東京 新たに182人感染……世田谷区“2万人PCR検査”は「人権感覚を失い始めている象徴」辛坊治郎が論ずる

東京都は8月24日、新たに新型コロナウイルスの感染者が182人報告されたと発表した。

こうしたなか、キャスターの辛坊治郎が8月24日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に生出演。東京・世田谷区の“2万人PCR検査”について、人権の視点から覚える違和感について論じた。

新型コロナウイルス感染拡大をうけ、千代田区が設置した「PCR検体採取 仮設診療所」。内覧会では仮設テントでつくられた診療室で検体採取を行うデモンストレーションが行われた=2020年4月22日午後、東京都千代田区

世界がまともな人権感覚を失い始めている

東京・世田谷区は、区内すべての介護施設職員や保育士など2万人以上を対象にして、症状の有無にかかわらず一斉にPCR検査を行う方針を固めた。

辛坊)このニュースは、新型コロナに関して社会全体がパニックになってしまっていることのシンボルだなという気がします。実は以前、Jリーグが全選手に対しPCR検査を行う、野球でも全選手に検査を行うと言ったときにも同じことを考えました。しかし、あえて言わなかった部分がありました。今回は、一般の介護職員や保育士の2万人以上を対象にし、全員に一斉にするという話です。

サンプル検査として、どのくらいウイルスが広がっているのかを知る目的ならば結果としては興味深いという気持ちもあります。そうした意味では、全面的なネガティブではありません。しかし、この病気が流行る前のまともな人権感覚においてはありえないことがあります。想像してほしいのですが、仮に、世田谷区が区内の全介護職員に対して「HIV検査を義務付けます」となったらどうなりますか。大変な人権侵害ですよね。今回も、この病気に関しては自治体によっては年齢を発表しないところもあります。感染症予防法の趣旨から、だれが病気かというのはプライバシーの範囲ですので「公表してはいけない」ということがあるからですが、それは違うだろうと私は何度も申し上げています。しかし、これがHIVの検査だとすると過去裁判になったことがあります。HIVに感染しているかどうかを理由に、介護職員に採用されなかったり、出勤停止にされたり、クビになるなどがありました。そして、HIVの感染者の方が訴えを起こしました。また、雇う条件としてHIVに感染しているかどうかの有無を調べる検査を義務付けることをしたときに人権侵害だとして騒ぎになったことが過去何回もあります。しかし、この新型コロナウイルスに関しては平気でそうしたことを行いますよね。「これは人権侵害ではないのか」という視点があると思います。中国で一斉に全員を無理やり検査して、封じ込めましたと宣言をしたあたりから、世界がまともな人権感覚を失い始めてしまっていると私は感じています。

従来の感染症の場合には「人権侵害なので絶対にできない」ということが、今回は「堂々とやれ」となる。いままで声高に人権を主張していたメディアも含めて「やるべきだ」と言っています。

京都・ドライブスルー方式PCR検査デモ PCR検査に用いる綿棒状の検査器具=2020年4月27日午後、京都市中京区 写真提供:産経新聞社

PCR検査は3割の感染者が陰性と出てしまう検査

辛坊)これまで何回も私は言っていますが、PCR検査は3割の感染者が陰性と出てしまう検査です。介護職員の方が検査をして、10人感染者がいたとしても3人は陰性として出てしまうのです。その3人の陰性の方が、自分は陰性だと思い振舞ってしまったら、大変なことになります。原則、自分がウイルスを持っているかもしれないということを前提にその仕事をするということでなければなりません。これはかえってPCR検査をして、本当はウイルスを持っている人に陰性という張り紙をすることになります。さらに強制的全員検査をするということで、当然のことながら陽性ということになってしまったら働かせないことになります。いまの社会全体がパニックを起こしている状況のなかでは、それは正当だとなんとなく思い込む人が多いです。しかし、少し冷静になって考えたときにこれがHIVであった場合、あり得るのかということです。あり得ないですよね。社会全体がこの病気に関して、もう少し冷静にならなければならないと私は思います。そうした意味で、非常にシンボリックなニュースだなという気がしています。

ただし、冒頭で申し上げたようにどのくらい感染が広がっているのかという単なるサンプル調査としては大規模なので意味のあるデータが出てくる可能性はあります。そうした観点では注目です。それでひとりひとりの感染しているのかしていないのかを判定して、そこから先に個人に対して何かをしようということになると、人権との兼ね合いというのはやはり考えなければならないだろうと思います。

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