イラン核合意を維持することが難しい「これだけの理由」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月18日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。イランが未申告の施設に対する抜き打ち査察の受け入れ停止をIAEAに通告して来たというニュースについて解説した。

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(オーストリア・ウィーン)=2020年11月30日 AFP=時事 写真提供:時事通信

イランが抜き打ち査察受け入れ停止を通告

イラン核合意の検証にあたる国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は2月16日、イランが未申告の施設に対する抜き打ち査察の受け入れを、23日に停止すると通告して来たことを加盟国に報告した。グロッシ事務局長は査察継続のため、引き続きイラン側と協議を続ける考えだ。

飯田)「制裁の解除が先だ」と言うイランと……。

宮家)「お前が先だよ」とお互いに言い合っているわけです。トランプさんがこの合意から撤退をしたわけですが、珍しく私がトランプさんと意見が一致しているのは、「イラン核合意は不十分だ」という部分です。イランは交渉上手ですので、首の皮1枚残して核開発ができる、もしくは何年か経てばできる可能性を、粘り腰で残しているのです。しかし、1回合意したものを、途中から退場するというのは決して許されることではありません。だから拗れてしまった。

26日、米ニューヨーク市内のホテルで記者会見するイランのロウハニ大統領=2019年9月27日 写真提供:産経新聞社

イランもバイデン政権も元に戻したいが〜6月の大統領選で強硬派が出て来る可能性も

宮家)いまの段階では、イラン側もバイデン政権側も、できれば少しでも元に戻したいという気持ちはあると思います。オバマ政権のときにつくったもので、当時の関係者も帰って来ているわけですから。

飯田)そうですね。

宮家)3月にイランの暦でノウルーズという正月があります。そして6月にイランの大統領選挙があります。その2ヵ月くらい前の、ノウルーズが終わった4月ぐらいからは選挙戦に入ります。選挙戦ではありますが、イランも自由に出馬できるわけではないですから、ハメネイ最高指導者の思惑もあって候補者が選ばれているのが実態だと思います。ということは、これまではロウハニさんも含め、比較的に言えば「穏健派」にやらせてみたけれど、結局ダメだったではないかと。やはりイランは独自の道を行くべきだという強硬派も国内にはたくさんいるわけです。その人たちがまた復権するのか、またバランスを取るためにハメネイさんがそのような人たちを選挙に出そうとするのか。場合によっては、穏健派と呼ばれる人たち、もしくは穏健な大統領はこれが最後になるかも知れないのです。そうなると、バイデン政権といまのロウハニさんのような穏健派系の大統領との交渉がもしできるとしても、3月のなかごろまでとなってしまうかも知れない。

飯田)あと1ヵ月ですね。

宮家)2月21日にアメリカが譲歩しないのであれば、イランは合意上の義務を更に履行しなくなるわけです。売り言葉に買い言葉ですからね。最近、イランのザリフ外務大臣がアメリカのテレビによく出ています。情報戦、宣伝をしているのですが、あのようなことをしたとしても、バイデン政権が「恐れ入りました、あなたの言う通りです」などと言うわけがありません。アメリカのトランプ政権も酷いですが、イランもイランで合法だとは言っているけれど、その態度は決して褒められたものではありません。

イランの最高指導者ハメネイ師(右)と会談する安倍晋三首相=2019年6月13日、イラン・テヘラン[ハメネイ師のツイッターより] 写真提供:時事通信

アメリカの力がなければヨーロッパではまとめることができない

宮家)安保理の常任理事国にドイツを加えたP5+1、つまりイギリスとフランスとドイツが中心になって、これにアメリカ、ロシア、中国が乗っかったものが、もともとのイラン核合意です。ですから、アメリカが合意から逃げて行くとなると、本来はヨーロッパが努力しなければいけないのですが、ヨーロッパもアメリカの力がなければ、取りまとめることはできませんし、残念ながら日本はP5+1には入っていません。そうなると、やはり合意を維持することが難しくなっているのではないでしょうか。

飯田)ここに来て隣のイラク北部の辺りで。

宮家)クルド人自治区の米軍が駐留している地域、そこにミサイルを打ち込むわけです。

飯田)これも裏にイランがいるのではないかと、もちろんイランも否定していますが、噂されています。

宮家)否定はしていますが、当然イランがいるでしょう。シーア派のミリシアですからね。陰謀論なのかも知れませんが、強硬派の連中が意図的にやっている可能性は高いと思います。ただ、あのような形で圧力をかけたとしても、アメリカが譲歩するということは、いままでの経緯から考えてもありません。と言うことは、イランはむしろ核合意を潰しにかかっているのではないか。つまり、イランの強硬派の一部には、「あんな中途半端な合意だったら縛られる必要がない。やめてしまえ」というような人たちもいるのです。彼らにとっては思う壺ですよ。アメリカとうまく話が進もうとしたら、変な事件を起こして潰してやろうとしているのではないかと思うくらいです。ということは、なかなか核合意はうまく行きそうにないということですよね。

就任式で宣誓後、手を振るバイデン米新大統領=2021年1月20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

バイデン大統領がネタニヤフ首相と電話会談

飯田)そのなかで、アメリカのバイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相とようやく電話会談を行ったということです。1ヵ月近く対話をしていなかったということで、ニュースになっています。

宮家)これは大ニュースです。オバマ政権のときには、イスラエルとの関係は非常に悪かった。それでトランプさんがそれをひっくり返したのですが、また米イスラエル関係が微妙になってくる。中東和平問題もこれで進みそうにないですし、イランが強硬のままですと、元の木阿弥になってしまいます。

飯田)イスラエルにとっては、核合意は潰れたほうがいいのですか?

宮家)潰れたほうがいいに決まっています。しかし、バイデンさんはそんなことは絶対にさせたくないでしょう。難しいですよ。

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