アメリカが期待する「太平洋諸国への日本の役割」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月4日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。太平洋島嶼国と日本の関係、また日本に求められている役割について解説した。

菅義偉首相、バイデン米大統領(ロイター=共同)=2021年1月28日 写真提供:共同通信社

太平洋島嶼国〜パプアニューギニア、フィジー、トンガの防衛担当者とオンライン会議を開催

3月3日、日本と太平洋島嶼国のうち3ヵ国、パプアニューギニア、フィジー、トンガの防衛担当者によるオンライン会議が開かれた。防衛省は海洋進出の動きを強める中国を念頭に、防衛協力の一層の強化を呼びかけるとともに、延期されている閣僚級会合の開催に向けた連携を確認した。

米デラウェア州ウィルミントンで演説するバイデン次期大統領(アメリカ・ウィルミントン)=2020年11月25日 AFP=時事 写真提供:時事通信

安倍前政権のときから力を入れている〜第2列島線に重なる

飯田)太平洋・島サミットなどもやっていて、日本もここと一生懸命関わろうとしているというところですか?

峯村)そうですね。これは安倍前政権のときから力を入れているもので、評価すべき動きです。中国がいま、この地域に投資の面で力を入れており、港や電力網などのインフラ投資を進めています。なかには債務が返済できない代わりに港湾の使用権を譲り渡す「債務の罠」に陥っている国も出ています。

飯田)借金にまみれてということですよね。

峯村)そうです。実は安全保障上でも重要な島々があります。第1列島線や第2列島線という言葉を聞いたことがあると思うのですが、その第2列島線に重なっているところなので、ここをしっかりとグリップしておくということは重要だと思います。

2020年11月17日、日豪首脳会談〜出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202011/17australia.html)

自由で開かれたインド太平洋の真ん中を分断することができる

飯田)小笠原の辺りからずっと南に行ってという線ですよね。パプアニューギニア辺りにまで至ると思います。そうすると、その南側にはオーストラリア・ニュージーランドがあって、まさに自由で開かれたインド太平洋という意味で、真ん中を獲ることにより、ここを分断できるということになるわけですか?

峯村)なりますね。第二次世界大戦のときは、日本対アメリカだったのですけれども、日本がまさにパプアニューギニアをとりに行こうとしたというのは、アメリカの同盟国であるオーストラリアを分断しようと試みたわけです。こうした地政学的な重要性を考慮すると、中国も同じことを考えてもおかしくありません。

就任式で宣誓後、手を振るバイデン米新大統領=2021年1月20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

太平洋諸国への日本からの投資や支援に期待するアメリカ

峯村)先日、アメリカ政府当局者とウェブで意見交換をしたのですが、「太平洋諸国への投資や支援に関しては日本に期待している」と言っていました。

飯田)それというのは、アメリカが手を出そうとしても、なかなか行き届かないということがあるのですか?

峯村)ありますね。政治的なものもありますし、歴史的にも日本とのつながりが強い島々が多いので。

飯田)かつて信託統治領だったということもありますね。

峯村)そうですね。「日本がまず入って行きやすい」ということが1つあります。アメリカに関して言うと、政府系の金融機関が多くないのです。トランプ政権のときに「国際開発金融公社(DFC)」という国家開発銀行を設立しましたが、その投資額は中国と比べると少ない。そういう意味では、日本の国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)との連携を重視しているようです。

米東部デラウェア州ウィルミントンで演説するバイデン前副大統領(アメリカ・ウィルミントン)=2020年11月9日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカは嫌だが日本からの援助は受けたい島嶼国の人たち

飯田)そうか、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)をつくったりして金を入れようとしていると。オーストラリアやニュージーランドも歴史的に一定の影響力はありましたよね。ここもグリップしきれないということですか?

峯村)ここも歴史的な背景があります。島嶼国の人たちと話していると、オーストラリアやニュージーランドという白人を中心とする国に対する抵抗感というか、アレルギーがあるのですね。そういう意味では、日本の方が「与しやすい」というところがあるようです。同じことが東南アジア諸国でもあるのです。「アメリカは嫌だけれど、日本の援助であれば受けたい」という国の声はよく聞きます。

飯田)かつて植民地で蹂躙されたというようなこともあるし、記憶として残っているのですかね。

峯村)太平洋諸国に日本が援助や投資をする、軍事的なサポートもするということは、戦略上も有益ですし、アメリカができない部分を補ってあげるということは、日米同盟の強化という意味でも、有効な手段だと思います。

習近平氏、長江経済ベルト全面的発展推進座談会で重要演説=2020(令和2)年11月14日 新華社/共同通信イメージズ

中国に依存し過ぎている国に対し、日本が主導権を握って違う形で投資を提案する

飯田)一方で島嶼国の国々は台湾と関係を持っている国も多くありました。そこに中国が入って来て台湾から引きはがすということがあるのですが、この辺り、「台湾との連携」というところもキーワードになって来ますか?

峯村)まだ台湾と関係を持っている国は多いので、そういう国を中心に支援をすることで、中国サイドに行かないようにすることは重要です。中国サイドに行ってしまった国のなかでも、後悔している国はあります。「言っていることと違うではないか。インフラができていないではないか」という国や、中国に依存し過ぎている国に対して、アメリカやオーストラリアと一緒に日本が主導権を握って、違う形で投資を提案するということは、戦略上でも有効な手段だと思います。

飯田)アメリカもグアムなどは、島嶼国と近いところでもあります。安全保障上も、1つの国に与するというのは、彼らもやりたくはないのですかね。

峯村)信託統治で言うと、アメリカも歴史的なつながりがあるのですが、私もワシントン時代に島嶼国に行ったことがありますけれど、グアムに行こうと思うとものすごく大変なのです。まずはワシントンからだと西海岸で乗り換えて、そのあとにハワイに行って、ハワイからまた小さな飛行機に乗り換えてグアムに行く。2日くらいかけて行くということを考えると、アメリカの人々にとってみれば、「グアムは遠い」という意識が強い。それを地理的にも近い日本がバックアップするということは、重要だと思います。

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