東証のシステム障害で財務省が“ほくそ笑む”理由

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月5日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。政府が東京証券取引所のシステム障害への調査に乗り出すというニュースについて解説した。

売買を再開した東京証券取引所の株価ボード=2020年10月2日午前、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

東京証券取引所のシステム障害〜政府が調査へ

東京証券取引所は10月2日、システム障害が復旧し、株式などの売買を再開し、前日取引できなかった投資家の売買で平均を上回る商いとなった。内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は近く、システム障害について調査に乗り出す。

新行市佳アナウンサー)政府が目指す国際金融都市構想にも水を差しかねないと思うのですが、関連して、メールもいただいています。北区にお住まいの“ハルゾウ”さんからです。「デジタル庁創設など、デジタル化を政策のシンボルにしている政府にとって、東証のシステム障害は出鼻を挫かれた形になったので、本腰を入れて調査に乗り出したのかなと思いました」とあります。

【東証システム障害で終日売買停止で会見】会見冒頭に謝罪し、頭を下げる宮原幸一郎・東京証券取引所社長=2020年10月1日 写真提供:産経新聞社

国際金融都市構想に水を差す〜東証のシステム障害

須田)このメールのように、「政府が目指す国際金融都市構想に水を差しかねないと見られている」ということが注目されているところなのですが、「経済財政運営と改革の基本方針2020」というものがあります。これは次年度の予算編成をするにあたって、いちばん最初の大きな骨格を決める骨太の方針で、そのなかにも「国際金融都市」という文言が盛り込まれています。香港の混乱を受けて、将来的に香港が、国際金融センターとしての役割を終えるのではないかという見方をしていて、「東京を香港の代わりに」という方向へ持って行こうということです。その矢先にこのようなシステム障害がありました。終日売買が停止され、投資家への信頼性という点で、非常に大きなダメージになったのではないかということです。

新行)そうですね。

須田)今回のシステム障害に、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の調査が入るのですが、ハッキングされたということではなく、単純なシステム障害です。しかも、バックアップシステムを取っていたのだけれども、バックアップシステムにも切り替わらなかったという、本来、あってはならないようなことでした。しかも、このシステムというのは入れ替えたばかりです。それがこのような問題を起こしたということに、大きな問題があるのではないかと思います。

香港のホテルに開設された中国の治安機関「国家安全維持公署」の看板(中国・香港)=2020年7月8日 写真提供:時事通信

国際金融センター構想〜システム以上の問題となる日本の税制

須田)先ほどの国際金融センター構想に関して言うと、システムの問題ではなく、大きな問題があります。それは何かと言うと、税制です。国際金融センターを日本に誘致する、設置するということで考えると、香港並みの税制が求められます。現在の税制がそのまま適応されたのでは、何の魅力もないマーケットになってしまいます。減税、免税をするということで、単純に売買に伴う利益だけではなく、日本のマーケットで高給で働いている人の所得税も含めて、何らかの減税、免税措置を取らなければ、国際金融センターは育成できません。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

税制の議論の前にシステムの問題を解決しなくてはならない

須田)その一方で、マネーロンダリングリスクも出て来るので、そこに対する対処も考えなければならない。前者で言うと、財務省が反対するでしょう。税制が2本立てになり、しかも減収につながりかねないということで、財務省は強い抵抗を示すのではないかと思います。そこを剛腕と言われる菅総理が、力でねじ伏せるというところも期待されたのですが、今回、システム障害が起こってしまったために、「税制の議論をする前に、システムの問題を解決しなければ前へ進まないのではないですか」と言われたら、それを進めようと思っていた総理ですら、何も言えなくなってしまうのではないかと思います。今回の件では、財務省がほくそ笑んでいるのではないでしょうか。

マーケットセンター(東証Arrows内)(東京証券取引所-Wikipediaより)

なぜ、バックアップシステムに切り替わらなかったのか

新行)関連してメールもいただいています。モスクワで聴いてくださっている匿名の方です。「1日の東証システムの不具合の件で、私はとある航空会社に勤務しているのですが、やはり、危機管理は大切だなと感じました。東日本大震災以降、東京で何か起きた場合は大阪で運行できるようにしていたり、バックアップ回線などをいくつも持っておいたりして、万一のときでも飛んでいる飛行機に影響がないようにしています。こういう備えは、普段は何も機能はしません。もちろん、費用もそれだけかかるのですが、今回の東証の事例を見て、危機管理というのは重要だなと改めて思った次第です」といただきました。

須田)そうです。バックアップシステムというのは非常に重要でして、システム障害が起こるというのは仕方がない、それを、どうバックアップするのか。そのバックアップシステムのシステム構築というのが重要視されています。それは東証もやっていたのですが、そこに切り替わらなかった。そこが根本の問題だということです。

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