最高裁が「覆面禁止法は合憲」〜これで香港の自由は完全になくなった

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月22日放送)にジャーナリストの有本香が出演。香港の最高裁がデモ隊の覆面禁止法を合憲と認めたニュースについて解説した。

「覆面禁止法」の施行などに抗議し、仮面姿でデモに参加する人=2019年10月05日、香港(共同) 写真提供:共同通信社

香港の最高裁、デモ隊の覆面禁止法について合憲と判断

最高裁に相当する香港終審法院は12月21日、デモ隊がマスクなどで顔を隠すことを禁じる規制について、政府側の訴えを全面的に認め、規制を支持する判断を下した。

飯田)基本法に違反しているという一審判決が出ていて、二審でも一部は容認していますが、憲法違反であるということでしたけれど、ひっくり返ってしまいましたね。

有本)最高裁、高いところへ行けば行くほど、政治的になってしまうという恐ろしい話だと思います。香港は司法も完全に中国に飲み込まれたと思っていいですね。あっという間でした。

飯田)去年(2019年)のいまごろは、区議会選挙が行われて民主派が圧勝し、「これは民意で防げるのではないか」という感じでした。

有本)香港の民意が完全に示され、これで国際社会が応援すれば、押し返せるのではないかと、そういう空気が漂ったのが去年の12月です。飯田さんは行かれていましたよね。

飯田)はい。区議会選挙のあと、最初の大きなデモがあったときに行きました。そのときは高揚感に包まれたデモで、若い人や子ども連れも出ていて、いろいろな世代や階層の人が支持していました。「これは何とかなるのではないか」と私も夢を見たのですが、儚かったです。

集会に参加し、音楽に合わせてスマートフォンを揺らす生徒ら=2019年9月2日、香港(共同) 写真提供:共同通信社

これで香港の自由は完全になくなった

有本)結局これは「デモ隊のマスクや覆面を禁止する」、つまり、「デモをするな」ということです。顔認証システムが中国にはありますから、顔が見えるのであれば、どこへ逃げようが特定できるということです。そういう意味では、香港の自由は完全になくなりました。振り返ると2014年、いまから6年前に雨傘運動が始まって、このときから、徐々に香港の自由を奪って来たわけです。2016年くらいには、書店の店主が連れ去られることがありました。このように香港の自由を奪い、6年という年月も考えてみれば、あっという間です。そもそも一国二制度と言っていた、大げさに言えば香港という1つの都市国家的な場所が完全に消滅して、中国の1つの地方都市となって行く。そのための時間としては、かなり短かったと思います。

飯田)50年間は一国二制度を続けるはずだったものが、大幅に短縮され、ここ6年間でガタガタと……。

10日、香港警察に連行される周庭氏(ロイター=共同)=2020年8月10日 写真提供:共同通信社

香港問題の重要性に対する日本人の認識が薄い〜少ない蘋果日報・黎智英氏の報道

有本)一国二制度というのはなくなりましたし、香港の自由がなくなったということは、私たちの知っていた香港がなくなったということです。この重要性に対する日本人の認識が薄いと思います。それから、このデモに伴って、周庭(アグネス・チョウ)さんや黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さんなどの若きデモのリーダーが出て来た。こういう人たちに注目が集まるわけですけれども、彼らが収監されるということで日本からもそれなりに、民間を中心に「彼らを助けなくては」という声が上がっています。一方で、香港の民主派にずっと寄り添って来た「蘋果日報(アップル・デイリー)」という新聞がありますけれども、その創始者が同じように収監されました。彼は国家反逆、国家安全維持法に違反しているという容疑にいまのところなっていますよね。

飯田)この国の司法だと容疑をかけられた時点でダメですよね。

有本)これに関して日本のメディアはもっと騒がなければいけないですよね。報道の自由を、暴力的に野蛮に押しつぶしているわけですからね。このことが、言い方は悪いかも知れませんが若いリーダーに注目が行ってしまっていて、蘋果日報の黎智英(ジミー・ライ)氏がここまでの扱いを受けているということに関しての報道が少ないと思います。

飯田)これだけの人ですから、いろいろなことに気をつけて活動をして来ているはずですし、その上で、合法の範囲で新聞を出すという形でやって来たにもかかわらず、容疑をかけられると。おそらく外国人と少し話したとか、発信したというのが容疑だと思いますが。そうなると、我々が取材などでコンタクトを取るということもできなくなります。今後の香港の情勢がますますわからなくなりますよね。

「五大要求」を掲げて香港中心部をデモ行進する市民ら=2019年12月8日(共同) 写真提供:共同通信社

「蘋果日報(アップル・デイリー)」の消滅は、香港がなくなるということ

有本)そういう意味で、香港が香港でなくなったという認識を持たなければいけないのです。黎智英氏の容疑はともかく、アップル・デイリーという新聞が事実上なくなって行くというのは、私たちにとっては、香港の一部がなくなるということです。反体制的であるとか、反中国共産党的であるというだけではなく、ゴシップもあり、エンターテインメント的にもおもしろい新聞だったのです。

飯田)ゴシップもいろいろありましたよね。

有本)私たちのように昔の香港映画好きには、アップル・デイリーは欠かせないアイテムでした。そういうものがなくなるということは、イコール香港がなくなって行くということなのです。このことに、日本のメディア自体がもっと騒がなければいけないですよね。

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