新型コロナ〜旭川市が自衛隊派遣要請に至った「地域医療の事情」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月10日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の神保謙が出演。新型コロナ分科会の尾身会長が「Go To トラベルを控えるべき」だと述べたニュースについて解説した。

新型コロナウイルス感染拡大で医療体制の逼迫する北海道旭川市で、クラスターが発生した「慶友会吉田病院」に入る陸上自衛隊の看護官ら=2020年12月9日午前 写真提供:共同通信社

新型コロナ分科会の尾身会長「Go To トラベルを控えるべき」と主張

尾身会長)ステージ3相当の地域についてはGo To を含めて人の動き、あるいは接触を控えるべき時期だと私は思っております。国として緊急事態宣言を出すステージかというと、まだ至っていないと思いますが、地域によっては極めて重要な時期に差し掛かっているという問題意識が私はあると思います。

 

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長は衆院厚生労働委員会で9日、感染が急拡大する地域では、「Go To トラベル」を含めて人の移動は控えるべきだと述べた。

飯田)場所によっては、医療体制が逼迫(ひっぱく)しているところもあるようです。

神保)11月の第1週から感染者数が増えて来ました。この5週間くらいで気がかりなのは、陽性者の数も増えているのですが、「入院治療を要するもの」というカテゴリーの方が全国で大幅に増えていて、都道府県別で深刻さの度合いに差が出ています。

飯田)そうですね。

北海道独自の5段階の警戒度を札幌市限定で「4」に引き上げ、記者会見する鈴木直道知事=2020年11月17日午後、北海道庁 写真提供:共同通信社

旭川での医療体制が特に逼迫

神保)第1波のピークが5月上旬にありました。そのときは日本全国で1万人くらいの方々が入院治療をしていたのですが、現在は全国でその2倍に増えています。東京は陽性者の人数は多いのですが、現在のところ、入院を必要とされる方は5月上旬のピーク並みと、数字の上ではなっています。病床使用率は増えているのですが、病床自体も増えているので、7割くらいということになっています。しかし、北海道と大阪は5月上旬の4倍なのです。

飯田)北海道と大阪は特にそうですね。

神保)都道府県によって増え方の規模が違っていて、それが所々で対応の逼迫を生んでいます。特に問題になっているのが北海道の旭川です。国内最大の院内クラスターが発生してしまっていて、自衛隊の災害派遣を必要とするレベルになってしまったということなのですが、引き続ききめ細かい都道府県別の対応が必要だと思います。

大阪府新型コロナウイルス対策本部会議。終了後のかこみ取材で、「医療非常事態宣言」と書かれた紙を掲げる吉村洋文知事=2020年12月3日午後7時47分、大阪市中央区 写真提供:産経新聞社

医療機関でクラスターが発生することによる機能破壊〜北海道ならではの事情

飯田)院内クラスターが起こると、患者を収容できないだけではなく、他の医療も含めて甚大な影響が出るということが如実にわかるということですよね。

神保)そうですね。5月の時点から懸念されていたのですが、医療機関で発生するとどれだけ機能を破壊するかということが、特にここ数週間で北海道を中心に目の当たりになっているということです。

飯田)北海道のように大地に都市が点在しているような形だと、他の都市まで患者搬送ということが難しいところもあります。地域で1つ医療機関がダメージを受けると、かなりクリティカルになって来る。

神保)大都市圏は大都市圏で問題がありますが、少なくとも医師会が連携することによって、いろいろとプールができる可能性がありますけれども、北海道のような場所だとそれもなかなか難しい。故に自衛隊に頼まざるを得ない状況になったということだと思います。

参院予算委員会で答弁する政府参考人の新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長=2020年9月3日午後、国会・参院第1委員会室 写真提供:産経新聞社

地方で総合病院が機能不全になると受け入れ先がなくなってしまう

飯田)北海道旭川の病院の例を見ても、コロナを感染症指定医院以外でも受け入れなければならない。そうすると、ゾーニングを徹底することができなかったり、資材が足りなかったりして院内感染が起こってしまう。現場は必死にやっているけれども、それだけでは足りない部分がある。

神保)そうですね。地域医療は、かかりつけ医と総合病院の連携体制によって成り立っていて、総合病院の充実は地域にとっては、本当に素晴らしいことなのですが、そこがやられてしまうと、受け入れ先が回らなくなってしまいます。そこが感染症対策の難しいところだと思います。

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