スーダンがイスラエルと国交正常化した背景にある「中国」と「アメリカ」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月26日放送)に慶應義塾大学教授・国際政治学者の神保謙が出演。スーダンがイスラエルと国交正常化したというニュースについて解説した。

ホワイトハウスで、スーダンとの関係正常化についてイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談するトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年10月23日 写真提供:時事通信

イスラエルとスーダンが国交正常化

長年対立して来たイスラエルとアラブ諸国の関係改善を仲介するトランプ大統領は、アラブ連盟に加盟するアフリカのスーダンがイスラエルとの国交正常化で合意したと発表し、大統領選挙を前に成果をアピールした。

飯田)トランプ政権の仲介でアラブ諸国がイスラエルと国交正常化で合意するのは、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンに続いて3ヵ国目ということです。アラブ連盟には入っていますが、地図を見るとスーダンはエジプトの南、紅海を挟んでアラビア半島の反対にある国です。このインパクトは大きいですか?

(左から)バーレーンのザイヤーニ外相、イスラエルのネタニヤフ首相、アメリカのトランプ大統領、アラブ首長国連邦のアブドラ外相(The White House from Washington, DCより)

UAE、バーレーンとは違う論理のスーダン

神保)UAEとバーレーンがイスラエルと国交正常化を果たしたということは衝撃的でした。当然、北アフリカを含めて、中東世界が広くアラブ世界ということではあるのですが、湾岸諸国にとってのイスラエルとの関係というのは、「イランとの関係をどう規定するか」というバランス外交のなかで、イスラエルの力を借りてでも、自らの安全保障と外交的な姿勢を確立するというところが、一致したということです。しかし、スーダンに関しては別の論理です。

飯田)少し、イランからは遠いです。

神保)そうです。スーダンの背景は、ちょうど去年(2019年)の4月に30年続いたバシル政権という政権から新しい政権に移行しました。産油国でしたから、2000年代くらいから、中国との接近を通じて経済を立て直そうとしたわけです。しかし、そのあとに内戦が始まります。南スーダンと分裂するのですが、石油権益の大部分を南スーダンに持って行かれます。すると、中国からすれば、スーダンの戦略的な価値が薄くなり、関係が弱くなって来ます。そうなると、スーダンとしては、何とかして西側諸国との関係を立て直そうと試み、アメリカもヨーロッパ諸国もそこに近づく機会があったということです。トランプ政権にしてみれば、その関係改善のテコとして、「イスラエルとの国交正常化を果たしてくれ」ということだったのだと思います。

13日、米ホワイトハウスの執務室で発言するトランプ大統領(ロイター=共同)=2020年8月13日 写真提供:共同通信社

中国との関係が薄くなり、西側諸国との関係を立て直したいスーダン〜制裁解除とのバーターとしてのイスラエルとの国交正常化

飯田)「国交正常化とは関係ない」と思ったけれども、アメリカが制裁を解除するというのもバーターだったわけですか?

神保)それは、明らかにそうだと思います。加えて、それを発表するなら、大統領選の前にやってくれということで、このタイミングになったと思います。

飯田)中東関係はUAEやバーレーンなどのニュースが立て続けに起こっていますが、これらは大統領選に影響が出て来ますか?

神保)トランプさんの支持層におけるユダヤ系の団体、それから白人富裕層というのは、「イスラエルにどれだけアメリカが支援をしたか」というところを評価基準にするので、目に見える形で、「アラブ諸国がイスラエルを認めた」ということを、歴史的な成果としているのだと思います。更に、ダメ押しとして、スーダンもそこに加わるということで、支援者に対してはいいアピールができたのではないかと思います。

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