中国の海警法が施行〜日本は尖閣をどう守るのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月1日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。中国の海警法について解説した。

習近平氏、長江経済ベルト全面的発展推進座談会で重要演説=2020(令和2)年11月14日 新華社/共同通信イメージズ

中国の海警法、2月1日施行

中国海警局に武器の使用を認める権限などを定めた海警法が2月1日に施行される。海警局は軍と共同で訓練を行うなど事実上の「第2海軍」となっていて、海警局の船舶は沖縄県の尖閣諸島周辺で日本の領海への侵犯を繰り返し、緊張の一層の高まりが懸念されている。

飯田)バイデン大統領と菅総理大臣が電話首脳会談をしましたけれども、尖閣の安保5条適用については確認をしたということですが、この法律は話題にはならなかったようです。

沖縄県・尖閣諸島 手前から南小島、北小島、魚釣島 海上自衛隊の哨戒機「P-3C」 から=2011年10月13日 写真提供:産経新聞社

国連加盟国に定められる国際海洋法

須田)この問題については織り込み済みなのです。名前に「法」がついていますが、国際海洋法は国連加盟国のなかにおける条約の積み上げです。そのなかにEEZラインというのはどういうものなのか、領海とは何なのか、無害航行というのは何を意味するのかというところが全部決まっていて、そこでトラブルが起こると、国際司法裁判所にかけられて紛争解決をするという仕組みがつくられている。そのトータルのものが「国際海洋法」ということです。もちろん中国は国連加盟国ですから、この海洋法の範囲に縛られているわけです。

飯田)本来的には。

中国は2020年10月14日午前、広東省深セン市で深セン経済特区〈SEZ〉設置40周年を祝う盛大な大会を開いた。習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席がこれに出席し、重要演説を行った。〔新華社=中国通信〕写真提供:時事通信社

中国の思惑でルールをつくる〜海警法

須田)ところが、EEZを1つ取ってみても、未だに中国は古い概念である「大陸棚の延長」という主張をしていて、それを曲げません。そこがあるからこそ、南シナ海の問題が発生して来るわけですが、「海洋法は守りません、うちには影響を及ぼしません」と明言しているのです。紛争解決手段である「司法裁判所等々には我々は従いません、そこで出て来た判決については無視します」ということを明言している、そういう国なのです。そういった国際法秩序を自分たちの思惑でルールを変えて行こう、戦後秩序を変えて行こうというのが中国という存在です。そのなかにおける海警法と位置付けられるのではないでしょうか。冒頭、「織り込み済みだ」と言ったのは、中国というのはそういうことを続けて来た国なのだから、このような海警法というのも当然あり得るだろうし、やって来るだろうという前提で動いていたということです。

習主席、国連総会の一般討論演説=2020年9月11日 写真提供:時事通信

「大陸棚の延長」を主張する中国〜既成事実を積み上げてつくった基地を守る海警局

飯田)大陸棚の延長という話がありましたが、大陸があって海があって、「海の浅いところは陸の延長だろう」ということで「俺たちの海だ」と、「排他的経済水域に組み込め」というような主張のもとで、南シナ海の舌がベロンと長くのびるような、「九段線のなかは全部俺たちのものだ」と主張しています。海警法に関しても、ベトナムやフィリピンが激烈に反対しています。その辺の危機感が相当あるということですか?

須田)それを実行力、軍事力を持って自らの主張を守る、権利を主張するというのが、この海警法の持つ本質的な意味です。そういう点で言うと、既成事実の積み上げをしてしまい、「そこに基地をつくるつもりはありません」と言いながら、いつの間にかできているではないかと。

飯田)パラセル諸島やスプラトリー諸島もそうなっていますからね。3000メートル級の滑走路が整備済みであると。

須田)そこを実力でもって守るということです。守るための前哨となるのが、この海警局の方です。そして、それに対抗する軍事的勢力が現れれば、中国海軍や中国人民解放軍が出て来るという建て付けになっているのです。

イージス2隻を閣議決定へ 海上自衛隊のイージス艦「きりしま」=2020年11月27日 写真提供:共同通信社

自衛隊は尖閣をどう守るのか〜日本国民は自衛隊をどうバックアップするのか

飯田)表向きは日本で言うところの海上保安庁、アメリカで言うところのコーストガードのような白い船になっていますけれど、指揮命令系統は中央軍事委員会ですので、「第2海軍」という感じですよね。

須田)海上保安庁やコーストガードの船を見ると、軍艦とは違うではないですか。

飯田)そういう目的でつくっていませんからね。

須田)海警局の船は軍艦そのものです。

飯田)色だけを塗り替えたような。

須田)それにどう向き合うのか。当然のことながら、その枠組みのなかでアメリカも見ていますから、尖閣が日米安全保障条約の対象になるということは当然の結論として出て来る。そうは言っても、日本が何もアクションを起こさないで、アメリカ軍が守ってくれるというわけではない。自衛隊がまず出て行って、その上でアメリカがフォローアップするというのが安保の本質です。そもそも論として、自衛隊はそこをどう守るのか。もちろん戦略は考えていると思います。しかし、日本国民として自衛隊をバックアップするために、どう意識を持って行けばいいのか。これは、我々日本国民に突き付けられた課題だと思います。

飯田)最初、海保が出て行って、その後に自衛隊が行くという建て付けにいまはなっていますけれど、その辺をもう少しシームレスに運用できるように、「領域警備法」をつくるべきではないかという意見が、自民党の部会からも出ています。

会談後、腕でタッチを交わす岸防衛相(左)と在日米軍のシュナイダー司令官=2020年10月8日午前、米軍横田基地 写真提供:共同通信社

海上自衛隊の人員不足

須田)海上自衛隊の人員不足も気にかかるところです。ハードのところが足りているのかどうかを見直さないといけない。それが予算の問題なのか、国民の意識の問題なのかというところも含めて、国は検証するべきだと思います。

飯田)イージス・アショアの代替で船をつくるとなると、動かすには1隻あたり300人くらいの人が必要になるので、そちらに人をとられてしまうという話も出ています。

須田)そもそもイージス艦の人員が足りないから、イージス・アショアになったわけでしょう。

飯田)陸上にということで。

須田)そうなったわけで、それをもとに戻すのですから。その部分だけ見ても「足りているのですか?」と。海上自衛隊の人員不足については、あまり知られていないのですよね。そういう問題を孕んでいて、しかも中国がこのような動きを強めているなかで、本当にそれでいいのかどうかというところは、すぐに問題解決にはつながらないにしても、問題認識を共有しないといけないと思います。

飯田)そうしなければ現状は変わらない。変わらないと問題はどんどん深刻化するということですよね。これは時間がないのではないですか?

須田)その辺り、国会でも腫れもののような扱いになっています。

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