アメリカとイランの合意は難しい〜これだけの理由

ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月26日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。イランが濃縮度20%のウランを17.6キロ貯蔵しているという報告書について解説した。

26日、米ニューヨーク市内のホテルで記者会見するイランのロウハニ大統領=2019年9月27日 写真提供:産経新聞社

イランが濃縮度20%のウランを貯蔵

国際原子力機関(IAEA)は2月23日、イランが濃縮度20%のウランを17.6キロ貯蔵しているとの報告書をまとめた。原子爆弾に使うためには90%以上にまで濃縮する必要があるが、20%まで進めば理論的には9割以上の作業が終わったとされている。イランは23日、IAEAによる抜き打ち査察などを認める追加議定書の履行も予告通りに停止したため、国際社会の緊張は一段と高まっている。

新行)濃縮度20%のウランを17.6キロ貯蔵しているということですが。

宮家)これは要するに、売り言葉に買い言葉なのです。アメリカとイランが喧嘩をしている。そしてイランが、「経済制裁を解除すると言ったのに、やってくれていない」と主張している。それはそうですよ。できが悪い合意を結んだと言って、トランプさんは怒って脱退してしまったわけですからね。そして経済制裁をかけられた。その後バイデン政権になった。

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(オーストリア・ウィーン)=2020年11月30日 AFP=時事 写真提供:時事通信

バイデン政権になってどうなるか〜未だにらみ合いをしている状況

宮家)では、どうするかということなのですが、イラン側はまずアメリカ側に、「いままでの措置をすべて撤回しろ、そうしたら戻る」と言っている。アメリカは、「何を言っているのだ、そっちが濃縮をしているのだから、まずそれをやめてもとに戻せ」と言っている。このような売り言葉に買い言葉であって、どちらも「お前が先にやれ」と言っているのです。

新行)そうですね。

宮家)ですから、どっちもどっちなのですが、要するに今は微妙な外交情報戦をやっているのだと思います。アメリカはイランをギリギリのところまで厳しく追及していますが、決定的にイランを攻撃しようという気はありません。彼らに譲歩できる余地を残そうとしています。イラン側はイラン側で国内に強硬派がいて、「アメリカに対してなぜ自分たちが譲歩するのだ」と批判されている。お互いににらみ合いをしているという状況です。

米デラウェア州ウィルミントンで演説するバイデン次期大統領(アメリカ・ウィルミントン)=2020年11月25日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカとイランが合意できる可能性は少ない〜4月になれば手遅れ

宮家)でも結論から言えば、話し合いはうまく行かないだろうと思います。中東のことは大体悲観的に考えた方が予測は当たります。この状況で「お前が先だ、いや、お前が先だ」と言っていれば、どちらも先にはなりたくありませんから、何も起こらない。時間的余裕が10年も20年もあれればいいのですが、そんな余裕はないのです。

新行)そんな余裕はない。

宮家)これからのタイムテーブルで言うと、6月にはイランで大統領選挙があります。いわゆる穏健派であるロウハニさんが退任する。代わりには、強硬派が来る可能性もある。そうなると、ますます状況が悪くなるかも知れない。バイデンさんの方は何とかイランと話をしたいのですが、イランでは3月にイラン暦の正月が始まって、そのあとお祭りになって、それから6月にある大統領選挙のための選挙戦が4月から始まる。アメリカに厳しい強硬派が候補として出て来れば、アメリカと話し合いをして問題を解決することができなくなる。ということは、いわゆる機会の窓、ウィンドウ・オブ・オポチュニティと言いますが、もし米・イランがお互い妥協できるタイミングがあるとすれば、それは下手すれば3月のなかごろまででしょう。4月になってしまったら手遅れになるのではないかと言う人もいます。

新行)時間がないですね。

宮家)バイデン政権ができたのは1月20日なのだから、もともとウィンドウ・オブ・オポチュニティは2ヵ月間しかなかった。そのうちもう1ヵ月が経ってしまったのです。しかも1ヵ月が経ったのに、この話はまだ売り言葉に買い言葉です。濃縮度20%ということですが、核兵器をつくるには90%以上の濃縮が必要です。普通、医療用のアイソトープあたりだと、せいぜい5%ですよね。そこまでは何とか認められるとしても、これを20%に濃縮しているということは、もう他に目的がありませんから、それはもう「90%にする」ためのものと思わざるを得ない。イランは本気で強硬措置を取ることで、アメリカが譲歩するだろうと期待しているのかも知れませんが、これは逆効果です。このようなことをしてしまったら、ますますアメリカは降りられるものも降りられなくなる。そうなるとイランとアメリカの決裂という可能性が高まる。一気にガツンと決裂するわけではないでしょうが、話し合いもできないまま、徐々に双方の措置が強硬になって行って、結局、合意に至らないという可能性の方が高くなっているのではないかと心配しています。

新行)またイランの後ろ側には中国とロシアがちらっと見えますが。

宮家)ちらっとは見えますが、はっきりと見えるわけではないですよね。イラン自身がアメリカと大きな問題を抱えているわけですから、ロシアと中国は高みの見物をしていると考えていいのではないでしょうか。

 

関連記事(外部サイト)

×