森喜朗会長の発言の真意は「女性登用」に苦心するJOC山下泰裕会長を擁護するものだった

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月15日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。東京オリンピック・パラリンピック会長人事について、控える政治的思惑を解説した。

IOCのトーマス・バッハ会長との電話会談を受けて記者会見に臨む五輪組織委の森喜朗会長=2020年3月24日、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

森喜朗会長の後任〜1週間以内に絞り込みへ

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、女性蔑視とも取れる発言で辞任表明をした森喜朗会長の後任候補を1週間以内にも絞り込む方向で調整に入った。後任には橋本聖子オリンピック担当大臣らが挙がっている。

飯田)2月12日の昼くらいに川淵さんがやはり受けないというようなことが出て、次々といろいろなことが出て来ました。

須田)この組織委員会の会長人事が明らかに政治問題になって来ている。誰を据えた方が今後の政権、与党にとってダメージが少なくて済むのか。今年(2021年)予想される衆議院選挙でダメージが少なくて済むのかという政治案件になってしまっています。

東京五輪・パラ組織委「東京2020パートナー」 国内全68社との契約延長基本合意で会見=2020年12月24日午後3時37分、東京都中央区の晴海トリトンスクエア(代表撮影) 写真提供:産経新聞社

「2030」目標〜20年までに指導的地位の女性比率を30%に

須田)「役職者の一定程度の割合を事前に女性に割り当てましょう」というクオータ制という制度があります。国は2003年に「2030」目標というものをつくりました。「2020年までに指導的立場にある人たちの3割を女性に割り当てよう」と掲げた目標です。これは別にオリンピックを意識したわけではなく、オリンピック招致計画が始まった2011年より、遥か前に決められていたのですが、これがまったくクリアできていない。そのことが2020年に話題になったのです。そういう状況を受けて文科省は、各種競技団体に対して、40%の枠を設定しました。「これをクリアしろ」とかなり強力に指導し、JOCもその対象になりました。

日本オリンピック委員会の女性理事増員方針を巡る発言について、取材に応じる東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長=2021年2月4日午後2時6分、東京都中央区(代表撮影) 写真提供:産経新聞社

女性理事が20%のJOC〜森氏が山下氏を擁護しようとして出た今回の発言

須田)JOCの山下会長は頑張ったのだけれども、理事の25人中、女性は5人と、2割に留まっている。そのことが問題視されていたので、JOCの会議の場で、森さんが山下さんを擁護しようとしたのでしょうね。「頑張っているのだから」というところで今回の発言が出たのです。確かに見方によっては、女性蔑視とも取れるような発言で不用意ですよ、脇が甘いですよ。メディアが入っていることも承知しているわけですから、やってはいけないけれども、問題の本質はそこではないのです。指導的地位の女性比率を30%にという目標を設定して努力しても、なかなか女性登用が進んで行かない。「この現状をどうすればいいのか」というところを本来ならば議論して行かなくてはならないのだけれども、置き去りにされているでしょう。

飯田)そうですね。

東京五輪 開幕まで半年 東京駅前のカウントダウンクロック 開会式までの日数が182日と表示=2021年1月22日午後、東京駅前 写真提供:産経新聞社

本質の問題は女性蔑視ではなく「女性登用」問題だったのだが

須田)なぜ置き去りにされているのか。最初に一部メディアが「女性蔑視」と決めつけ、レッテルを貼ったからなのです。本質はそこにあるわけではない。そういうレッテル貼りをされてしまったために、なぜ後任が女性なのか、そこを意識しているわけでしょう。

飯田)それはそれでご都合主義ではないかと、運動しているアスリート側はそんなことで決めて欲しくない。本当は、「相応しい人が(結果として)女性である」というようなところに持って行くのがいちばんいいのに、「そんなことでまつり上げられてもおかしいだろ」という声はなかなか上がって来ないですね。本来ならば上がって来てもいいと思うのですが。

須田)それを言うと猛烈な批判を受けるリスクがあるからですよ。そもそもの問題設定を誤ってしまったから会長人事が大迷走して、いま飯田さんが言われたように、五輪参加者であるスポーツ選手が望むような、本来あるべき姿が追及できなくなっている。尾を引いてしまっている。森さんを辞職させてしまったことが後任人事に関して大きく影を落とし、女性の登用という問題も封印してしまった。罪深いなと思います。

飯田)日本がこの先どういう社会をつくろうとして行くのか、というような議論のなかで、一部で「老害」というような批判が出たではないですか。今度は年齢差別の別のベクトルに行ってしまうのではないかと思っていました。

須田)老人蔑視ですよね。

飯田)逆にね。そうなってしまうと、社会の分断がより進んでしまうのではないかと思いますね。

東京都庁で会談する小池百合子都知事(右)とIOCのバッハ会長=2020年11月16日午後、東京都新宿区 写真提供:産経新聞社

政治的思惑に基づいた小池都知事の動き

須田)今年は都議会選挙も控えていますし、秋になるだろうと思われている衆議院選挙も控えているわけです。小池都知事の動きは、明らかにそういう政治的思惑に基づいたものです。

飯田)東京オリンピックが開催できなければ、それはそれで野党からすれば与党叩きにもなるし、小池さんの立場からすれば、自分のところがより伸びるということにもなるしと。プレーヤーがみんな、思惑含みですね。

須田)そうなのです。政治的な思惑で動いているから、逆に言えば、後任の会長人事を決める側も、そういう政治的な思惑に対処しなければならない。いちばん不幸な動きですよ。あってはならない動きです。

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