打上げ目前……野口聡一宇宙飛行士「行ってきます!」

「報道部畑中デスクの独り言」(第218回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、「スペースX」の新型宇宙船「クルードラゴン」搭乗を目前に控えた宇宙飛行士・野口聡一さんについて—

ケネディ宇宙センター到着後の野口聡一宇宙飛行士(JAXA提供)

日本人宇宙飛行士の野口聡一さんが、アメリカ「スペースX」の新型宇宙船「クルードラゴン」への搭乗を目前に控え、11月9日夜(日本時間の10日午前)、フロリダ州のケネディ宇宙センターでJAXAによるオンライン記者会見に臨みました。

「いよいよまたこの日がやって来たという独特の緊張感と、小学生が運動会前に寝られないようなワクワク感と両方……」

このように心境を語った野口さんは、会見前日にアメリカの宇宙飛行士3人とともに、ケネディ宇宙センターにチャーター機で到着。このとき、「日本の皆さまに夢と希望と感動を分かち合えるように“全集中”でがんばりたい」と語りました。

野口さんは今年(2020年)大ヒットした「鬼滅の刃」も見ているようです。会見ではそのことを問われ、「娘の影響」と照れながらも、「仲間と一緒に力を合わせて、“柱”のようにそれぞれの専門性を高め、明るい未来を感じて欲しいという大きな目標に向かって、一致団結して“全集中”で臨みたい」と、改めて意気込みを語りました。

“柱”とは、人間を鬼から守るためにつくられた組織「鬼殺隊」のなかで、最上位の実力を持つ者たちのこと。サラリとこの言葉が出て来るあたり、娘さんの影響ながら、その入れ込みぶりは相当のようです。

ケネディ宇宙センター到着後の野口聡一さんら4人の宇宙飛行士(JAXA・NASA提供)

一方、宇宙船の搭乗が「怖くはないか」という質問に対しては、「失敗したときのリスクは当然あると思うが、挑戦することで得られる成長やベネフィット=利益の方が、挑戦する“恐れ”より上回っている」ときっぱり。

野口さんはTwitterやYouTubeでも情報発信を続けています。興味深いのは、やはり新型宇宙船の“中身”。座席は炭素複合素材を使った軽量で丈夫なバケットシート。読書灯やフットレストの他、乗降や緊急脱出の際に重力などの体の負担を減らすため、電動リクライニング機構が搭載されています。

F1レーサーのような5点式のシートベルトに、「命綱」と言えるのがシートと宇宙服をつなぐコネクター。宇宙船から酸素や冷却空気、通信回線が供給されます。

また、船内で着る宇宙服の紹介も。「スターマン」と呼ばれ、これまでの宇宙服より軽量です。一体でありながら3層構造。内側から気密性を保つ第1層、強度を保つ第2層、防炎機能を持つ第3層からなります。

ヘルメットは3Dプリンターで製作。手袋をはめたまま船内のタッチパネルも操作できる仕掛けとなっています。まさに「今風」です。

会見で野口さんは新型宇宙船について、「圧倒的に設計が新しい。インテリアがモダンで機能的。ワイヤーやスイッチ類がなく、操作系がシンプルかつエレガントであることが新しい」と絶賛。宇宙服についても「軽くて着心地もよく、着脱が圧倒的に楽」と話していました。

クルードラゴン試験機の船内 3つのタッチパネルが特徴(NASAテレビから)

新型宇宙船の打ち上げは現地時間の14日、日本時間の15日午前。今回が本格運用1号機で、「困難な状況から立ち直る力」を意味する「レジリエンス」号と名付けられました。

新型コロナウイルスの感染拡大、東京オリンピック・パラリンピックの延期などを挙げながら、「2020年はいろいろな意味で厳しい1年だった。そういう皆さんの思いに新しい息吹、展望を届けたいというのがクルー4人の共通した願い」と、命名に込めた思いを語りました。

野口さんはおよそ半年間、国際宇宙ステーションに滞在する予定です。日本の実験棟「きぼう」では数々の実験が行われますが、なかでも目を引くのは、iPS細胞を使った実験でしょう。

ヒト由来のiPS細胞から分化させた細胞を用いて、肝臓の基となる肝芽を作製。「きぼう」内で培養した上で地上に回収し、地上との成長の違い、重力の影響を解析します。

新型宇宙船の本格運用そのものも大変画期的なことですが、同時に地球低軌道を回る国際宇宙ステーションへのアクセスが民間に委ねられれば、公的機関は「次のステップ」に向かうことができる……その扉を開ける意味でも、大変に注目されるフライトとなります。

次のステップとは……月や火星の探査になります。その計画の1つが、アメリカ主導による「アルテミス計画」。人類が2024年に月を目指すというもので、月の資源を利用して火星などへの探査に弾みをつけるというものです。

ただ、このアルテミス計画をめぐっては科学者の夢という純粋さだけではなく、さまざまな思惑が交錯するわけですが、これについてはまたの機会に……。(了)

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