尖閣諸島問題〜中国が30年間かけて練って来た「恐ろしいシナリオ」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月8日放送)にジャーナリストで東海大学教授の末延吉正が出演。「海警法は国際法に合致する」と主張した中国の王毅外相の記者会見について解説した。

沖縄県・尖閣諸島 手前から南小島、北小島、魚釣島 海上自衛隊の哨戒機「P-3C」 から=2011年10月13日 写真提供:産経新聞社

海警法は国際法に合致〜中国の王毅外相が主張

中国の王毅外相は3月7日の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島周辺で頻繁に活動する海警局の武器使用権限を定めた海警法に関して、「特定の国を対象にしたものではなく、完全に国際法に合致する」として正当性を訴えた。

飯田)いま全人代が開かれている最中で、この会見もその一環です。国際法に合致するというのは無理筋な感じもありますけれども、どうご覧になりますか?

沖縄県・尖閣諸島の南小島(右奥)付近を航行する中国海警局の船=2021年2月15日(仲間均・石垣市議撮影) 写真提供:共同通信社

尖閣は中国の領土で、その先にある台湾を武力侵攻してでも1つの中国にする〜30年かけて計画的に練って来たもの

末延)バイデン政権がトランプ政権と同じように、中国に厳しい姿勢を示しているので、中国としては、「まず譲れないものを原則的に言っておこう」と強気な姿勢を見せています。海警法の基になっているのが、1992年の領海法です。この領海法で、「尖閣諸島は中国の領土だ」と言っています。今度つくった海警法は海警局に武器の使用を認める法律ですが、海警局は準軍事組織で、軍を辞めたOBなどがいて装備もすごいです。ということは、「尖閣は自国の領土で、その先にある台湾を武力による侵攻を伴っても、1つの中国にする」ということを言っているわけです。

飯田)なるほど。

末延)それを30年かけて計画的にやって来ているのです。日本では、与野党が「海警法は国際法違反ではないか」などいろいろと言っていますが、政府も曰く言い難い感じがある。解釈や運用によっては間違いなく危ない話なのですが、国民的な関心もそれほど高くなくて続かないから、日本はこれまで海洋安保の話をあまりして来なかった。中国が日本を挑発して、乗って来たとき、たとえ正当防衛であったとしても、「武器の使用ができる」という判断をして撃つなどすると、それが日米安保の適用範囲でも、アメリカは議会で了解を得てから動くわけなので、そのときの国際世論戦で日本は負ける可能性がある。

飯田)「エスカレートさせたのは日本ではないか」というようになってしまう。

日中外相会談 茂木外相と会談する、中国の王毅国務委員兼外相=2020年11月24日午後5時37分、東京都港区の外務省飯倉公館 写真提供:産経新聞社

尖閣は「日本の施政権が及んでいる」ということを世界にアピールする必要がある〜いつの間にか「あそこは紛争地域だ」という認識になりつつある

末延)日本国内の議論を見ていると、「上陸されたら撃ってもいいのか」という話をしています。それ以前に、日本の石垣の漁民たちが普通に漁をしていたのが、行けなくなっているわけです。

飯田)いま漁ができなくなっている。

末延)そうです。日米安保の適用というのは、主権についてアメリカは中立なわけで、施政権があるところというわけです。先日、自衛隊の海洋安保の専門家と大学の研究会で勉強会があったのですが、専門家が言っていたのは、「中国が領海や接続水域にどんどん入って来て、怖くて漁ができない状態から、海上保安庁が装備をしっかりして守りながら漁ができて、日本の施政権が及んでいる」という映像をこちらから国連や世界に発信しなければいけないということです。そうしないと、いつの間にか「あそこは紛争地域だ」ということになり、「中国の思うままの土俵に乗せられつつあるのではないか」というのが、その専門家が指摘しているいちばん怖い点です。

台北市の総統府で記者会見する蔡英文総統=2020年1月15日(共同) 写真提供:共同通信社

一方では短気を起こして戦争状態になってはならない

末延)しかし、ものは言わなくてはいけないのだけれど、中国側が着々と、30年かけて計画的に台湾侵攻に向けて練って来たシナリオに乗せられて、短気を起こしてはいけない。海洋安保は平和な海、環境の海などの調査をやるなど、そういう形で日本政府があそこを守り切らないといけない。私が子どものころに「李承晩ライン」というものができて、いつも韓国との間で、日本の漁船が拿捕されていました。旧ソ連との間でも、季節が来ると日本の漁船が拿捕されていました。今度もまた同じことが起きてしまう可能性があるので、ここは何としても戦争状態にならない形で、外交力で中国のシナリオに乗らず、国際スタンダードに則って抑止力も効かせながら守るということが、いま問われているのです。

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