説した。

中国政府、成都の米総領事館に閉鎖命令=2020年7月26日 写真提供:時事通信

中国が四川省成都のアメリカ総領事館を閉鎖

アメリカ政府がテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命じたことに対抗し、中国政府は四川省成都にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命じた。中国共産党の一党支配体制を批判したアメリカのポンペオ国務長官の演説に対して、習近平国家主席は「新たな冷戦を焚きつけた」と拒絶している。

飯田)領事館の閉鎖合戦のようなことになって来ましたね。

野村)領事館はウィーン条約に基づいて、それぞれの国の合意によって置かれていますから、基本的には拒絶されたら出て行かなくてはいけません。中国の総領事館がアメリカの知的財産を盗む拠点になっているのではないかということで、アメリカがヒューストンの総領事館の閉鎖を命じたということが出発点です。それに対する対抗措置として、今度は中国が四川省成都にあるアメリカの総領事館を閉じるように求めたという状況です。

習近平国家主席=2020年6月22日 写真提供:時事通信

米領事館の閉鎖になぜ成都が選ばれたのか

飯田)アメリカがヒューストンの中国総領事館を閉めた。その報復として、中国国内のどこのアメリカ総領事館を閉めるのかということで、香港や上海も挙がったのですが、成都になりました。

野村)領事館はいろいろなところにあります。そのなかから、なぜ成都が選ばれたのかは注目点だと思います。成都という場所は、ご存知の方も多いでしょうが、チベット自治区が近くにありまして、チベット自治区の入り口などと言われることもあり、そこから観光ツアーもたくさん出ています。また、チベット人の居住区も成都のなかにあるので、どうもアメリカはここを使って、中国によるチベットへの弾圧を調査していたのではないかという見立てもあります。逆に言うと、成都を選んで閉じさせたということは、そこに中国の若干のウィークポイントが見えているという面もあります。他のところでもよかったわけですから、なぜここなのかということは、これから分析されるのだと思います。

飯田)そのご指摘で言えば、中国は普遍的な人権という部分が泣き所なのではないかということが、最近のイギリスやアメリカの動きを見ていると顕著に出ています。

香港のホテルに開設された中国の治安機関「国家安全維持公署」の看板(中国・香港)=2020年7月8日 写真提供:時事通信

人権問題を突かれると中国は厳しい

野村)基本的に中国は多民族なのです。少数民族の方がたくさんおられるので、あの広い国土を管理するために、さまざまな人権問題を起こしている可能性があります。更には今回の香港問題でも、イギリスから返還を受けたときに約束していた一国二制度を守らないという状況が出ていて、それに対する国際的な批判も強くあります。経済面でも、国が株を持っている企業、国有企業が何でもできてしまうという状態になると、潰れませんし競争環境を歪めてしまうわけです。加えて言いますと、特別な法律で、企業の得た情報などをすべて国に報告させる。こういう私たちの自由主義社会のルールとは異なるものをたくさん抱えているので、そこが大きな問題点ということは言えます。なかでも人権問題は普遍的な課題ですから、そこを突かれると中国としては厳しいということが言えると思います。

飯田)もう既にアメリカやイギリスだけでなく、オーストラリアも中国が主張する南シナ海の領有権をめぐって拒絶するという書簡を、国連のグテレス事務総長に出したという話が出ています。「米中のどちらにつくか」という構図が鮮明になって来ている感じがします。

野村)ただ、南シナ海の一帯一路と言われている海洋進出の部分に関しては、明らかに無理筋です。勝手に人のところに基地をつくっているので、他から相当怒られるということはあると思います。話を戻しますと、やはりチベットの人権問題もあるけれども、その他にウイグル問題ももちろんあるわけです。それに対して国際的な世論がどんどん湧き上がって来るなかで、アメリカは成都の総領事館の閉鎖を受け入れることにより、「中国はこういう思惑を持っている」ということを見せている面もあります。中国にとっても、この選択が国際社会からどう見られているのかということを、気にしているのではないかなと思います。

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