菅内閣「デジタル化」は国家を変える最大の実験

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月18日放送)にジャーナリストで東海大学教授の末延吉正が出演。菅内閣の看板政策であるデジタル庁の創設について解説した。

自民党総裁選の決起集会で、集まった人たちに手を振る菅義偉官房長官=2020年9月14日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

デジタル庁、2022年4月までに創設する方針

平井デジタル改革大臣は9月17日の記者会見で、行政サービスのデジタル化を一元的に進める「デジタル庁」について、2022年4月までに創設する方針を表明した。政府は2021年の通常国会にデジタル庁の設置法案やIT基本法改正案などを提出したい考えで、菅内閣の看板政策の早期実現を目指す方針だ。

飯田)菅政権の誕生直後ということで、さまざまな角度から解説いただこうと思います。デジタル庁についてですが。

末延)菅内閣のいちばん大きな仕事になると思います。菅さんはサイバーセキュリティの本部長だったのですね。官房長官で。

飯田)なるほど。

末延)あれは野党があまり理解できずに反対して、成立が遅れました。日本のデジタルは世界に周回遅れです。デジタル化は縦割りの役所において、方式もシステムもすべて違うのですよ。

飯田)省庁によって。

令和2年度補正予算案が全会一致で可決した参院予算委員会=2020年4月30日午後、国会・参院第1委員会室 写真提供:産経新聞社

地方自治体まで一元化することへの2つの壁〜日本はオープンガバメントではない

末延)コロナのときにわかったことは、保険証などをファックスしていたでしょう。みんなびっくりしたと思うのですよ。予算が縦割りだから、どこへ発注するかということがバラバラなのです。そこに、ある種の利権があるわけです。だからデジタル化をして、地方自治体まで一元化するというのは、壮大な実験なのです。これができれば一気に日本のシステムは変わるのですが、壁が2つあって、1つはそもそも日本の政府はオープンガバメントになっていないということです。いろいろな問題が出たでしょう。データが消えたとか、統計がいい加減とか。この番組に出ている高橋洋一さんが言っていたように、そもそも予算だってどんぶり勘定だった。

飯田)確かにそうですね。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

デジタル化すると口座とつながり、すべてがオープンになる〜税金逃れができない

末延)みんなが考えているほど、オープンできっちりしていないのですよ。「阿吽の呼吸日本式」なのです。デジタル化をして一元化したら、すべてがオープンになるのです。例えばアメリカに住むと、日本人でもソーシャルセキュリティナンバーを取って、初めて銀行に口座ができるのです。そこで自分の小切手、チェックブックをつくる。クレジットカードを使っても、払うときにその内容を自分で確認してから小切手を切るわけです。そこでセキュリティがかかる。日本は自動で落ちますよね。だから詐欺が多いのです。もう1つ、なぜガラス張りになるかというと、口座とつながるわけですよ。

飯田)オンライン上で。

末延)ええ。日本はいま、マイナンバーの登録をさかんにさせようとしていますが、そうすると紐付きになり、「プライバシーがバレる」と嫌がってやらない人がいる。要するに、税金を払っていないようなグレーな人が、ものすごくいるわけです。これをやるということは、政府もオープンガバメントにしなくてはいけないし、同時に世のなかもガラス張りになる。税務署が調べる収入、こちらの方もオープンになるわけです。

飯田)サラリーマンは10割すべて把握されるけれど、自営業などはそうではない。

自民党総裁選の出陣式で壇上に上がる菅義偉官房長官=2020年9月8日午前、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

デジタル化するということは社会をガラス張りにするということ

末延)そうすると、政権与党の自営業の人たちは「そんなこと」と言うでしょう。そういう状況がずっとあって、よくも悪くも日本は阿吽の呼吸、グレーのバランス社会であり、デジタル化を一気にやるということは、社会が大きく変わる。菅さんは官房長官のときに、サイバーやデジタルの担当でもあったでしょう。実務をやって行くなかで、こういう縦割りの壁が政治を一気に変えるのです。だから皆さん、国家観を語らないなどと言っていますが、これは国家を変える最大の実験なのです。

飯田)ボウリングのセンターピンのようなものなのですね。これが倒れたら、全部が倒れて行くと。

末延)だから「デジタルは関係ない、興味がない」ではないのですよ。デジタル化するということは、社会をガラス張りにするということです。

飯田)デジタルはみんなやろうとしていたから、「少し便利になる」くらいだと思っていたら、そうではないのですね。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

コロナで定着した学校でのオンライン化〜授業内容がガラス張りに

末延)私は大学で教えていますが、コロナの前までは、教室で対面授業をやっていました。しかし、コロナ以降はオンライン授業になった。多いときは300人くらいを相手に、ネットの授業支援システムでアップします。つまり、それがすべて一人歩きをするのです。全国の大学の先生がそうだと思いますが、改めてデータなどを調べ直しています。少なくとも、私は改めて勉強しました。

飯田)いままで何となく理解したつもりでやっていたところを。

末延)教室で、「ここはみんなオフレコだよ」とか、「先生の取材では本当はこうだよ」と言っていたのですが、オンライン授業では、オフレコとオンレコを分けられません。

飯田)確かにそうですね。

末延)だから、ネットの授業で伝えたものは、すべてファクトなのです。これもデジタル化と同じで、ガラス張りへ向かった。学校では、今年(2020年)はそのステップの年だったと思うのです。

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