「上手く終えることができた」菅総理のデビュー戦〜G7首脳テレビ会議を宮家邦彦が総括

ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月26日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。2月19日に行われたG7首脳テレビ会議について解説した。

2021年2月19日、テレビ会議に出席する菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202102/19tv_kaigi.html)

G7首脳テレビ会議

総理動静によると、菅総理は2月19日夜11時2分から1時間半ほど先進7ヵ国(G7)首脳によるテレビ会議に参加している。ここでは、そのG7首脳テレビ会議について、改めて宮家邦彦に訊く。

宮家)対面のG7首脳会議は、2020年には結局ありませんでした。確か3月と4月に同じようにテレビ会議をしたのですが、そのときの議論は主として新型コロナウイルス感染症に関するものでした。ですからG7は、実質的に1年以上深い話ができていませんでした。今回も全体で約90分ですし、7人に加えてEUも発言するでしょうから、全部で8人になります。1人当たり10分ほどしか話せないのですが、それでもやってよかったとは思います。

2021年2月20日、会見する菅総理〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202102/20bura.html)

「上手く終えることができた」菅総理のデビュー戦

宮家)7人の民主主義国家の首脳たちが年に1回集まるのがG7です。これから6月には対面でやるわけですが、そこでは当然情報を発信しなければいけない。トランプさんはG7が嫌いで、あまりやる気がありませんでしたが、トランプさんに比べればバイデンさんは外交に強い関心があるわけですから、その意味では、今回G7が元に戻ってよかったなという気がします。

新行)そうですね。

宮家)今回は首脳声明というものを出しています。英文で2ページでしたが、読んでみると、当然のことながらコロナの話や国際協力の話、それからバイデンさんやヨーロッパがおそらく強く言ったのでしょうね、気候変動の問題。中国についても若干触れている部分がある。特に非市場型国家との問題を中国も含めてしっかりと話さないといけない、というようなことです。このように、今回のG7ではいろいろなことを議論したのだと思います。特に菅総理にとっては、これがデビュー戦ですよね。まあまあ、上手く終えることができたのではないでしょうか。

【政治 菅首相ぶら下がり】記者の囲み取材に応じる前、マスクを外す菅義偉首相=2020年11月21日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

各国による中国への懸念〜首脳声明では名指しでの非難はせず

新行)総理は南シナ海、東シナ海に関しての中国の影響力の懸念も表明されていました。

宮家)対外的にそれを言っても言わなくても、議論の中身は変わらないと思うのですが、首脳声明をよく読んでみると、確かに中国のことについては触れていますけれど、名指しで非難するようなことはしていません。今回は90分のテレビ会議ということもあったのだと思いますが、各国とも中国については、会議のなかでは結構言っていたと思いますが、少なくとも首脳声明では、厳しい文言はありませんでした。議長国はイギリスですから、イギリスがいろいろと考え、G7の結束というものを重視して「中国についてはこの程度」ということにしたのでしょう。

新行)なるほど。

宮家)しかし中国について、他の国が甘いのかというと、そんなことはありません。ミュンヘン安全保障会議という会議が毎年開かれるのですが、今回はG7テレビ会議の後(日本時間の2月20日)に、バイデン大統領やジョンソン首相、メルケル首相、マクロン大統領などが、テレビ会議形式でで参加しています。そこでは中国への非難をみんな言っているのです。ですから、G7会議でも、各国は中国に関する懸念は言及したに違いないのです。しかしそうは言っても、例えばアメリカの立場、ドイツの立場などは微妙に違います。ですから、G7テレビ会議でもみんな中国については言いたいことは言ったと思いますが、議長国がそれを文章にまとめると、あのくらいにして、あからさまには言及しなかったということなのでしょう。でも、菅総理としては中国への懸念について「言うべきことは言いましたよ」ということを発表しておいたのだと思います。

北京から世界経済フォーラム(WEF)のオンライン会合に参加する中国の習近平国家主席=WEFのウェブサイトより=2021年1月25日 AFP=時事 写真提供:時事通信

北京冬季五輪の開催〜米が中国のウイグル政策をジェノサイド認定

新行)冬の北京オリンピック・パラリンピックがありますが、それに関連して言うと、中国のウイグル政策をアメリカがジェノサイド認定して、カナダの下院でもそのように認めたという報道が出て来ていますが、これに関してはいかがでしょうか?

宮家)それはジェノサイドという言葉の定義ですよね。私はウイグルの問題について、非常に関心があります。中国の新疆ウイグル自治区というのは、匂いも音も光景もみんな中央アジアですよ。その意味であの地域はイスラム文化と中国文化がぶつかっている部分だと思います。中国の一部であることは間違いないのですが、自治区と言うのだから自治があるのかと思っていましたが、実はその自治が徐々に風化している、漢化が進んでいるのです。ウルムチという都市は自治区の中心地なのですが、20年前に行ったときには町中の看板にウイグル文字がたくさんありましたけれど、いまは漢字ばかりです。その意味で、文化的に相当漢文化が支配的になっていることは間違いないと思います。それをジェノサイドと呼ぶかどうかは、私は別の政治的な話だと思います。いずれにしろ、自治区と言うのだったら自治をやらせてあげなさい、ということだと思います。

「中国式法治」香港に拡大 中国の習近平国家主席を映す北京市内の大型ビジョン=2020年5月(共同) 写真提供:共同通信社

日本はどうするべきか

新行)北京オリンピック・パラリンピックに関してボイコットの動きも出て来ているということで、イギリスもそれを示唆しています。

宮家)それも情報戦だと思いますが、中国も、諸外国がその問題を無視するわけにはいかないことを頭の隅どころか、真ん中に置いてもらわなければいけないと思います。それは「ボイコットをすべきだ」とか「すべきではない」というような議論ではなくて、国際社会がそれに強い関心を持っているということです。その意味では、強い関心を持って見て行かなければいけないことだと思います。

新行)日本はそれに対してはいかがでしょうか?

宮家)日本はあくまでも国際社会の一員として対応するべきで、それは最初であっても最後であってもないと思います。こちらだって東京五輪の主催国ですから。お互いボイコットはされたくないですよね。そこの部分は、きちんとした基準があって、国際社会がみんなで反発をしているときには、日本として共有できるものがあれば、それは当然その一員になるということだと思います。今後の中国側の出方次第で、状況は変わって来るでしょう。

 

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