バイデン氏はアメリカを「統合することができるのか」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月9日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の中山俊宏が出演。バイデン候補が当選確実となった今回のアメリカ大統領選挙について解説した。

4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)=2020年11月4日 写真提供:共同通信社

アメリカ大統領選、バイデン氏勝利宣言

11月3日に投票が行われたアメリカ大統領選挙は、トランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が激しく競り合い、各州での開票作業が進むなか、現地主要メディアはバイデン氏が当選を確実にしたと一斉に報じた。これを受け、ジョー・バイデン前副大統領は、日本時間8日午前、デラウェア州ウィルミントンで支持者の前で演説し、アメリカ大統領選での「明らかで納得のいく勝利」を宣言すると同時に、分断ではなく、結束を目指す大統領になると語った。

飯田)勝利宣言の演説を聴くと、若返ったのではないかと思いました。

4日、アメリカ大統領選の開票が進む中、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(左、ゲッティ=共同)とワシントンのホワイトハウスで演説する共和党のトランプ大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

いい意味で「普通の演説」をしたバイデン氏

中山)しかし、映像で見るとやはり「かなりのお歳だな」という感じはしましたが、いい意味で、普通にいい演説でした。トランプ大統領の4年間は、いろいろな意味で規格外で、普通ではなかったと思うのです。今回の選挙は、特に民主党側は、死に物狂いで普通さをもう一度復元させようとした。ですから、特別に素晴らしい演説というわけではないと思うのですが、普通に大統領らしい統合のメッセージを発して、「アメリカとは、こうだったよね」と思い出させる、普通の演説だったような気がします。

飯田)理念を表に出して、「こういう理想が」とか、「可能性の国だ」などという言葉が入っていました。「昔、こういう演説をたくさん聴いたな」という感じでした。一方でトランプさんに入れた人たちにとっては、「何を綺麗事言っているんだ」ということでしょうね。

中山)トランプ大統領の強さというのは、建前を壊し、「ぶちまけて」という次元で話すことです。「建前で綺麗事を話す政治家は、調子のいいことは言うが、何も自分たちのためになることはしてくれないではないか」という不信感にトランプ大統領は訴えたわけです。しかし、ときとして、それが分断を煽るように見えたり、国内を敵と味方に分けたり、大きな亀裂を生むことになりました。もちろん支持者側は、「トランプ大統領が自分たちの側にいる」という意識があったので、熱狂的な支持になりました。しかし、分断された向こう側にいる人たちは、トランプ大統領から排斥されていると感じた。CNNの黒人のアフリカ系のキャスターが、バイデン勝利が伝えられたときに泣き出して止まりませんでした。

飯田)そうでしたね。

中山)白人警官の暴行によって亡くなった黒人のジョージ・フロイドさんが、亡くなる際に、「苦しいからやめてくれ」と言いながら亡くなった。「あのような気持ちを感じていたのは、ジョージ・フロイドさんだけではないのだ」ということで泣き出してしまって、数分間止まらなかった。番組で泣き出したことに対しては、いろいろな評価がありますが、あの気持ちはわからなくもない、という反応もあったと思います。そのような人たちからすると、「普通に大統領らしく、統合のメッセージを訴えてもらいたい」ということだったのだと思います。そこにバイデン次期大統領が……と言ってもいいと思いますが、答えたということなのではないでしょうか。

2月11日、米サウスカロライナ州の集会で演説するバイデン前副大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

本当に統合することができるのか

飯田)「疎外感のやるせなさ」のようなものは、トランプさんを支持した方たちも、バイデンさんを支持した黒人の方たちも、形は違えど、同じようなものをみんな抱えているのだなと思いました。

中山)分断があるということは確実で、トランプ大統領をサポートした人たちの、いわば疎外感とか社会の変化について行く、行けないとか、取り残されるなどの不安は本物だと思います。そのような感情を、トランプ大統領は政治的に利用したようなところがあるのでしょう。不安に過剰に訴えて、不安を増幅させて、社会の分断自体はもともとありましたが、その分断をより深くした。その部分がトランプ大統領の、場合によっては民主主義にとって、よくない、さらには危ないというところだったのだと思います。

飯田)今回、統合などのメッセージを出すのであれば、そこも含めて考えなければいけない、ということですか?

中山)そうですね。ただ、統合を訴えたのはいいのですが、本当に統合できるのだろうかという疑念は、まだまだアメリカにはありますね。

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