保守系メディアも客観的に「バイデン優勢」を報道〜「アメリカ大統領選」ワシントン現地レポート

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月6日放送)に放送大学名誉教授で国際政治学者の高橋和夫が出演。開票が続いているアメリカ大統領選挙の状況について、産経新聞ワシントン支局長の黒瀬悦成を電話ゲストに迎えて解説した。

4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)=2020年11月4日 写真提供:共同通信社

ワシントンの現在の状況〜あと1州どこかをバイデン氏が獲れば勝利

開票が続いているアメリカ大統領選挙について、現地アメリカのワシントンの状況、報道はどうなっているのか。産経新聞ワシントン支局長の黒瀬悦成に訊く。

飯田)バイデンさんがかなり当選に向けて有利に進めていると言われながらも、まだ確定は出ていないという状況です。いまワシントンはどうなっているのか、産経新聞ワシントン支局長の黒瀬悦成さんとつなぎます。黒瀬さん、おはようございます。

黒瀬)おはようございます。

飯田)いまの状況をそちらではどのように報じられていますか?

黒瀬)いわゆる大統領選挙人の獲得数では、バイデンさんが「あと1州どこかを獲れば勝ち」というところまで迫っているのですが、いずれの州でも、集計作業が進んでおらず、きょう(11月6日)中に結果が出るということはないようです。おそらく2〜3日はかかるだろうという状況です。

飯田)開票が始まってから2日が経とうとしていても、まだ結果は出ないし、週末までもつれる可能性も高いということですか?

11月1日、米大統領選が大詰めを迎え、フロリダ州で演説する共和党のトランプ大統領(左)とペンシルベニア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

ペンシルベニア州の結果で決まる可能性も

黒瀬)その可能性はありますね。ただ、激戦州として注目されている東部のペンシルベニア州では、きょうの夜にも結果が出る可能性があると言われています。

飯田)ペンシルベニア州は、選挙人の数は20人です。この州の結果が出ると、ここで勝負が決まる可能性がありますね。

黒瀬)しかし、バイデンさんも非常に慎重です。トランプさんがいろいろな訴訟をやっているということと、再集計を求めている州もあります。バイデンさんは、きっちりと勝って、揉め事をできるだけ避けたいという気持ちがあるようで、「すべての票が開くまで、みんな我慢して待っていてくれ」というメッセージをテレビで流しています。

ドナルド・トランプ米大統領=2020年10月12日 AFP=時事 写真提供:時事通信

共和党からも批判が出ているトランプ氏の一方的な「勝利宣言」

飯田)一方でトランプさんなのですが、「法廷闘争に」という話が出て来ています。トランプさんは、投票日の翌朝未明に勝利宣言を一方的にやりました。黒瀬さんも紙面でお書きになっていますが、これには保守派の方からも批判が出ているということです。

黒瀬)その記事には、日本から反響がありました。友人、知人から「産経新聞はバイデン支持に転じたのか」ということを言われました。私は、ここにいるワシントン特派員のなかで、「私ほどトランプさんを正当に評価している者はいない」と自負しています。なぜ保守派からもそのように反発されるかと言うと、自由公正な選挙というのがアメリカの合衆国憲法、民主主義の根幹であるということで、何も決まっていないうちから「勝った」と言って波紋を広げるのは、憲法上の危機を誘発することになりかねないということで、懸念が広がったのだと思います。票が開き続けていますから、トランプさんが勝利宣言をしたと言っても、陣営であれ議会の方であれ、共和党の方も「結果が見えるまでは何とも言えない」という立場を取っていて、それは民主党と同じです。

飯田)4日にお話を伺ったときには、デモ活動はワシントンでもあるけれども、落ち着いているとおっしゃっていましたが、その後どうですか?

黒瀬)引き続き、ホワイトハウスの前では、連日のようにいろいろな人が集まって来ています。基本的には反トランプの人たちがいて、もしトランプさんが勝ったとなれば暴れるでしょうし、負けたとなれば、喜んでまた暴れるという感じなのでしょうけれども、いまのところは静かです。ただ、集計作業が長引くなか、激戦州の投票所に両方の支持者が集まって、シュプレヒコールをあげたりしているような状況が増えて来ていますので、これが暴力的な衝突に至らないようにしなければならないと思います。

2月11日、米サウスカロライナ州の集会で演説するバイデン前副大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

バイデン氏が勝利宣言をしたときに、共和党の議会指導部がどう反応するか

飯田)スタジオには国際政治学者の高橋和夫さんもいらっしゃいます。

高橋)トランプさんは、「訴訟は最高裁まで行く」というようなこともおっしゃっていますが、共和党の幹部からは、この点に関して、割と冷淡な感じを受けるのですが、本音では皆さん何を思っているのですかね?

黒瀬)想像も多少入るのですが、仮に、大体の結果が決まって、バイデンさんが勝利宣言をしたときに、「共和党の議会指導部の人たちがどういう反応をするか」ということが、1つの鍵になると思います。このままトランプさんに付き合って、とことん訴訟で闘うのか、あるいは、この訴訟は勝ち目がないから、そろそろこの辺りでやめるのかということです。この辺でやめておかないと、「自分たちも2年後の選挙で返り血を浴びる」というようなことを計算する議員も出て来る可能性があると思います。

15日、米ノースカロライナ州で、期日前投票の列に並ぶ有権者(ロイター=共同)=2020年10月15日 写真提供:共同通信社

アメリカでは保守系メディアも冷静に報道

高橋)もう1つお伺いしたいのは、東京にいてもニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの紙面は簡単に触れることができるのですが、そうではなく、庶民的な人が読んでいる、ニューヨーク・ポストのような新聞はどう報道しているのでしょうか?

黒瀬)ニューヨーク・ポストはトランプさんに非常に近い立場を取っていますから、トランプさんを応援するような論調が目立ちますね。社説でも、ニューヨーク・ポストはトランプさんを支持しています。日本では放映されないFOXニュース、こちらもトランプさんを支持する論調で知られているのですが、今回の大統領選では、あくまでも「どちらが何票獲得した」という、客観的な数字を中心に報道しています。そういった意味では、FOXニュースなど保守系のメディアでも、冷静な報道をしているという感じはあります。日本では、どうしてもニューヨーク・タイムズ、CNN、ワシントン・ポストなどに書かれている論調がアメリカの主流の論調だと思われがちなのですが、どちらかと言うと、それよりももう少し中道寄りのスタンスくらいが、アメリカの一般的な見方だと見ておくのが安全かと思います。

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