「Go To」見直し〜政府は解決すべき課題に向かっていない

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月24日放送)にジャーナリストの有本香が出演。全国知事会がオンラインで会合を開き、国への緊急提言の素案を示したニュースについて解説した。

2020年11月21日、発言する菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202011/21corona.html)

全国知事会、国へ緊急提言

全国知事会は11月23日、新型コロナウイルス対策本部の会合をオンラインで開き、国への緊急提言の素案を示した。菅総理大臣が運用の見直しをした「Go To トラベル」に関して、新型コロナの感染拡大が4段階中、2番目に深刻な「ステージ3」相当となった地域は、対象から除外するよう求めた。また、その場合のキャンセル料は国が負担するなどの財政支援も求めている。

飯田)Go To トラベル、あるいはGo To Eat、一連のGo To キャンペーンをどうするという話でもちきりという感じになっています。大阪は時短要請、北海道は札幌除外など、具体的なことも出て来ています。

有本)Go To トラベルをここでまた停止するということになると、旅行に行く人がいなくなるということだけではなく、あらゆるところに波及しますよね。そう言い始めてから、銀座の街などは人の数が目に見えて減っていますからね。みんなの消費マインドがようやく戻って来たところで、もう1回萎ませてしまうのは、大変なことだと思います。「では、いまの状況をそのまま野放しにしていいのですか」という話になるのですが、これはいろいろな角度から考える必要があると思います。

飯田)そうですね。

会見する菅総理 新型コロナウイルスの感染症対策等についての会見 2020年11月21日(首相官邸HPより https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202011/21bura.html)

医療現場がどのくらい逼迫(ひっぱく)しているか〜外国に比べて重症化率が低い日本

有本)いまいちばん私たちが心配しなければいけないのは、日本においてはですけれども、医療現場がどれだけ逼迫(ひっぱく)しているか、ここにかかっていると思います。というのは、日本は幸いにして重症化する率が非常に低いわけです。死亡に至っている人の数も、もちろん亡くなった人がいてそれは残念ではあるけれども、率としては少ないわけです。

飯田)昨日(23日)、一昨日(22日)の新聞では、2000人を超えて来たというのが一面トップですが、諸外国から考えると2桁くらい違う。

有本)2桁くらい小さいですよね。しかも、この数字はクルーズ船の関係者の数も含めてでしょ。ですから、幸いにして、非常に少ないわけです。そして、諸外国と比べても日本人は真面目にマスクを着用して、自発的に距離も取っているではないですか。そういう意味でも、いまの状態で日常生活を送っている分には、異常なことをしなければ、感染爆発が起こるということは考えにくいわけです。いろいろな要素があって、ここに来て感染が増えているのは、さまざまなことが考えられると思うのです。

飲食店向け支援策「Go To イート」キャンペーンの対象店で、飲食を楽しむ人たち=2020年10月15日、東京都台東区 写真提供:時事通信社

日本国民だけに負担を押し付けるのは筋が違う

有本)だけど、そうやって消費マインドを冷え込ませて、それこそ旅行会社に限定して言えば、最大手のJTBはグループで1000億の赤字です。中小の企業は体力的に持たないと思います。そんな状況がある一方で、「これは止めます」と。だけど、いま外国から人が入って来ることに関しては緩和しているでしょ。この入り口を閉めないで、なかの国民にだけ負担を押し付けるというのは、私は筋として違うと思います。

北海道独自の5段階の警戒度を札幌市限定で「4」に引き上げ、記者会見する鈴木直道知事=2020年11月17日午後、北海道庁 写真提供:共同通信社

日本と海外ではPCR検査の基準が異なる

有本)それから、もう1つは医療現場の逼迫についてですが、PCR検査をする、そのときのCT値が日本と諸外国では違います。日本の場合は、陽性になる数が多いと言われています。これで他の国と比べて陽性者があまりにも多く出る。それで医療が逼迫するというのも変な話です。

飯田)基準を厳しめに取っていると。

有本)この基準自体も、国際的に統一がないのです。その辺はWHOなどのイニシアチブの問題であるけれど、これだけ世界中で感染が拡がって大きなことになっているのに、この基準を諸外国に合わせる方がいいのか、日本は独自の基準で厳しめに行くのか。自主隔離が日本の場合、相変わらずお願いベースではないですか。外国から入って来た人が陽性となってしまったらもちろんのことですが、そんなこと守られると思いますか?

