ナゴルノ・カラバフ〜紛争に至るまでの「複雑な理由」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月9日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ナゴルノ・カラバフ紛争について解説した。

アゼルバイジャンによるナゴルノ・カラバフへの攻撃に反対するエレバンの街頭デモ=2020年9月29日 写真提供:共同通信社

ナゴルノ・カラバフ紛争

ナゴルノ・カラバフとはアゼルバイジャン西部に位置する山岳地帯で、推定15万人の住人はアルメニア人で、アゼルバイジャンの支配を拒否しているが、国際的には、アゼルバイジャン領の自治州と位置づけられている。自治州をめぐる紛争は1994年に停戦合意したが、9月27日から紛争が再燃している。アゼルバイジャンの外務省は10月7日、バイラモフ外相が8日にジュネーブを訪れ、アルメニアとの係争地、ナゴルノ・カラバフ紛争の仲介にあたる欧州安保協力機構、ミンスク・グループ側と協議すると発表している。一方、アルメニアの外務省報道官は「片手で軍事作戦を続けながら、もう片手で交渉を行うことはできない」と述べ、ジュネーブでアゼルバイジャン側と外相会談を行う可能性を否定した。

新行市佳アナウンサー)1994年に停戦合意したということなのですが、再燃した理由は何なのでしょうか?

宮家)新行さん、これって1回読んだくらいではわからないでしょう?

新行)わからないです。

アルメニアの地図(アルメニア-Wikipediaより)提供:What here area team

ロシア、トルコ、イランなどの大国に囲まれている

宮家)地図がないと説明が難しいのですが、まずトルコを思い出していただいて、トルコの東にアルメニアがあって、その東側にアゼルバイジャンがあり、カスピ海があるのです。そして、その南の方はイランで、北はロシアです。最悪な場所でしょう。まず海がなくて陸の国境ばかりです。そして、トルコがいて、イランがいて、ロシアという強国がいるのです。また、アルメニアというのは、おそらく世界で最初にキリスト教を国教化した国です。そのようなキリスト教の国なのだけれど、隣国のトルコはイスラムだし、アゼルバイジャンもイランもイスラムです。そしてロシアが北に構えている。たまたまアゼルバイジャン側にアルメニア人がいてしまったのですね。

ナゴルノ・カラバフ紛争=2020年9月28日 写真提供:時事通信

ソ連時代に適当に決められた自治共和国の領土

宮家)なぜこういうことが起きるかというと、ソ連の時代は共和国のなかの自治区だったわけです。この種の共和国の領土というのは、クレムリンの偉い人が、細部にわたって調べて決めたわけではありません。国内で各共和国間の喧嘩にならないように決めたにすぎません。そうなると、理不尽なことがたくさんあったのです。例えば、数年前大問題になったクリミア。クリミアの帰属もフルシチョフが適当に決めてしまったわけです。同じようなことがここでも起きていて、アルメニア人は「自分たちはアゼルバイジャン人ではない。だから独立をするのだ」と思っている。自治州ではあったのだけれど、周辺のアゼルバイジャンとは宗教的な、民族的な対立があった。それが一度爆発し、1994年には1回手を打ったのだけれども、そんなことを言っても、実際には解決はしていない。ナゴルノ・カラバフ地域は現在、独立国家に等しいのですが、世界中でそれを承認している国はほとんどないから、現地の人々の不満も溜まる。これにおそらく周辺国の誰かがちょっかいを出したのでしょう。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

地理的にも難しい場所に位置するアルメニア

宮家)アルメニアは、トルコの隣で歴史的にはトルコと大喧嘩している。トルコが大虐殺をしたと言われているところだし、アゼルバイジャンはイスラムですからトルコは応援する。そしてイランもちょっかいを出し、ロシアも似たようなことをやっている。このような、地理的に、1つ間違えると、また小康状態にあった古い問題が再燃するという非常に難しいところです。日本のように海で囲まれていればもう少し簡単なのですけれども、海がなくて陸上国境なので、いまも火種が消えないということだと思います。

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