【突破する日本】新元号『令和』 「日本が天皇を戴く国柄だ」と国民が実感

【突破する日本】新元号『令和』 「日本が天皇を戴く国柄だ」と国民が実感

新元号を発表する菅義偉官房長官=1日、首相官邸(古厩正樹撮影)

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 新元号「令和(れいわ)」の発表を受けて、すでに「令和ブーム」が起きている。予想通り、国民の大多数は好意的に迎えたようだ。やがて自らの諡(おくりな)となる皇太子殿下も、政府からの報告を「にこやかにお聞き届けいただいた」(西村泰彦宮内庁次長)という。

 今回の改元は、天皇陛下のご生前での譲位という約200年ぶりの事態による。平成への改元は昭和天皇の崩御という悲しみの中で迎えたが、今回は国民も将来を展望した明るい気持ちで迎えようとしている。

 新天皇の諡になるという性格はあるものの、自分たちがこれから生きていく時代の名前を、専門家の学識をもとにしながら、国民各層の代表である有識者、衆参両院の正副議長、閣僚で決めていくというのは素敵なことだ−と国民の多くは実感したはずだ。

 キリスト教に由来する西暦だけでは、あまりにも平板で無機質だが、あるまとまった年数に名前を付ける、今や日本だけのものとなった元号には人間の息遣いや体温が感じられる。外国にもおおむね好評のようだが、廃止した中国などには羨(うらや)ましい気持ちもあるようだ。

 それとともに、今回の改元で「日本が天皇を戴く国柄だ」ということを多くの国民が実感したことも重要だ。元号法は「元号は、皇位の継承があった場合に限り改める」と規定している。天皇の代替わりとともに元号が変わるということであり、元号は天皇のご存在と一体のものだ。

 今回の御代替わり(みよがわり)を前に、改めて天皇というご存在について考えてみたいと思い、歴史学者、津田左右吉の天皇論(『建国の事情と万世一系の思想』、1946年)を再読してみた。

 津田は、5世紀までに日本が統一されていく過程で、すでに天皇に反抗や抵抗する者はいなくなっていたという。天皇には宗教的な任務と権威があり、政治の局には当たらなかったからだ。以後、この性質は強められるばかりで、時勢が変わっても同じだった。

 天皇自ら政治を行う親政は極めて稀な例外であり、政治の実権を握る者は変わっていったが、彼らも、皇室の下における地位に満足し、それより上に一歩も踏み出すことはしなかった。こうして一種の二重政体組織が存在するという世界に類のない国家形態が形成された−と津田は分析している。

 津田はまた、天皇の権威は単に宗教的だけでなく、あくまで政治的なものであることが重要だという。天皇は日本の政治的統治者なのだが、政治の局には当たらない。そういう存在なのだ。

 その天皇を戴く国の民であることを、私たちは改めて実感している。

 ■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程退学。専攻は憲法学、思想史。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。教育再生実行会議委員、フジテレビジョン番組審議委員、日本教育再生機構理事長など。法制審議会民法(相続関係)部会委員も務めた。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)など多数。

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