中国の国有企業グループが欧米の政治、軍事関係者240万人の情報を収集〜日本の政治家の情報も記載

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月30日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。アメリカのビリングスリー大統領特使が中国の軍拡競争を批判したというニュースについて解説した。

習主席、国連総会の一般討論演説=2020年9月11日 写真提供:時事通信

アメリカ大統領特使が中国の軍拡競争を批判

来日中のビリングスリーアメリカ大統領特使は9月29日、オンラインで日本メディアと会見し、大量の弾道ミサイルや巡航ミサイルを配備する中国に対し、「軍拡競争を繰り広げている」と批判した。

飯田)中国との間の角の突き合わせは、経済だけではなく、さまざまな面でというところですよね。

奥山)この状況は米中新冷戦です。アメリカの政府関係者が、中国に対してこれだけ警戒心を出しているということは、背景として、水面下のレベルで、いろいろやられていたという現実がわかって来たところがあります。特に、諜報関係で相当やられていたことが判明しています。それで政府関係者は、中国に対して厳しい認識になっているのです。

飯田)ヒューストンの中国総領事館の閉鎖も、まさにそうですよね。

奥山)いま戦いは政府関係者が主導となっていて、彼らは厳しい現実を目の当たりにしているのです。その例として、オーストラリアがあります。オーストラリアは小国なので、中国から強く当たられています。オーストラリアが中国に厳しく反抗しているのは、諜報関係のレベルでやられているからです。

2015年に撮影された旧在ヒューストン中華人民共和国総領事館(在ヒューストン中華人民共和国総領事館-Wikipediaより)

欧米の政治家、軍事関係者240万人分の人物情報を中国の国有企業グループが世界各国で収集していたことが判明

奥山)中国の企業が、世界各国の著名人の個人情報をかき集めていたということがありました。9月14日の読売新聞にも記事が出ていますが、欧米の政治家、軍事関係者ら約240万人分の人物情報を、中国の国有企業グループが世界各国で収集していたことがわかりました。SNSの書き込みも含めて、銀行の与信情報も非合法に入手したものがあります。こういう情報は共有されますから、中国が個人情報を集めていたとなると、政府関係者は警戒します。企業よりも政府がまずやらなければいけないということで、厳しく当たっています。

中国の習近平国家主席(左)とトランプ米大統領=2020年5月14日 写真提供:時事通信

日本の政治家や企業経営者の情報も記載〜犯罪者の情報もリスト化

奥山)その240万人の個人情報ですが、日本人リストもあると言われています。読売新聞が入手したらしいのです。安倍首相ら558人の政治家や企業経営者などが重要公人として記載されていて、これとは別に、逮捕された暴力団員ら358人もリスト化されているそうです。この日本人リストが気になるのですが、公表していません。このような諜報レベルのことが現実に起きています。アメリカの政府関係者が警戒して中国を批判するのは、当然のことでしょう。

飯田)このリストは趣味で集めるものではありません。これで弱いところを見つけて、そこから浸透しようとする証左ですよね。

奥山)興味を持つのは、逮捕された暴力団員など、犯罪者の情報を集めていることです。日本人の場合は358人ということですが、逮捕された人をどう使うのか。犯罪歴を持っている人は、北京側からすると使いやすいということになります。

飯田)オーストラリアの事例について、『目に見えぬ侵略 Silent invasion』という本を奥山さんは翻訳されました。そのなかには詳密に書いているのですか?

奥山)情報を集めている拠点がいくつかあると書かれていますが、アメリカでは、カンザス州に情報収集地点があります。アジアでは韓国のソウルにあり、企業が情報を集めているようです。

飯田)ソウルにあるのですか。

奥山)そして、情報収集の対象になっているのが、アメリカ海軍の幹部です。特に空母の艦長になる人を選んでやっているという話が出ています。

飯田)ピンポイントで弱いところをついていますね。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

自由主義国の政府関係者、諜報関係者は「中国に本気で対抗しなければならない」という認識になっている

奥山)こういう現実があると、各国政府は諜報関係を対処せざるを得ません。アメリカ大統領特使も言っていましたが、「中国は一線を越えたことをしている」という認識に各国が変わりました。認識が変わった人たちが厳しいことを言うのは自然な流れです。

飯田)表面で見えるのは、人権について批判されていますが、それだけでなく、根は深いのですね。

奥山)諜報関係の人は公表されない、こういうレベルの情報を知っていて、「我々は本気で対抗しなければいけない」という認識に変わっています。日本のメディアでは「中国の軍拡競争はかなり激しいことをやるな」ということですが、政府関係者、諜報関係の人は情報をすでに知っているので、「本気で対抗しなければいけない」と気持ちが切り替わっています。その背景には知識の蓄積があります。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

将来的には、情報保全、スパイ防止法的なものも考える必要がある

飯田)アメリカの同盟国、アメリカ、オーストラリア、日本、インドの外相が集まって会議をしますが、同盟を組むとなったときに、同じ情報セキュリティを同盟国にも求めますよね?

奥山)もちろん。

飯田)日本はその部分が危ないのではありませんか?

奥山)日本は情報保持の方の法整備が追いついていないので、「横で見させてくれ」という形になると思います。

飯田)完全になかに入るということではなく、オブザーバー的なものですね。

奥山)それでこちらも側面から情報を提供するので、情報をくださいという形で連携するような方策が出て来ると思います。

飯田)将来的には、情報保全、スパイ防止法的なものも考えなければいけませんね。

奥山)やらざるを得ないと思います。アメリカがそれだけ厳しい認識で来ていますので、日本もそれを迫られるでしょう。大きくは、日本もこれからアメリカと一緒に中国に対抗して行かなければいけないので、いまからアメリカが中国に突っ込んで行く状況を見据えて、ビジネスマンを含め、準備する必要があります。

飯田)リスクの見方を中国ビジネスは上げる必要がある。

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