尖閣に飛び火する「台湾有事」 中国の目的は「中国統一」という大義などではない

ジャーナリスト・須田慎一郎が3月7日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送『須田慎一郎のスクープ ニュース オンライン』に出演。「海警法」施行以降、さらに尖閣諸島における強硬な航行を行っている中国の、その根底にある強大な背景について解説した。

沖縄県・尖閣諸島の南小島(右奥)付近を航行する中国海警局の船=2021年2月15日(仲間均・石垣市議撮影) 写真提供:共同通信社

尖閣のような“グレーゾーン”で海警が軍事行動を取れるのが“海警法”

中国が海警局に外国船への武器使用を認める海警法が施行されてから1か月余り、尖閣諸島における中国船の強硬な航行が問題になっているが、尖閣だけでなく台湾有事にも目を向けるべきだと須田は解説する。

須田)中国で2月1日に、必要に応じて中国海警局……日本でいう海上保安庁に当たるセクションですが……ここに外国船への武器使用を認める海警法が施行されたわけなんです。これまで海警局は実質的には警察扱いだったのですが、今回人民解放軍に組み込まれていますから、準軍事組織という指摘もあるんです。言ってみれば軍事組織の一部だろうと私も思います。

新行市佳アナウンサー)海軍に等しいということですよね。

須田)ただその海軍が警察行動をやるんですよ。そうすると、やっていることは警察行動なんだけれども外国船舶等々にも発砲することが認められたということ。これがどういうことかというと、「軍事行動」は国益を守ること、「警察行動」は治安や犯罪行為を取り締まる行動、つまり自国の領土の中で動いていく。そうはいってもこういって領土領海を争っているようなグレーゾーンがあるわけだからそこはどうするのか、ということになったときに、その海警法を作った。そしてその海警が人民解放軍のセクションになったということでグレーゾーンに対してシームレスで対応可能になってくる。もし尖閣というところで問題が発生したときに中国の海警はすぐさま軍事行動をとれるようなつくりをしたわけです。

日本、中国、第1列島線 アジアにミサイル網目指す 写真提供:共同通信社

中国が米の軍事的脅威から守る“絶対防衛ライン”「第一列島線」

須田)これが何を意味しているかというと、中国の主張としては「ここは中国の領土だ」ということで領有権を争っている地域はいくつかあるわけで、そこに対して中国としては途切れることなく手を打つことができるという事態になったんです。なのでよく言われているように台湾有事であるとか尖閣諸島問題等々をにらんだ動きだということなんです。そういった意味でいうと、加えて、南沙諸島、いま問題になっている南シナ海、ああいったところにも適用されるということなんです。

いま申し上げたような海域を繋げていくと、中国が主張する「第一列島線」というところと重なり合ってくるわけです。

新行)手元にある資料を線で結びますと、沖縄、尖閣、台湾を通って南シナ海を廻っていくかたちで線が引かれているということですね。

須田)九州を起点に、九州、沖縄、台湾を通って南シナ海を通っていくということですが、そもそも「第一列島線」とはなにかというと、ここは自分たちの領土であるから入ってくるなということではなく、中国本土をアメリカの軍事的脅威から守るために「絶対防衛ライン」、つまり「第一列島線」の内側にはアメリカ軍を絶対に入れないという前提のもとに作られたものです。なぜ「列島線」となっているかというと、なにもない海の上に防衛ラインを引いても現実味がないし有効性がないということで、島や岩礁を利用して防衛ラインを引いていくほうがより効果的でありリーズナブルなんです。なのでさまざまな島や列島の上に線が引かれたわけです。

台北市の総統府で記者会見する蔡英文総統=2020年1月15日(共同) 写真提供:共同通信社

中国が台湾を欲しいのは、「中国統一」のためではない

須田)そうすると、台湾を取るということが、中国にとっては自国の安全保障、自国をアメリカから守るためにどうしても必要なんです。なにも台湾解放だとか中国統一だとかそういう大義名分で台湾を取りに来ているわけではなく、自国の安全を守るために台湾が必要だという現実的なニーズなんです。ですからそういった点でいうと、台湾を取りに来る、台湾有事が始まるということは尖閣の問題に飛び火する、場合によっては尖閣が先に来て次に台湾かもしれない、これは沖縄にも関係してくる問題かもしれない。場合によっては九州にも飛び火するかもしれない。つまり台湾有事というのは日本有事でもあるんです。

この日本有事にどのように向き合うかというのは先ほど申し上げたような海警の存在あるいは海警法の存在に対応するための法体系が日本にはない。加えて、それに対処するための役割分担がなされていない。どこまでが海上保安庁の仕事でどこからが海上自衛隊の仕事なのかが明確になっていない、グレーゾーンを想定していないというところがいまの日本にとっての最大のウィークポイントではないかと思います。

そこをしっかりはっきりさせないと、いたずらに海上保安庁に負担を強いることになるし、海上自衛隊にある種の政治判断を強いるような、現場に対して負担がものすごく大きいというのがいまの法体系なんです。そこを中国のようにシームレスに、継ぎ目のないようにきちんと法体系を作り、現場が戸惑うことなく事態に対応できるような体制あるいは法を作るべきですよね。ただそれだけではなく、その前提として台湾有事であるとかそういった問題が起こると、間違いなく日本にも飛び火する、巻き込まれることなんだということを理解したうえで法律作りをしないと、なかなか前に進まないんだろうと思います。

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