新たな局面を迎える“米中分断”〜改めて問われる「日本の立ち位置」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月18日放送)にジャーナリストで東海大学教授の末延吉正が出演。米中両国の投資が9年ぶりの低水準に陥ったというニュースについて解説した。

中国の習近平国家主席(左)とトランプ米大統領=2020年5月14日 写真提供:時事通信

アメリカと中国の2国間投資、上期は9年ぶりの低い水準

調査会社のロジウム・グループによると、米中関係の緊張が高まるなか、2020年上半期の両国の投資は、9年ぶりの低水準に陥った。アメリカ・トランプ政権は安全保障上のリスクを理由に、ファーウェイや短編動画投稿アプリ「TikTok」を傘下に収めるバイトダンスに対する圧力を強めている。このようなハイテク業界の分断に加えて、新型コロナウイルスの流行も影響したということである。

飯田)米中関係と、そのなかで日本はどうするのか、というところですよね。

習近平国家主席=2020年6月22日 写真提供:時事通信

米中分断〜アメリカと中国の間に挟まれる日本

末延)間違いなく米中デカップリングで、やはり分断ですよね。アメリカは本気です。ペンスさんの3年前のスピーチ、それからこの間のポンペオ国務長官が行った、ニクソン大統領図書館での演説がありました。全体主義、中国独裁者、習近平さんを許さないというものです。ニクソンさんの電撃訪中、キッシンジャーさん以来の中国への関与政策で、「関与すれば人権が認められて、オープンで公平な資本主義に近づいて行く、と言ったのは間違いだった」という。これは民主党政権・バイデンさんも含めて動いているアメリカの方向です。とすると、日本が苦しいのは、安全保障上はアメリカと同盟関係で組まなくてはいけない。しかし、経済界のかなりの部分で、中国とやって来たところがあるということです。ここに来てイギリスのジョンソン首相が、例の英連邦のインテリジェンス仲間、ファイブ・アイズについて言及しました。

飯田)情報共有のシステムですね。

末延)ファイブ・アイズへの日本参加について、ウェルカムと言っているでしょう。

飯田)言っていますよね。

末延)あれに入っていると、強いのですよ。

飯田)すごい情報がいっぱい手に入りますから。

末延)私は東海大学平和戦略国際研究所の所長という仕事をやっていますが、モスクワ大の情報安全保障研究所というところがカウンターパートです。向こうはロシアのサイバー基礎研究をやっているのです。そういう意味で言うと、日本はサイバーに関して、本当にボーッとしています。サイバーの世界は24時間、教科書もないような世界です。それをいま慌ててやっている状況です。

陸上自衛隊と米陸軍が実施したサイバー競技会で、問題に取り組む陸自隊員ら=2019年8月22日、防衛省 写真提供:時事通信社

アメリカと権威主義国家とのネットに対する哲学の違い

末延)アメリカがつくったインターネットの世界というのは、民生を豊かにするために開発したものなのです。ところが、権威主義の中国や北朝鮮やロシアだと、それは国家が権力を持つためのものです。国家の安全保障なのです。ここが、決定的に哲学が違うところです。東海大学がモスクワ大学と一緒に、サイバーセキュリティのシンポジウムをやったとき、日本政府がその提言を直接受け取ることはしません。私的な民間の研究所である、うちの大学の研究所で一旦受け取って、改めて研究所として提言しに行くのです。そのくらい気を使わなくてはいけないものです。菅新総理もアジア版NATOには反対で、中国の囲い込みはしないと言ったでしょう。

飯田)総裁選のなかで、そういうことを言っていました。

末延)そこに中国寄りの二階さんがいる。それを補う上でも、安倍さんの弟で台湾の蔡英文総統とも関係の深い、岸信夫さんを防衛大臣に起用しました。これは日米同盟の証でもあるし、中国に対する牽制でもあって、早速中国が反応しています。

飯田)中国外務省の報道官が、「台湾と公式に関係を深めることはないように」と言っていますね。

末延)コロナの問題でいちばん頑張った台湾に対し、それを入れなかった中国寄りと言われるWHO。そう考えると、台湾の存在感がコロナ禍で一気に増しました。日本では台湾カードはタブーとされ、メディアもあまり触らなかった。しかし、国際政治としての中国を考えるときに、台湾カードを触らないとわからなくなって来たのですよ。

談話を発表する台湾の蔡英文総統。中国からの選挙介入を防止する「反浸透法」に署名し公布したことを明らかにした=2020年1月15日 台北の総統府 写真提供:産経新聞社

変わって来た日米の安全保障のあり方〜重要なのは「西太平洋からアメリカを逃さないこと」

飯田)安全保障上も、それこそ与那国島から150キロくらいしか離れていないので、一蓮托生みたいなものですよね。

末延)例の南シナ海が、中国の湖になっていいのかと。沖縄も含めて、中国の台湾に対する攻勢はすごいです。日本のメディアもタブーをなくして行かないと、本当の情勢が読めなくなります。そういうなかで、年内にイージス・アショアの後処理、「敵基地攻撃能力」保有の是非を含めて、結論を出さなくてはならない。はっきりしていることは、日本も盾と矛の一部を、アメリカに任せずにやらなければならないということです。アメリカは「逃げるぞ」と言っているのです。戦後日本の安全保障の議論は、「アメリカに巻き込まれる論」ということで、野党の人は言って来た。しかし、いまはそんなことはなく、トランプさんは「逃げたい」と言っているのです。

飯田)「退きたい」と言っていますよね。中東からも、東南アジアからも。

末延)いて欲しいならお金を増やせ、ということでしょう。いまは巻き込まれるのではなく、「西太平洋からアメリカを逃さないこと」が重要なのですよ。

飯田)抱きつき論みたいなものですね。

安倍晋三首相(左)に花束を渡す菅義偉官房長官=2020年9月14日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社

安倍政権の残した大切な宿題

末延)そこで、リスクをシェアする盾と矛の関係になるのか、という安倍政権が残したものの決着を、年内に予算編成を含めてやる。これも大変な問題です。

飯田)そう考えると、安倍さんが最後に出した安全保障に関する総理談話は、きちんと読み込まなければいけないですね。

末延)非常に大切な宿題を残したということですね。

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