トランプは敗北宣言を水面下でバイデンとの“取引材料”に使う……米大統領選挙“完全決着”への道筋

明治大学政治経済学部教授の海野基央氏は11月9日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、アメリカ大統領選挙の“完全決着”への道筋について解説した。

2020年11月7日、米デラウェア州で勝利を祝う民主党のバイデン前副大統領(左)と、ゴルフ場からホワイトハウスに戻る共和党のトランプ大統領(いずれもロイター=共同) 写真提供:共同通信社

バイデン陣営に水面下でアプローチして敗北宣言を“取引材料”に

日本時間の11月8日、民主党のバイデン氏はアメリカ大統領選挙について勝利演説を行なったが、共和党のトランプ氏は法廷闘争の本格化を示唆した。

辛坊)日本で総理大臣や官房長官が、おめでとうの言葉を発したり、祝電を打ったりしていますから、私としても常識的にいうとバイデンさん大統領で揺るがないとは思いますが、そうなると、トランプさんは敗北宣言をいつどのような形でするのか。これについてはどうなのでしょうか。

海野)トランプさんは訴訟を起こすと。しかしそれがうまくいっていません。そうなるとトランプさんの頭の中には、敗北宣言をディール(取引)の材料として使う。トランプさんがいちばん恐れていることは起訴されて収監されることですから、バイデン陣営に水面下でアプローチして、敗北宣言をする代わりに、という。

辛坊)起訴されるとなると、どのような罪で起訴されるのですか?

海野)まず納税申告書は調べられます。いま大統領で、大統領特権があるので調べられていない。ですが、最後のテレビ討論会で、バイデンさんがトランプ大統領に中国に秘密口座があると。トランプ大統領は2015年まではあったけどいまはないと言っていましたが、その辺りも調べられる。そして2016年、2017年にそれぞれ日本円で7万9千円しか税金を払っていませんから、そこのところもあります。また、仮にですがロシアと協力して選挙を行っていたら国家反逆罪としての罪もあるということで、トランプ大統領は起訴されて収監されるときに恩赦が欲しいので、敗北宣言と恩赦のディールというのは成り立ちます。

辛坊)そのようなことって水面下でやるものですか? 表には出てこないものなのですか?

海野)表にいずれは出てくるのかもしれませんが、バイデンさんからしても、仮にトランプさんが起訴されて収監されるとしたら、7000万票を入れた支持者たちがやはり怒って社会の分断が深まります。そのようなときに恩赦を出すという手もありますから、バイデンさんにも悪い話ではない。ですからトランプ大統領はおそらく敗北宣言をどのようなものにするか、ということを考えていると思います。ただ敗北宣言をするといっても、明らかな敗北宣言はしないでしょう。スピーチライターが玉虫色な、匂わすような形にするかもしれません。

米西部ネバダ州ラスベガスでの支持者集会で演説するトランプ大統領。「米国は偉大なる再起の途上にある」と述べて11月の大統領選での再選に向け結束を求めた=2020年2月21日 写真提供:産経新聞社

支援者のパワーや影響力を維持しながらの敗北宣言

辛坊)私はこの敗北宣言が非常に重要だと思うのは、本人が敗北宣言をしないと、支援者の皆さんがいきりたつというか。その7000万票は、過去の大統領選挙でいうと、当選した大統領が獲得していたぐらいの票で、それを今回は負けた側も獲得していたわけです。よくニュースで“バイデンさんは史上最多の票を獲得して大統領に選ばれた”という報道が見られます。しかし裏を返すと、投票率自体がものすごく高くて、負けた方のトランプさんが獲得している票も、負けた大統領としては過去最高のはずです。そうなると、トランプ大統領が「僕は負けたのだ」ときちんと言えば支援者の皆さんも「本人が負けたと言っているのだから仕方ないよな」となります。しかし、本人が「負けた」と言わないと何が起きるかわからないという怖さがあります。

海野)トランプ大統領は支援者のパワーや影響力を維持したいということはあります。ですから敗北宣言をどのような形にもっていくか。裁判がうまくいかない場合、維持しながらの敗北宣言となるかもしれません。

辛坊)もう少し僅差であれば、トランプ陣営が起こしている訴えについても、何が起きてもおかしくはない、という感じなのですが、これだけ明らかに差がつくと、いくら判事が共和党寄りだろうと選挙結果が変わることは常識としてない、と考えた方がいいですか?

海野)そうですね。逆戻りはできないです。たとえば4年前にはトランプ大統領は選挙人ではヒラリーさんに勝ちました。ところが総得票数では280万票負けている。今回実をいうと、トランプさんは7000万票獲得はしましたが、総得票数で400万以上離されています。そうなると、裁判をしても具体的な証拠もありませんし、難しいと思います。

辛坊)そうなるとこれはもうバイデンさんで決まりと断言してもいいですね。夕刊も9日には当選確実としていて、制度上の当選確実とはいえ、これはもう勝ちなのだと。

米下院の情報特別委員会で、トランプ政権のロシア疑惑をめぐり証言するロバートモラー元特別検察官(アメリカ・ワシントン)=2019年7月24日 写真提供:時事通信

上院まで民主党が取ると、ロシア疑惑再追及もある

辛坊)上院は共和党が取りそうで、上下両院がねじれの関係になるのでは、という話もあったのですが、直近の話でいうと必ずしもそうはならずに上院で民主党が優勢になる可能性も無い話ではないようです。

海野)そうですね。いま拮抗していますね。

辛坊)最終的に確定するのは年明け、というような話になっていますが、この辺り、下院はバイデンさんの与党の民主党がとったということで間違いはないとうことなのですが、上院はどうなって、またそのあとのアメリカの政治はどのようなものになりそうですか?

海野)仮に上院まで民主党が取ると、結局ロシア疑惑というのはいままでは共和党が取っていたので追及できなかった。そこで、再度追及ということもあります。モラー特別検察官が結論を出しませんでしたので、再度民主党が攻撃を仕掛けてくるということはあるので、トランプさんはやはり怖いと感じています。

辛坊)副大統領が上院の議長になりますから、最終的に年明けに上院が民主50・共和50のようなことになると、民主党が多数派になると。上下両院を民主党が抑える。そうなると、さっき言っていた、敗北宣言するときに「訴追は勘弁してほしい」というような裏約束がないとトランプさんは現実に逮捕、留置のような流れがないとはいえないですね。

海野)ないとはいえないです。ですからトランプ大統領は本当に恩赦が欲しいのではないでしょうか。恩赦を担保に入れたいのです。

辛坊)それって、こんなことを言うのも何ですが、韓国の政界に似ているような感じがしないでもないですね。アメリカ大統領が次々と逮捕されてしまう、のような。

海野)ですがそうなると、繰り返しになりますがトランプ支持者たちが非常に何が起きるかわからない。Qアノンとかのような信者たちはいますから。バイデンさんはやはり融合を求めてきましたので、恩赦を出した方がいいと思います。

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