「裏テーマ」はアメリカ〜上海協力機構首脳会議

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月5日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国の習近平国家主席が出席する上海協力機構(SCO)首脳会議について解説した。

「新華社」 魏鳳和氏、上海協力機構・独立国家共同体・集団安全保障条約機構の国防相合同会議に出席=2020(令和2)年9月4日 新華社/共同通信イメージズ

上海協力機構首脳会議

中国外務省は11月4日、習近平国家主席が10日にオンラインで開催される上海協力機構(SCO)の首脳会議に出席すると発表した。会議出席後、習近平国家主席は「重要な談話を発表する」とのことである。

飯田)中国とロシア、中央アジア4ヵ国の正式な加盟国があり、インドもオブザーバーで参加しています。

宮家)イラン、パキスタン、モンゴルもそうです。要するに、「世の中アメリカの大統領選挙だけではありません。私たちもいるのですよ」ということですよ。オンライン会議なので、いつでもできるわけで、これはある意味で自己主張なのでしょう。加盟国は中国とロシア、そして中央アジアの国々です。中央アジアの国々は、もともとソ連の一部だったわけです。だけど、経済的には、中国に引きずられているし、ある意味で、中露の対立になってはいけない、協力が必要だということで、妥協の産物として、こういうものをつくったのだろうと思います。

習近平氏、深セン経済特区40周年大会で重要演説=2020年10月14日 中国通信/時事通信

ロシアと中国の「米大統領選挙」のそれぞれの見方〜「裏テーマ」はアメリカ

宮家)彼らが何を考えているのか。米大統領選挙を見ながら、11月10日にやるので、結果が出ているか、出ていないかという時期ですが、対米観については各国で温度差があるのではないでしょうか。プーチンさんは、「トランプさんは与し易い」と思っています。どんな弱みを握っているのか知らないけれども、トランプさんになってからロシアもいろいろなことをやっていますが、トランプさんはほとんどロシアの悪口を言わない。FBIが「ロシアはアメリカの大統領選挙に介入している。4年前もいまもやっている」と言っても、黙っています。

飯田)そうですね。

宮家)中国は、トランプさんに喧嘩を売られて、酷い目に合っているのですが、「どちらがいいかな」と。トランプさんは「取引が得意だ」と言っているところもあり、取引がまとまれば黙るところもある。それに対して、バイデンさんの方が手強いのかなと思っている人もいるでしょう。という訳で、彼らが集まって何を話すか、興味深いとは思っています。

飯田)そうすると、裏テーマはアメリカということですか?

宮家)だからと言って、彼らが内密に議論をしているというわけではありません。彼ら自身もお互いを信用していませんからね。

飯田)なるほど。

ウラジミール・プーチン大統領=2020年9月19日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカが共通の問題の中国とロシア〜対抗勢力としてのポジションを宣伝する機会

宮家)中国とロシアがなぜ話をするかと言うと、アメリカが共通の問題だからです。ある意味では、弱者同盟の部分があるわけで、彼らが蜜月で何でも話せる同盟国だということではありません。4ヵ国の中央アジアの国々だって、カザフスタン、キルギス等々、みんな利益は必ずしも一致していないのではないでしょうか。習近平さんは重要な談話を発表するということですから。

飯田)これがいったい何なのか。

宮家)習近平さんがお話しになることは、全部重要なのです。重要ではない談話は発表しません。

飯田)それが中国ということですか。

宮家)そうだと思います。

飯田)習近平国家主席は、5中全会でも戦力を整備するというような、強気なことを言っていましたが、これは明らかにアメリカが念頭ですよね?

宮家)アメリカの大統領選挙の結果がどうなるにせよ、上海協力機構として結束、協力、そして、アメリカに対する対抗勢力としてのポジションを宣伝するという機会になるのではないかと思います。

11月1日、米大統領選が大詰めを迎え、フロリダ州で演説する共和党のトランプ大統領(左)とペンシルベニア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

バイデン大統領になれば、「地球温暖化」のキーとなる中国はやりやすい

飯田)メールやツイッターでもいただいていますが、アメリカと中国の関係が、トランプさんとバイデンさんでどう変わるのか。

宮家)変わるでしょうね。トランプさんの場合には、中国との関税の貿易戦争は第4弾まで行って、そうこうしているうちに、第1段階の合意ができましたよね。ところが、今はそれで打ち止めになっています。それは、「トランプさんが大統領選でどうなるか見極めてからでないと、次の譲歩はできない」と思っているからです。中国は固唾を飲んでこの大統領選挙の結果を待っています。

飯田)そうでしょうね。

宮家)バイデンさんになったら、むしろやりやすいと思っている部分もあるかも知れません。なぜかと言うと、トランプさんは、中国に対して取り付く島もないくらい突き放したところがあったでしょう。バイデンさんも中国に対して、少なくともオバマ政権ほど優しいことはできないと思います。しかし、民主党の人たちのいちばんの関心事の1つは地球温暖化です。トランプさんは「地球温暖化なんか関係ない」と国際会議は脱退してしまったのだけれども、バイデンさんになれば、おそらく戻って来ます。本当に地球温暖化について、彼らが望むような形で成果を出したいならば、中国の協力なしにはできないわけです。14億人も人口がいて、あれだけエネルギーを使っているのですから、中国が最大の問題の1つなのです。そうなると、バイデンさんも何らかの形で中国と妥協せざるを得なくなるかも知れない。そうすると、アメリカの同盟国などから見れば、いままでの同盟関係もあるけれども、アメリカが中国との関係である程度譲歩してでも、中国と温暖化の問題で合意をしたいと言い出したら、おいおい、「それでは昔と同じではないか」ということにもなりかねません。中国はそういうところを微妙に狙って来ると思います。ですから、バイデンさんになったら、米中でまったく違うゲームが行われる可能性はあると思います。逆に言うと、日本にとっては、一部の人々がトランプ政権は「中国に厳しいからいいぞ」などと言っていたけれども、バイデン政権はそんなに簡単ではないでしょう。スタイルだけではなく、「内容も変わる可能性がある」ということは、日本も念頭に置かなければいけないと思います。

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