香港を中国本土と同一に〜中国の狙いとそれによって受けるダメージ

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月3日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。香港警察が海外に逃れた民主活動家6名を指名手配したニュースについて解説した。

「中国式法治」香港に拡大 中国の習近平国家主席を映す北京市内の大型ビジョン=2020年5月(共同) 写真提供:共同通信社

香港警察、海外の民主活動家6人を指名手配

香港メディアは8月1日、海外に逃れた著名な民主活動家の羅冠聡氏や、香港のイギリス総領事館職員だった鄭文傑氏、アメリカ市民の朱牧民氏ら6人を、香港警察が「香港国家安全維持法」に違反した疑いで指名手配したと伝えた。

飯田)どのような行為が法律違反に当たったかということは、明らかにされていません。分裂だとか、外国勢力と結託してということが噂されていますけれども。

須田)犯罪人引き渡し条約がある国に逃れていても、6人は政治犯ですから、引き渡しをされることはありません。実効性はないのです。ではなぜこういうことをやっているかというと、香港、または中国国内向けの動きなのだろうと思います。「こういう人たちでも、区別なく摘発する」という強硬策の表れなのでしょう。

香港のホテルに開設された中国の治安機関「国家安全維持公署」の看板(中国・香港)=2020年7月8日 写真提供:時事通信

6人の民主活動家は「スパイのような存在である」という位置付けを明確にした

須田)いま中国を取り巻く環境が相当な厳しさを迎えているなかで、これをやることにどういう意味があるかというと、外国勢力との結託を阻止するためです。かねてから、アメリカ大使館の担当者とデモのリーダーが会っている映像や写真が撮られて、中国メディアに載ったという経緯もあります。では陰謀論的に、すべて香港で起こっている一連のデモや独立騒動は、アメリカのCIAなどに代表される勢力が仕掛けたのかというと、そうではないと思うのです。しかし、国内向けにはそうなのだと、すべて海外勢力と結託して動いているのだという説明に終始しています。それを裏付けるかのように、今回こういう動きが出て来た。国内に対して、そういう連中は愛国的ではない、スパイのような存在であるという位置付けを明確にしたということだと思います。

飯田)ある意味で一罰百戒というか、裏切ったら承知しないぞということですか?

須田)そうですね。裏切り者は許すなというような、逆に言えば、中国・香港民衆の方からそういう声が出て来ることを期待しているのだと思います。

人民大会堂で、政府活動報告を聴く中国の習近平国家主席(中国・北京)=2020年5月22日 写真提供:時事通信

香港を中国本土と同一に塗り替えるという意思の表れ

飯田)法を執行しなくても、相互監視をするのが彼らの理想なわけですね。

須田)もっと言えば、私刑という状況まで想定しているのではないかと思います。ただ、それをやると分断につながるし、黄之鋒氏などが率いている穏健派のグループも、強硬派の方に追いやってしまうというリスクがあります。そういうことも覚悟して、香港を中国本土と同一に塗り替えるという明確な意思の表れだと思います。

飯田)一方で、香港はアジアの金融センターの1つでもあります。その部分で一色に塗り替えるということになると、ビジネスが難しくなることも、既に海外企業はかなり危惧しているとも言われますが、それは仕方がないということですか?

須田)ここまでの中国経済の成長と守護の蓄積によって、一帯一路を含め、中国に融和的な国々だけでやって行けるのだという方向に向かいつつあるのかなと思います。

香港安全法、最高終身刑 1日、香港で行われた返還記念式典の会場周辺をデモ行進する民主派活動家ら(共同)=2020年7月1日 写真提供:共同通信社

ドルの使用禁止によるダメージよりも共産党一党独裁体制を守る方が優先される

飯田)いままで香港ドルは、アメリカドルと連動させるペッグ制によって、ほぼ同じような動きをして来た。それで資金が海外から流れ込んで来て、中国国内にも入って行くというような1つの枠組みがありました。最終的には「もうそんなものは要らない」となるのでしょうか?

須田)アメリカが本気になったら、ペッグどころかドルの使用による決済を認めないということになります。最近そういう動きが出て来ているようですが、アメリカの銀行に中国の要人の口座開設を認めない、既存の口座も閉鎖を要求する。つまり、そういうドルの流れを断ち切ろうとする動きが出て来れば、相当なダメージになるのだろうけれども、それよりも現体制、共産党の一党独裁体制を守るということが優先されるのだろうと思います。

飯田)そうすると、ドルは使わない決済ということで、人民元でいろいろな請求を決済するとか、人民元のデジタル化などが矢継ぎ早に出ているのも、これに呼応する動きですか?

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

国際通貨としての価値が人民元にはない〜中国から離れて行くヨーロッパ

須田)そうですね。ただ、それに対して、中国以外の国々がその価値をどの程度認めるのか、マーケット性がないのです。「こんなに価値がありますよ」と言ってみたところで、金によって裏付けられているわけでもないし、どの程度の価値があるのか。

飯田)確かに。それ以外にも、自由に取引ができて、皆が価値を認めるという形の為替相場ではないわけですものね。

須田)ある国が人民元を大量に保有していて、「これで決済します」と他の国に申し出たとしても、「それは困る。ドルにしてくれ」と言われたときは、何ら国際通貨として意味のないものになってしまいますからね。

飯田)中国と経済的に結びついている国々は、例えば先進国のなかでどれくらいあるのでしょうか? ドイツはいままで仲がよいと言われていましたけれども。

須田)その辺りがどんどん変わって行くのだと思います。潮目の変化になったのは7月14日、イギリスがファーウェイの取引を停止するとした動きです。なぜ停止したのか。これは別に、アメリカからプレッシャーを受けたわけではないのです。アメリカのスミス議員という方が2020年の初めにイギリスへ行って、イギリス議員に、保守党も野党も含めて「ファーウェイはウイグルの監視システムを全部請け負っている」と言ったのです。「そのような犯罪的な組織と手を結んでいいのですか?」と、人権問題で訴えているのです。

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