飯田)人によっては、そのまま出てしまうということもあるのではないでしょうか。

有本)あり得ますよね。外国人の場合は特に、隔離状態にあっても食事から何から自分で手に入れることは難しいではないですか。

飯田)いきなりデリバリーサービスを使うこともなかなか難しい。

有本)できないですからね。だから難しいわけです。そうすると、1つはゲートウェイを閉めるということがあると思います。そして国のなかで、できるだけうまく経済を回して行くようにしないと、国外の人は入れるけれど、国内の人は「自粛してください」というのはやはりおかしい。

英イングランド外出制限へ 10月31日、ロンドンで飲食店に集う人々(ゲッティ=共同)=2020年11月1日 写真提供:共同通信社

外国人もすべて国費で医療提供をする〜締めどころが違うのではないか

有本)もう1つ、私は感染の問題が出てからずっと言っていますが、いまは感染症の2類です。発症した人に関しては、全部国費で面倒を見る形で医療を提供するわけです。ここも、内外無差別で外国の人も関係ありません。外国の人で発症して医療を受けた人がどれくらいいるのかということもあるけれども、これはどれくらいいるのかという問題ではなくて、他の国でも同じことになっていますかということです。他の国は入国したときの行動制限自体がもっと厳密なので、日本のように「緩いけれど発症したら全部面倒みるよ」ということはないわけです。ここの辺りも含めて、締めどころが違うのではないかと思います。

飯田)台湾では、基本的に14日間隔離になりますが、ホテルなどの手配はするけれども費用は自己負担です。

Go To トラベル 東京発着旅行の旅行商品予約解禁 旅行代理店では割引商品の販売開始=2020年9月18日午後、東京都台東区の日本旅行リテイリングパルコヤ上野支店 写真提供:産経新聞社

解決すべき課題に向かっていない〜知事会には大きな観点で提言して欲しい

有本)それと、台湾の場合は、国境での水際対策が厳密に行われているということと、これも水際対策の一環ですが、隔離も厳密になっているだけではなく、感染経路がきちんと追えているわけです。それは罰金なども含めて、国民自体を非常時になったときにはトレースできるようになっている。半年前からこの課題は明らかになっているのに、一体何をしているのですかと。デジタル庁をつくったらそういうことは諸外国並みになるのですか?

飯田)行動の履歴などをどこまでデータとしてできるのか。

有本)そのような部分も含めて、今回のことに際して、解決しなければいけない課題は見えて来ているのに、そこをやらないまま、特定の業界や業種を締め上げることになるのは、順序も違う。これは旅行業界や観光業界を救うだけではなく、そこで消費される食材の提供者からさまざまあるわけです。そういう意味でも、これは非常に残念です。知事会も国に緊急提言をするということですけれど、単に自粛をして行くための提言だけではなく、私が先ほど述べたように入国制限をするというのは、国の仕事です。地方自治体はできないので、そこも含めた貿易対策としての根本を、大きな観点から提言していただきたいと思います。

旅行代理店のGo To トラベルキャンペーンを知らせる張り紙=2020年7月20日、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

いろいろなデータが開示されていない

飯田)データ自体も、患者のなかに外国人がどれだけいるのかというのもわからない。

有本)開示されていないですよね。

飯田)現場の人に話を聞くと、第1波、第2波のころは外国人が多くてコミュニケーションも苦労したけれど、今回に関しては、それほどにいなそうだというのはあるらしいです。ただ、それもデータがないからわからない。ウイルスの遺伝子を見ると海外由来のものは、今回の感染に関してはなさそうだということです。

有本)これも、「なさそうだ」という感じですよね。

飯田)データがないのですよね。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

医師会からのコメントも科学的ではない

有本)医師会から出ているコメントも、およそ科学的だというようには理解できない。

飯田)Go To 悪者論みたいなところにということですか。

有本)「ではないか」ということです。人が動けば感染は拡大するということは言えるだろうし、いまは冬に向かっていますから。

飯田)乾燥して寒くて。

有本)乾燥して寒くなれば感染は増えるだろうというのは、最初から予想できたことです。そのためにみんな、うがい手洗いやマスクなどを厳密にやっているわけです。そういう点でも、国民に、納得感のないことだけを負担として押し付けるのはやめてもらいたいというところでしょうか。

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