ASEAN地域フォーラム〜議長声明から中国に対する「力の不行使」が消えた背景にあるもの

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月14日放送)に中央大学法科大学院教授の野村修也が出演。テレビ会議方式で行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム閣僚会議後の議長声明から、草案時にあった「力の不行使」が削られた背景について解説した。

オンライン形式で開かれたASEAN地域フォーラムの閣僚会議=2020年9月12日午前、外務省(代表撮影) 写真提供:共同通信社

ASEAN地域フォーラム閉幕

9月13日に出された東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム閣僚会議後の議長声明で、南シナ海情勢に関して、改めて懸念の文言が盛り込まれたが、草案段階にあった「力の不行使」を直接促す表現は削られた。

飯田)ASEAN地域フォーラムは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国にアメリカ、中国、日本なども加わった対話の枠組みで、今年(2020年)はベトナムが議長だったということです。

ASEAN各国との首脳会議で記念撮影に臨む安倍首相(左から5人目)=2019年11月4日、バンコク郊外(代表撮影・共同) 写真提供:共同通信社

米中の対立に加担したくないASEAN諸国〜中国の進出を防止する行動規範にも温度差

野村)この地域においては、中国が南シナ海の方に進出して来ています。「九段線」という牛の舌のような形の線を勝手に引いて、「ここは自分たちの領海だ」と主張しているわけですが、これは国際法上まったく認められていないので、その活動に対して国際的な批判があります。しかも、ASEANは同じ領海を共有している人たちですから、領海問題を抱えている国は、強く反発して中国と対峙しているのです。その1つの解決策として、ASEANと中国の間で行動規範をしっかりとつくり、中国が好き放題にすることを防止しようという動きがあって、2021年の規範設定を目指しているということです。ところが、ここへ来てアメリカが中国の行動に対して圧力をかけ始め、軍事行動も辞さないという状況になって来たので、ASEANは「一歩引いて米中の対立を少し収めてください」という形で、両方にあまり加担したくないという雰囲気になってしまったというのが現状です。

飯田)巻き込まれたくはないということですね。

ロシア、世界初の新型コロナワクチン承認 撮影地:ロシア モスクワ 撮影:2020年08月06日 AFP PHOTO / Russian Direct Investment Fund / Handout AFP=時事 写真提供:時事通信社

中国への貿易依存度が高いカンボジア、ミャンマー、ラオス〜新型コロナのワクチン問題も

野村)そうです。この背景には、本当に中国との領海問題を抱えている国と、そうではない国がASEANのなかにはあるということです。それを中国が切り崩しにかかっているのです。特に、領土問題を抱えていないのはカンボジアやミャンマー、ラオスといった国ですが、特にミャンマーやラオスは、貿易で言えば中国への依存度がどんどん高まっていて、すでに3割くらいになっています。そうすると、中国とはあまり争いたくないという国が出て来てしまっている。また、ワクチンの問題もあります。

飯田)新型コロナウイルスの。

野村)そうです。中国はワクチン開発で先行しようとしているわけですが、「もし世界のなかで自分たちが先行してワクチンをつくることができたら、ASEANの人たちには一生懸命提供します」と言われたら、心が動いてしまいます。

飯田)フィリピンなど、欲しくてたまらないという国はたくさんあります。

埋め立てが進むスビ礁(2015年5月)(南沙諸島海域における中華人民共和国の人工島建設-Wikipediaより)

国際的なルールに基づき、米中には冷静な対応を促すべき

野村)ただ、押さえておかなければいけないのが、中国が南下政策を行っているところには、まったく法的な根拠はないということです。そこは国際的なルールに基づいて行動してもらわないと、経済力やワクチンで切り崩しても、世界のなかの秩序は保てないので、冷静に行動すべきです。原理、原則に立ち返って考えることが大事だと思います。

飯田)外相は出席せず、代理である政府高官の出席でしたが、中国、アメリカが参加ということで、「どちらの陣営につくのだ」と踏み絵を踏まされているような感じがあります。

野村)戦争の火種になることは避けなければいけないと思いますので、両国に冷静な対応を促すべきだと思います。

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