バイデン氏当選確実で祝賀ムードのワシントン〜一方で根強く残る「トランプイズム」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月9日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の中山俊宏が出演。バイデン氏が当確となったアメリカ大統領選挙。現在のワシントンの様子について、産経新聞ワシントン支局長・黒瀬悦成を電話ゲストに招いて解説した。

米大統領選でバイデン氏の勝利が報じられた後、ワシントンのホワイトハウスに戻るトランプ大統領=2020年11月7日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカ大統領選、バイデン氏が当選確実〜トランプ氏は敗北認めず

アメリカ大統領選挙は日本時間11月8日未明、民主党のジョー・バイデン氏の当選が確実となり、事実上の勝利宣言を行った。一方、共和党のドナルド・トランプ大統領は、「勝ったのは自分だ」と主張し、選挙で不正があったとして裁判で争う姿勢を示している。

飯田)バイデン氏の事実上の勝利宣言をアメリカ国民はどのように受け止めたのか、トランプ陣営の動向はどうなのか、産経新聞ワシントン支局長の黒瀬悦成さんに伺います。黒瀬さん、おはようございます。

黒瀬)おはようございます。

2020年10月22日、米テネシー州ナッシュビルで開かれた2回目の候補者討論会で発言するトランプ大統領(左)とバイデン前副大統領(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

祝賀ムード一色のワシントン〜10日から訴訟を提起するトランプ陣営

飯田)バイデンさんが勝利宣言を行いましたが、現地ではどのような様子ですか?

黒瀬)勝利宣言の直後にホワイトハウス前に行きましたが、若い人も老人の方たちもたくさんの市民が集まっていて、「お祭り騒ぎ」という感じでした。ワシントンは今回の大統領選で、バイデン氏の得票率は93%という完全な民主党のホームです。市内は祝賀ムード一色という感じになっています。

飯田)一方でトランプさんの今後ですが、訴訟はどのようになって行きそうですか?

黒瀬)トランプさんの顧問弁護士のジュリアーニ元ニューヨーク市長が、10日からペンシルベニア州などで訴訟を提起すると言っています。ペンシルベニア州では共和党の選挙監視人が、適切に監視できず、「選挙の透明性が確保されていない」と訴えている他、いろいろな州で「何万という単位で、不正に投票された票がある」と主張しています。ただこのような不正投票に関しては、いまのところ具体的な証拠は表に出ていません。今後、裁判所でどこまで扱われるのかということは、いまもまだ不明です。

飯田)スタジオには国際政治学者の中山俊宏さんもいらっしゃいます。

ホワイトハウスで指名受諾演説に臨むトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年8月27日 写真提供:時事通信

「トランプ現象」は一過性のものではない〜前回を上回る得票数

中山)今回の選挙で、トランプ大統領は2016年よりも得票数を増やし、2008年のオバマ大統領よりも得票数は多いですよね。

黒瀬)そうですね。

中山)その意味で、「トランプ現象が退けられた」という感じがしないのですが、その辺の雰囲気を黒瀬さんはどのように解釈されていますか?

黒瀬)私も同じような感触を抱いていて、バイデンさんは勝ちましたが、下院は民主党が議席を減らすことは確実ですし、上院も共和党がもしかしたら、過半数を獲得できるかも知れないというところまで善戦しています。つまり、トランプさんが言っていた、「アメリカファースト」というようなトランプイズムが、かなり広くアメリカ社会のなかに浸透しているのではないかということです。しかも、白人だけではなく、黒人やヒスパニックなどの有色人種の方たちからもトランプさんの得票率が上がっていると考えると、「トランプ現象は一過性のものではない」のではないかという印象を抱きます。

中山)トランプ大統領が次々に、「選挙がおかしい」ということで、提訴しようという動きに出ています。我々は「なぜこのようなことをするのだろう」と感じなくはないのですが、トランプ大統領は、自分の背後には強い支持があるというある種の自信を持っていて、我々とは違う世界が見えているのでしょうか?

黒瀬)それはあると思います。これだけの数の国民の支持があれば、「押して行っても大丈夫だ」ということではないでしょうか。これはあくまで私見なのですが、これだけの支持や支持基盤を確立した場合に、「4年後の大統領選」ということも現地では囁かれていて、そうなれば、「とことんまで闘うことができる」と思っているのかも知れません。ただ、基本的には、議会は大統領1人ではなく、共和党の支えがなければ当選はできません。ここで突っ走ってしまうと、共和党内からの支持を失ってしまうのではないかという懸念も、一方であるように思います。

4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)=2020年11月4日 写真提供:共同通信社

バイデン政権への移行はスムーズに行くのか

飯田)今後、バイデン政権ということになると、権限の移行はスムーズに行くのでしょうか?

黒瀬)裁判が起きている間は、トランプ政権がまともに政権移行の手続きに応じることは難しいのではないでしょうか。2000年のブッシュ対ゴアのときも、政権移行が大きな問題になりました。アメリカの9.11米同時多発テロの報告書などを読むと、このときのクリントンさんからブッシュさんへの政権移行がスムーズに行かず、テロの脅威に対する情報がブッシュさんに引き継がれなかったことが、同時多発テロの遠因になったのではないかという指摘もされています。そのようなことも心配されます。

飯田)安全保障の分野だけでも、先に進めることはできないのですか?

黒瀬)バイデンさんは政権移行チームを立ち上げて、政府からも必要なインフラを請求されています。裁判がどうなるかわかりませんが、同時並行で進めて行けばいいのではないかと個人的には思います。

飯田)7000万人が支持したトランプさん。これは、共和党の今後の方針にも影響を及ぼしますか?

中山)アメリカの政党はけっこうルーズで、「トランプ大統領がホワイトハウスにいたからトランプ大統領のもとに結集していた」という側面があると思います。「トランプ党化」というものがこの4年間進んでいたのですが、これで一旦小休止になると思います。ただ、トランプ派というものも残るので、「共和党としてどのような方向に行くのか」ということを、これから党内で真剣に討議されるのだと思います。はっきりとした方向性がいまはないので、共和党そのものの行方もいまの懸念材料ではないでしょうか。

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