福島原発処理水の海洋放出〜IAEAが入ることによって払拭されるさまざまな弊害

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月21日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。福島第1原発で増え続ける処理水に関して、IAEAのグロッシ事務局長が監視チームを派遣する用意があると明かしたニュースについて解説した。

東京電力福島第1原発敷地内に立ち並ぶ処理水保管タンク=2020年2月 写真提供:共同通信社

IAEA〜処理水処分で監視チームを派遣する用意

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は12月19日までに、東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の処分について日本側と協議しており、処分が決まった場合、要請があれば国際的な監視チームをすぐに派遣する用意があると明かした。

政治 菅義偉首相が就任後初、福島県訪問 東電福島第1原発の構内を視察=2020年9月26日午後0時6分、福島県大熊町 写真提供:産経新聞社

処理水の海洋投棄に反対の小名浜漁協〜風評被害を懸念

飯田)日本と協力して、国内外の懸念の払拭に努める姿勢を鮮明にした格好です。増え続ける処理水ですが、2022年の夏にも限界に達するということが言われています。

須田)今回のIAEAの動きは、そういう意味では、大きく評価できるのではないかと思います。2週間ほど前に私は福島県の小名浜漁協に取材に行って来ました。漁業関係者にしてみると、自分たちの仕事場に処理水等々が流れ込んで来ると、風評被害が起きてしまう。2021年にも本格操業が始まるのです。それに水を差すような形になるし、福島県産の魚介類に対して信頼性が失われてしまい、経済的損失が発生するだろうということで、基本的には、反対のスタンスを取っているのです。

飯田)風評被害につながってしまうと。

東電強制起訴判決 福島原発事故の刑事責任を問う訴訟で、東電旧経営陣に無罪判決出たことで、「不当判決」を訴える原告ら=2019年9月19日、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

根底にある東電への不信感〜トリチウム以外に処理水に含まれる炭素14

須田)その底辺にあるのは、東京電力に対する大きな不信感なのです。東京電力の言っていることがなかなか信用できない。「多核種除去設備(ALPS)を経由して出て来た処理水は安全なのです」といくら言われても、それまでの経緯でなかなか信用できない。加えて、タンクのなかに入っている処理水とされるものが、全部安全なのかどうかわからないのです。なぜかと言うと、トリチウム以外に、炭素14という放射性物質が含まれているのです。

飯田)そうなのですね。

須田)ただ東電サイドは「基準値以下です」という言い方をしている。調べてみると、基準値以下であることは間違いないのだけれども、この炭素14が含まれていることがわかって来たのは2020年の夏なのです。夏くらいにやはり処理水の海洋放出をめぐって議論があって、いろいろな協議が行われていたのだけれども、ようやくそこの段階で出て来て、「どの程度入っているのか」がわかったのが2020年9月になってからなのです。だから「結論ありきではないのか」という認識を持っているのです。

飯田)きちんとオープンにしてくれているのか、本当に、と。

須田)もう1つ、これは正確にラジオをお聴きの皆さんも理解していただきたいのですが、トリチウム水を海洋放出しているのは、「何も福島第1原発だけではなく、日本国内の他の原発、海外の原発も放出している。だからいいではないか」という議論があります。確かにそうなのだけれども、そこには「事故を起こした原発が海洋放出していいという基準値」が国内には設けられているのです。だから、一概に他の原発と比較することはできない。

飯田)そうですね。

政治 東電福島第1原発の処理水めぐり、全漁連が梶山弘志経産相に要請書=2020年10月15日、経産省内 写真提供:産経新聞社

公正中立的な立場でIAEAが立ち会うことで諸外国への説明にもつながる

須田)この基準が適切なのかどうかという検証も必要です。私は相当厳しいと思います。もう少し緩めてもいいのではないかと思うのだけれども、そうすると、「海洋放出するために緩めた」となってしまって、これも風評被害につながってしまいます。緩めるべきなのですけれども、そこを緩めると……という問題が起こって来る。そういう意味で、冒頭の話に戻りますが、IAEAが立ち合うということが重要になるのです。国内基準を緩めて放出ということになってしまうと……。

飯田)「政府が恣意的に」とか。

須田)そう、韓国などから文句を言われかねないので、そこは公正中立な立場でIAEAが立ち合うということが私はベストだと思います。それは諸外国に対しての説明にもつながるし、東電を信用できないとする漁業関係者への信頼性にもつながるのではないかと思います。

小泉進次郎環境相がいわき市内で記者団の取材に応じ、原発の処理水に関する質問に答えた=2019年9月17日午後、福島県いわき市 写真提供:産経新聞社

IAEAが間に入ることによって安全性や安心感が広がる

須田)相当大きく前進するのではないかと思います。ところがケチのつけ方はいろいろあって、「IAEAは日本にべったりだ」というような批判がまた韓国から出たりします。

飯田)「前の事務局長は日本人だったではないか」というような話とか。

須田)しかし、日本の政治的な思惑で勝手にIAEAの基準を変えることもできないし、監視団チームの判断を揺るがす、しかも黒を白にするなどということは100%できませんからね。

飯田)日本の原発や再処理施設は、IAEAの基準のために、ものすごい数の監視カメラが置いてあるということですからね。

須田)経産省、ましてや東電が「日本の原発は安全です」と言っても、日本国内の反対派は納得しないだろうし、ましてや諸外国は首を縦に振りません。IAEAが間に入ることによって、その辺りの安全性や安心感は広がり、反対のための批判は出て来ないのではないかと思います。

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