安倍政権の"親中政策"に識者が懸念 トランプ大統領来日時に対日批判が出る可能性も

記事まとめ

  • 安倍晋三政権は昨年の訪中以来バランスを崩し、親中政策に傾いていると識者が指摘
  • トランプ政権は安倍政権の親中政策に強い疑念、非難の目を向けているとも
  • 5月のトランプ氏来日時には、日米の齟齬をどう調整するかが課題になる可能性もある

【東アジアの動乱と日本の針路】日米関係は大丈夫か? 安倍政権の過度な「親中政策」に懸念

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 昨年10月の訪中以来、安倍晋三政権がバランスを崩して、親中政策に傾いているように見える。ドナルド・トランプ米政権が、経済制裁でチャイナ(中国)を追い詰めている最中に、日本は何と3兆4000億円枠の日中通貨スワップを決めてしまった。

 マイク・ペンス副大統領が10月4日、「対中宣戦布告」といえる演説をした直後だけに衝撃的だった。米国から「日本は反米政策を進めている」と非難されても仕方ない。日米関係は大丈夫なのかと憂慮する。

 安倍首相は1月28日の施政方針演説で、「昨年秋の訪中によって、日中関係は完全に正常な軌道へと戻りました」と断言した。中国では2015年以降、9人の日本人が逮捕され、スパイ容疑で4人が実刑判決を受けた。また、中国安全部が昨年2月から伊藤忠商事の社員を拘束している事実も明らかになった。

 安倍首相の演説には、身柄拘束されている自国民や、尖閣問題への言及もなく、ウイグル人やチベット人への非人道的弾圧を非難する言葉は1つもなかった。これらを無視して、「日中関係は正常な軌道」と断言するのは、いかがなものか。

 今回の連載冒頭でも述べたが、われわれには、日米同盟を強化し、中国の帝国主義・軍国主義と戦い抜くしか道はない。米中が対立関係にあるときに、中国に尻尾を振ってどうするのか。

 現在まで、安倍首相とトランプ大統領の個人的信頼関係があるためか、米国から非難の声は聞こえてこない。

 だが、トランプ政権は本音では、安倍政権の親中政策に強い疑念、非難の目を向けているのが実情だろう。

 5月のトランプ氏来日時には、日米の齟齬(そご)をどう調整するかが大きな課題になるに違いない。露骨な対日批判が出てくる可能性もある。そうなると、日本車の対米輸出に25%程度の高関税が課せられる事態もあり得るのだ。

 安倍政権で、もう1つ懸念されるのは消費増税である。増税が、国内景気を著しく悪化させることは目に見えている。そうなれば、安倍政権の求心力は低下し、最重要課題である「憲法改正」は不可能になるだろう。さらに、「国防上の危機」をもたらしかねない。

 1997年の消費増税以来の誤った政策が、日本経済の国際的地位を凋落させた。95年、日本のGDP(国内総生産)は世界経済の20%だったが、2015年には5%台にまで縮小した。この間、中国のGDPは世界の2・4%から15%へと急拡大した。この経済力の格差が、中国の軍事的脅威となって表れている。

 増税と緊縮財政による誤った経済政策が、日本経済の成長を著しく阻害してきた。そして国家安全保障上の危機をも招来しているのである。消費税増税は、最悪の選択である。

 ■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。テレビやラジオで活躍する一方、銀行や証券会社の顧問などを務める。著書・共著に『国境ある経済の復活』(徳間書店)、『米中「冷戦」から「熱戦」』(ワック)など多数。

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