ベラルーシ大統領選結果〜EUは立場を示すも米からの圧力はなし

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月21日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の中山俊宏が出演。EUがベラルーシにおける選挙結果を認めないと表明したニュースについて解説した。

16日、ベラルーシの首都ミンスクで開かれた集会で演説するルカシェンコ大統領(タス=共同)=2020年8月16日 写真提供:共同通信社

EUはベラルーシの大統領選の結果を認めず

大統領選の不正疑惑に対する市民の抗議デモが続く旧ソ連のベラルーシ情勢をめぐって、EU(ヨーロッパ連合)は8月19日に首脳会議を開き、選挙結果を認めないと表明した。暴力でデモ鎮圧を図ったルカシェンコ政権を批判し、反政権派との対話を促した。

飯田)ベラルーシは、最後に残った独裁国家という言われ方もしていましたが、この国柄について、なかなかイメージがつかない人も多いと思います。

軍服を着用したルカシェンコ(アレクサンドル・ルカシェンコ-Wikipediaより)

ロシアに配慮しつつも、立場を明確にしたEU

中山)最後の独裁国家というのは、「ヨーロッパの」という言葉が付きます。独裁体制を築いて、今回も選挙結果をねじ曲げた。そのため、大規模な抗議デモで追い込まれているという状況があります。EUとしても、今回は暴力に発展したということもあり、自分の裏庭で独裁体制があることに一言言わなくてはいけないというところで、声明を発表して立場を明確にしました。しかし、他方で再選挙云々というところには踏み込んでいないのです。そこはロシアとの関係があって、ロシアは自分の勢力圏内と見ているところがありますから、そこに手を突っ込み過ぎてもいけないと。ベラルーシはNATOにも入っていないので、NATOが圧力をかけるとなると、ウクライナの再現のようなことになってもいけませんし、若干ロシアに配慮しつつも、EUとしての立場を明確にしたというのが現状ではないですかね。

飯田)そう考えると、一連の市民運動、カラー革命という言われ方もしましたが、その文脈でルカシェンコ政権を倒せばいいという話でもないのですか?

ホワイトハウスのローズガーデンで行われた、新型コロナウイルスに関する記者会見でのトランプ米大統領 2020年5月11日 ワシントン (Photo by Brendan Smialowski / AFP) AFP時事 写真提供:時事通信社

アメリカが民主主義のリーダーの役割を放棄しているなかで、ベラルーシ大統領への圧力はない

中山)そうすると結局、ロシアの介入を呼び込む可能性があります。そこがEUとしても気になっていたことだと思います。これまでは、よかれ悪しかれというところはありますが、アメリカが民主化の旗を振って、各地の運動をバックアップして来たところがありました。しかし、トランプ政権はそういうことに対する関心を失っているわけです。世界における民主主義の状態を評価する報告書を出している組織があるのですが、その組織が昨年(2019年)出した報告書の表紙が、プーチンさんや習近平さんなど、各国の独裁者が焚き火を囲んで「自由(Freedom)」という文字を燃やしているのです。トランプさんは一緒になって薪をくべてはいないのですが、反対側でマシュマロを焼いているというものでした。この組織はどちらかというと保守派の組織なのですが、レーガン氏などと近く、アメリカが民主主義のリーダーの役割を実質放棄している状況のなかでこういう事件が起きているので、ルカシェンコさんにしても、アメリカからの圧力を感じていない。ロシアがバックアップしてくれる。しかし、国内では10万人規模のデモが発生しているということで、いろいろな力学が錯綜している感じがあります。どのように落ち着いて行くのかはわかりませんが、ルカシェンコさん自身も、今回の抗議規模の大きさで辞任を示唆していますが、ただの時間稼ぎにも見えますし、不透明感が強いという感じですね。

飯田)自由を守ろうということに対して、少し後ろ向きなトランプ政権がある。それが仮にバイデンさんに変わるとどうなりますか?

中山)そんなに楽観的な話ではなくて、民主党というのは本来、国内を立て直そうというものです。また2000年代、9.11の後からずっと介入を繰り返しているので、「それはもういい」というのが、共和党にも民主党にも共通していると思います。ですから今後、我々は「退くアメリカ」というものを思い描いて行く必要があります。アジアに関しては中国がいるので留まりますが、全体としては「退くアメリカ」を頭に入れておかなくてはならないという感じはします。

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