デジタル庁の立ち位置はどこに? 議論はこれから……

「報道部畑中デスクの独り言」(第212回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、菅政権下で始まった「デジタル庁」設置への動きについて—

2020年9月30日、訓示を行う菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202009/30kunji.html)

菅内閣が発足してからというもの、あらゆることが慌ただしく進んでいます。最たる案件がデジタル庁の設置。

9月16日の内閣発足から一週間後には、すべての閣僚が出席する「デジタル改革関係閣僚会議」(以下 デジタル会議)が開かれ、菅総理大臣は年末にデジタル庁の基本方針を取りまとめる考えを表明しました。

そして、9月30日には「デジタル改革関連法案準備室」が発足。デジタル庁のあり方、法改正に向けた議論が始まりました。

デジタル庁設置の狙いは、各省庁バラバラになっているシステムを一元化し、行政サービスをより使いやすくすることです。これは国民にとっても意義あることであり、進展が望まれることは論を俟ちません。

一方、もう1つの目的は縦割り組織の打破による行政改革、ここでデジタル庁の立ち位置というのが問題になって来ます。

「デジタル庁は強力な司令塔機能を有し、官民を問わず、能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする必要がある」

菅総理はデジタル会議でこのように発言し、デジタル庁が司令塔的な役割を果たすことに期待を示しました。

デジタル庁については各方面からさまざまな提言が出されている

ところで、「庁」と「省」にはどのような違いがあるのでしょうか。「省」は国家行政組織法3条では、「内閣の統轄の下に、行政事務をつかさどる機関として置かれる」と記されています。

一方、「庁」は内閣府設置法や国家行政組織法で、その多くが「外局」に位置付けられている組織です(内閣府設置法49条「内閣府にはその外局として、委員会及び庁を置くことができる」/国家行政組織法3条「委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるものとする」)。

省の外局として置かれる以上、多くの「庁」は「省」の下部組織という見方ができます。実際、防衛庁や環境庁が省庁再編で防衛省、環境省となったとき、「省に“昇格”」と言われました。

デジタル庁に、各省にまたがる関連部署を束ねるだけの権限があるのかどうか……さっそく経団連から緊急提言が出されました。

「国・地方を通じたデジタル政策を一元的に企画立案する内閣デジタル局(仮称)を内閣官房に設置するとともに、中央省庁システムおよび地方公共団体に提供するシステムの企画立案・開発等を一元的に行うデジタル庁(仮称)を内閣府に設置することが有効である」

つまり、デジタル庁は実行組織とし、その一段上に司令塔的な役割を担う組織を、内閣官房の内部部局につくる「二段構え」にすべきと主張しています。

経団連は2年前の2018年5月に同様の提言を発表していますが、そこには内閣官房、内閣府、総務省、経済産業省、文部科学省などに分散しているデジタル関係の部署を「情報経済社会省(デジタル省)」へ統合することが盛り込まれていました。今回の政権発足を受けて、改めて流れに沿った提言を出して来たということです。

ただ、前述の内部部局と外局は、ほぼ同等の扱いという指摘もあり、そう考えると、経団連の提言は「屋上屋を架す」ということにもなります。「デジタル省」であれば問題はなかったのでは?……関係者に問いかけると、苦笑いをしていました。

2020年9月30日、写真撮影に臨む菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202009/30kunji.html)

「イメージとしては国家安全保障局のようなもの。ポイントは強力な権限を持つこと。ひとつのアイデアであり、いまの政府の案ではダメだということではない」

経団連の久保田政一事務総長は記者会見でこのように述べ、政府に異議を唱えるものではないことを強調しました。

しかし後日、経団連の篠原弘道副会長(NTT会長)が平井大臣と面会し、提言の趣旨を説明したところ、平井大臣は「それも1つの提案だが、いま考えているのはデジタル局の権能もデジタル庁に持たせること。肥大化することがないように、小さくて最大の効果を発揮できるような組織に……」と回答。

篠原副会長は面会後、「権能をどうやってつくるのかは大臣が考えるのではないか」と述べ、両者の考えには隔たりがあるようです。

平井大臣は経団連の他、IT業界のメンバーとも面会を重ねています。そのなかの1人、日本IT団体連盟の川邊健太郎会長(Zホールディングス社長)は、デジタル庁のあり方について次のように述べました。

「デジタル庁はまさに司令塔となって、日本全体の行政のシステムとはこういう設計であるべきだということを、権限をもって言うべきだと思う。霞が関のなかに忽然とネット企業が現れるようなイメージを持っている」

その上で「各省庁が『これ、やっといて』というようにデジタル庁に投げられてしまう構造だと、縦割りでそれぞれが何の連携もしないという繰り返しになってしまう」とも語りました。

デジタル庁が「司令塔」なのか「実行組織」なのか、その位置づけは「基本中の基本」です。細かいことですが、ここを明確にしておかないと、海千山千の官僚によって、気がついたら「骨抜き」の組織になっていた……そんなことにもなりかねません。

一方、デジタル庁のトップには、平井大臣とは別の「長官」が必要になります。民間人の可能性が取り沙汰されていますが、このポストに誰が就くのか……また、職員の構成も気になります。

関係者によると、各省庁から50人、民間からは10人前後が参加すると言われていますが、これらもデジタル庁の帰趨に影響するでしょう。

デジタル庁の立ち位置、体制……抜け目のない緻密な議論が求められます。(了)

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